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『アニー(1982年版)』子どもから見た大人たちの世界

公開日: : 最終更新日:2019/06/10 映画:ア行, 音楽

 

かつてタレントのタモリさんが、テレビでさんざっぱら自身のミュージカル嫌いを語っていた。まだ小さかった自分は、それに感化されて、ミュージカルとはくだらないものなのだろうと思い込んでいた。欧米でも、男がミュージカルが好きだと言うと、男らしくないとか言われてしまう。

ミュージカルを悪く言う人の理由として、「登場人物が突然歌いだすのが、感情移入できない」とはよく聞く。でも我が家では自分以外の家族はみな、常に歌を歌っている。世の中には会話と歌との差があまりない人もいるのだ。普段から歌ってばかりいる人たちは性格も明るい。ちょっとやそっとじゃめげたりしない。辛い人生も歌って踊って楽しく乗り切ろう!

世界的に不景気で、キナ臭い話ばかりの現代社会。ミュージカル映画がブームなのも、この社会状況と無縁ではなさそう。

このミュージカル映画ブームに乗ろうと2014年にジェイミー・フォックス主演の『アニー』リメイク版が公開された。このリメイク版がテレビで放送されたとき、ウチの子たちが観ていたが、自分にはどうもわからない映画だった。ただ、メインテーマの『トゥモロー』は名曲だなとは感じていた。

妻が1982年版の『アニー』は、子どもの頃よく観ていたと言う。どうせ観るならこちらの方が良いんじゃないかと。娘のご所望により、1982年版の『アニー』の鑑賞が始まった。

自分はあまり乗り気ではなかったので、最初のうちは横目で観ていたのだが、楽しい楽曲にみるみる引き込まれていった。吹替版での鑑賞だったが、この吹替もとても良かった。

『アニー』はブロードウェイ・ミュージカルの代表的な作品。日本でも青山劇場でロングラン、子役の登竜門のイメージ。もちろんこの映画版の存在も知っていた。もっと古い映画かと思っていたが、アニー役のアイリーン・クインと自分は、どうやら同い年。どうしていままで観ていなかったのだろう?

答えは単純。赤毛の天然パーマの女の子が主人公の映画なんて、男子小学生が興味あるはずもない。やっぱり『スターウォーズ』や『インディ・ジョーンズ』に走っちゃう。せいぜい『グーニーズ』がいいところ。眼中に入るはずもない。

この映画は不思議なことに同年のアカデミー賞とラジー賞の両方ノミネートされている。評価は賛否両論。でもそれもなんとなく納得できる。映画のストーリーは、あくまで子ども目線で描かれている。大人の世界はファンタジーでしかない。荒んだ大人が主人公の子供と触れ合ってうちに良いヤツになって行くという単純なストーリー。

武器商人の大富豪ウォーバックスが売名行為のために、孤児院から里子をとる。選ばれたのはたまたまアニーだった。ウォーバックスという名前そのものの通り、戦争で一儲けしてる拝金主義の男が、実際そうやすやすと善人になるとも思えない。ウォーバックスはルーズベルト大統領とも友人だ。1930年代が舞台なので、ルーズベルトが世界恐慌に対抗してニューディール政策を発動して、アメリカが景気を回復し始めた頃。まだ第二次大戦になだれ込む前の、まやかしでも希望が見えるような時代。ウォーバックスは「あんたの政策はけしからん」と言っている。資本主義の信望者なのがわかる。ウォーバックスを演じてるのはなんと若かりし日のアルバート・フィニー。『エリン・ブロコビッチ』の弁護士役の人じゃん!

孤児院の意地悪な孤児院の院長ハンニガンも、ものすごいおばさんという印象だったが、今自分が中年となってみると結構この人若い。日本のテレビドラマなど孤児院のイメージのステレオタイプと同じ。ハンニガンを演じてるキャロル・バーネットは、酒に頼らなければ生きていけない女の悲しみも演じてるんだけどね。

でもこれらは物語の本質ではない。

ミュージカルの舞台劇を生で鑑賞すると、そのストーリー云々よりも、役者さんの歌唱力や楽曲が素晴らしさの方に圧倒されてしまう。物語のプロットが多少破綻していても、そんなところは大して気にならないもの。舞台と映画、同じ時間を使った表現ではあるけれど、舞台というナマモノと、映画という記録の集大成との媒体の性質の違いがある。そこはわきまえていないと、原石も泥団子に変えてしまう。感覚的なものと冷静さの絶妙なさじ加減。

子どもの目線から見たら、どんな荒んだ大人でも、みな善人であって欲しいもの。手を汚した大人が、純真な心に戻れるというのはファンタジーでしかない。でも自分が大人となった今では、子どもたちが理想とする大人に近づく努力はしていかなければいけないとつくづく思うのである。

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