負け戦には精神論が常『ヒトラー 〜最期の12日間〜』
公開日:
:
最終更新日:2019/06/13
映画:ハ行
「欲しがりません勝つまでは」
戦後70年たった今となっては、こんな我慢ばかりを要求する言葉が行き交うということは、戦争に負けている証拠だと冷静にとらえることができます。もちろん当時の日本人だってまったく気づいていなかった訳ではないと思います。戦に負けている時などはとかく精神論に人はすがり始めます。「誇り」とか「名誉」とか軽々しく口から出てくるようならば、かなり追いつめられている状態といっていい。
当時の日本での我慢を要求する状況というのは、自分も学校の教科書にも載っていたのでよく知っているのだが、このドイツ映画の『ヒトラー 〜最期の12日間〜』でも、終戦間際の地下要塞に追いつめられたヒトラーとその家臣たちの姿はまさにそれで、精神論ばかりがヒステリックに飛び交っている。どこの国も最期は同じなのだなと感じた。
この映画はパロディも多く、追いつめられて必死な人間の姿は、客観的には笑いを誘うものである。
今回の大阪都構想の選挙についてのパロディも登場していたくらい。今回もパロディ動画が拡散された。映像と言葉はオリジナルの映画のままで、字幕だけが変更されている。その字幕がなぜかヒトラーが大阪都構想にからんでいたという展開。あまりに映像や言葉とシンクロしているので、大爆笑必至。
よくブラック会社と言われるところや、本当に辛い仕事をしている職場では耐えず「自分の仕事に誇りを持て」とか「もう少しの我慢だ」などのセリフが呪文のように登場する。自分の仕事に誇りを持つという概念は自分には理解できない。それなら「仕事が楽しいか」という言葉の方がしっくりくる。本来仕事というのは生活の糧を得るためのもの。それでも自分の特技で報酬を得たり、自分が面白いと思ったことを突き詰めることで商売になればと、少しでも楽しめる道を模索するもの。いの一番に「仕事に誇り」を意識することはない。
周囲を見渡して、目に見えないものを妄信し始めたり、精神論ばかりを言い出す人が多い職場なら、もしかしたらその船(会社)は沈みかけているのかもしれない。荷物をまとめて逃げる準備もしておいた方が良さそうだ。ネズミみたいにね。
関連記事
-
-
『裸足の季節』あなたのためという罠
トルコの女流監督デニズ・ガムゼ・エルギュヴェンが撮ったガーリームービー。一見した
-
-
『パターソン』 言いたいことは伝わらない?
ジム・ジャームッシュ監督の最新作『パターソン』。ニュージャージー州のパターソンに住むパターソ
-
-
女性が生きづらい世の中じゃね……『ブリジット・ジョーンズの日記』
日本の都会でマナーが悪いワーストワンは ついこの間まではおじさんがダントツでし
-
-
『バケモノの子』意味は自分でみつけろ!
細田守監督のアニメ映画『バケモノの子』。意外だったのは上映館と上映回数の多さ。ス
-
-
『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』ブラックって?
ネット上の電子掲示板『2ちゃんねる』に たてられたスレッドを書籍化した 『ブ
-
-
『バウンス ko GALS』JKビジネスの今昔
JKビジネスについて、最近多くテレビなどメディアで とりあつかわれているような
-
-
『母と暮せば』Requiem to NAGASAKI
残り少ない2015年は、戦後70年の節目の年。山田洋次監督はどうしても本年中にこ
-
-
『ブラックパンサー』伝統文化とサブカルチャー、そしてハリウッドの限界?
♪ブラックパンサー、ブラックパンサー、ときどきピンクだよ〜♫ 映画『ブラックパンサー』
-
-
『星の王子さま』 競争社会から逃げたくなったら
テレビでサン=テグジュペリの『星の王子さま』の特集をしていた。子どもたちと一緒にその番組を観
-
-
『ハンナ・アーレント』考える人考えない人
ブラック企業という悪い言葉も、すっかり世の中に浸透してきた。致死に至るような残業や休日出勤を