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『ハリー・ポッター』貧困と差別社会を生き抜いて

公開日: : テレビ, 映画:ハ行,

ハリーポッター

映画版『ハリー・ポッター』シリーズが日テレの金曜の夜の枠で連続放送されるのがすっかり恒例になった。スタジオジブリ作品に次ぐ、独占目玉プログラム。

『ハリー・ポッター』は基本的には子ども向けだから、いままでずっと子どもたちと観たいと思っていた。しかしながらウチの子たちは怖がってなかなか観てくれなかった。学校の図書室に原作本があったり、友だちが観たり読んだりしているのに感化されて、最近になってやっと一緒に観てくれるようになった。今回の金曜ロードショーでやっとこさハリー・ポッターデビュー! 一作目から観るぞ! 映画版は全8作品もあるし、全作観るには長い旅路。子どもたちと『ハリー・ポッター』について語りあえる日がやっと来た。

J.K.ローリングの原作小説は、世界的ベストセラーなのは周知のこと。ポッタリアンと呼ばれた熱烈なファンは、シリーズ新作発売前には、徹夜で書店に並んで、新刊を手に入れればその場で読み耽る熱狂ぶり。子どもから大人まで、みんな夢中になった。

ここまで人気が出れば、当然映画化の話も生まれてくる。ポッタリアンたちは、愛すべき作品の映像化には不安を抱かずにはいられなかった。イギリスが舞台なのに、ハリウッドのワーナー製作というのも心配。なにせ原作が未完の段階での映画化なので、どこに伏線が隠れているのかわからない。監督には『ホームアローン』のクリス・コロンバスが起用された。子どもがたくさん出てくるから適任だと思われたのだろう。できあがった映画版は、びっくりするほど原作と同じ。これでは監督は誰でも同じじゃないか? 結局クリス・コロンバスも二作目までで降りてしまう。後半4作を担当するデビッド・イェーツにたどり着くまで、監督が入れ替わり立ち替り。『ゼロ・グラビティ』のアルフォンソ・キュアロンも監督陣に名を連ねている。彼にとっては黒歴史かも?

シリーズ完結まで10年かかっているのに、役者さんが途中で亡くなってしまったダンブルドア以外、キャスト全員が全作通して続投している。しかもイギリスの名優ばかりが出演しているからすごい。みんなでたがったのかな? このキャスティングのおかげでハリウッド色は薄れ、イギリス文学らしさがきちんと感じる作品となった。

この『ハリー・ポッター』、大人も夢中になるのは、ちゃんと風刺や社会批判も込められているから。魔法使いと人間の確執は、差別社会そのもの。ハリーの里親は差別主義者の象徴。悪役のヴォルデモートは独裁者といったところか。貧富の格差も触れている。これは原作者のローリングの実体験に基づいているだろう。ローリングは貧しいシングルマザーでこの作品を書き上げたのは有名な話。ローリングは理不尽な差別に耐え、将来の不安を抱きながら、この『ハリー・ポッター』を書いたのだろう。やがて賢者となる主人公に、己の境遇を重ねながら。

ローリングのすごいところは、こんなに重いテーマをはらんでいながら、エンターテイメントを前面に押し出してくるところ。ハラハラドキドキする展開は終始ブレることはない。だから子どもたちも夢中になる。子どもたちは、ハリーたちをさげすむ悪い魔法使いやマグル(人間)たちみたいにはなりたくないと感じるだろう。

芸術家や表現者は、美しいものをカタチにする。イヤなもの、醜いものから逃げるのではなく、それらを知った上で、それでも明るい方へ持っていける人を指すのではないだろうか? ローリングの創造したこの世界は、将来、古典として読み継がれることだろう。

シリーズが完結し、今年はスピンオフの映画が始まったり、中年になったハリーを描く舞台版も上演される。もちろんローリング自らどの作品も執筆している。

舞台版のハーマイオニー役を、アフリカン系の女優さんが演じることで波紋を呼んだ。エマ・ワトソン=ハーマイオニーと刷り込まれていたので、白人のキャスティングでないことの違和感は否めない。差別的なファンの発言もあった。ローリングは、原作ではハーマイオニーの肌の色には言及していないらしい。今回の配役は、役者さんが素晴らしかったからだと言っている。差別的な発言のファンには、さすがにローリングも怒るだろう。あんたたちホントに私の作品読んだの?って。これはファンの寛容さと想像力が試される。作者であるこの世界観の神様ローリングがゴーと言ってるんだ。この変化球も信じなきゃ楽しめない。

かつて『ハリー・ポッター』が映画化されるときも、さんざ文句を言ったのは、作者ではなく熱狂的なファン。あの頃はローリングも新人作家だったから、我慢してただろうけど、今は巨匠だから一言申したのだろう。とかく熱狂的なファンに限って、妄信的となり、作品の根幹を見失って届いてない。まさに作品と付き合う距離感にセンスを問われる。さぞかしローリングもがっかりしたことだろう。

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