『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』集え、 哀しい目をしたオヤジたち!!
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』はマーベル・ユニバースの最新作。『アベンジャーズ』のスーパーヒーローたち総出演だが、この映画はタイトル通りキャップことキャプテン・アメリカが主人公。『キャプテン・アメリカ』シリーズの三作目でもある。今回のテーマはキャップとアイアンマンの仲間割れ。自分はアイアンマンがマーベルヒーローでいちばん好きだし、この二大ヒーローの対立は大いに見ものだ。
マーベル作品数あれど、自分はキャプテン・アメリカの前作『ウィンター・ソルジャー』が、全シリーズの中でいちばんの傑作ではないかと思っている。その『ウィンソル』のアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟が監督続投するとのことなので、期待しないわけにはいかない。
昨今のバトルシーンはCGで表現するのが主流だけれど、ルッソ兄弟の演出はまさに肉弾戦。CGも使っているだろうけど、基本的には肉体と肉体がぶつかる生身のアクション。どんなにスーパー能力があれど、殴られれば痛いし、ぶつかればダメージがあるはず。その痛みが伝わるからこそ、アクション場面に観客も熱が入る。ハンディカメラの手ぶれ映像は目がまわるけど緊迫感が半端ない。
今回の『シビル・ウォー』もルッソ兄弟の独壇場。集大成『アベンジャーズ』シリーズさながらマーベルヒーロー勢ぞろい。そのどのキャラクターにも印象に残る見せ場が用意されており、キャップと敵対するアイアンマン側のメンバーも含め、登場するスーパーヒーロー全員、さらにファンになってしまうくらいカッコいい! やっぱり全キャラクターに魅力を感じさせなければ、グッズの売れ行きにも影響するしね。ルッソ兄弟、さすが!
この功績あってか、次回の『アベンジャーズ』の監督にルッソ兄弟が抜擢された。自分は実はマーベル作品の中では『アベンジャーズ』シリーズがいちばん退屈だったりする。主人公が全員の群像劇なので、なんとなく散漫でノレずにいた。ルッソ兄弟の演出は、どうこのメイン作品を料理するのだろう。
自分はアクション映画が好きなくせに、アクション場面になると睡魔に襲われるという、ヘンなクセがある。CGメインの場面や、主人公は絶対死なない感がしていると、轟音やら予定調和な展開やらが、心地よく眠りに誘ってくれるのだ。『キャプテン・アメリカ』の前作『ウィンソル』と、この『シビル・ウォー』は睡魔どころか、肩が張るほどアクション場面がエキサイティングだった。
よくありがちなのは、アクション場面なら、爆発や火がでたり、建物が崩壊すればいいと勘違いしている演出家が意外と多いのではないかということ。アクション場面では、主人公がただ闘っていればいいのではなく、やはりドラマ(葛藤)がなければ、観客は感情移入できずに飽きてしまう。勢いだけあればいいというものではない。アクション場面は綿密な事前計算が必要。予算がかかった大がかりな場面が、かならずしも面白いとは限らない。低予算でも大作をしのぐ面白い作品は、制作者の工夫でいくらでも誕生している。カネをかければいいというものではない! (まあこの『シビル・ウォー』は、ビッグバジェットの大作なんだけどね。)
さて、マーベルヒーローの魅力はどこにあるかと言うと、みんな哀しい目をしたおじさんばかりが集まっていることにつきる。キャップのマスクの下から見える切ない瞳がなんともイイ。いい歳をしてアホみたいなコスプレしてても、この哀愁あってこそ大人のエンターテイメントになりうる。これは演じてるクリス・エヴァンスや、アイアンマンのロバート・ダウニーJr.の個性から自然と醸し出しているものなのだろう。スーパーヒーローだって人間なのだと思わせてくれる。
で、ここで新しい風として、10代のスパイダーマンが参戦してくる。哀愁ただよう映画が、一変してフレッシュになった! やっぱり若いってすごいパワー。スパイダーマンがとにかく明るい! この作品で初登場だった新スパイダーマンとブラックパンサーも、今後単独作が作られるらしいけど、はやく観たいって単純に思っちゃったもの!
嗚呼、どうやらこれからもまだまだマーベルに踊らされそうですわ。
関連記事
-
『ジョジョ・ラビット』 長いものに巻かれてばかりいると…
「この映画好き!」と、開口一番発してしまう映画『ジョジョ・ラビット』。作品の舞台は第二次大戦
-
『くまのプーさん』ハチミツジャンキーとピンクの象
8月3日はハチミツで、『ハチミツの日』。『くまのプーさん』がフィーチャーされるの
-
『すずめの戸締り』 結局自分を救えるのは自分でしかない
新海誠監督の最新作『すずめの戸締り』を配信でやっと観た。この映画は日本公開の時点で、世界19
-
『スターウォーズ展』 新作公開というお祭り
いよいよ『スターウォーズ』の新作公開まで一週間! 街に出れば、どこもかしこもスターウォーズの
-
『スノーマン』ファンタジーは死の匂いと共に
4歳になる息子が観たいと選んだのが、レイモンド・ブリッグスの絵本が原作の短編アニメーション『スノーマ
-
『スノーデン』オタクが偉人になるまで
スノーデン事件のずっと前、当時勤めていた会社の上司やら同僚がみな、パソコンに付属されているカメラを付
-
『幸せへのキセキ』過去と対峙し未来へ生きる
外国映画の日本での宣伝のされ方の間違ったニュアンスで、見逃してしまった名作はたく
-
『シンドラーのリスト』極端な選択の理由
テレビでナチスのホロコースト虐殺の特集を放送していた。なんでも相模原の養護施設で大量殺人をし
-
『聲の形』頭の悪いフリをして生きるということ
自分は萌えアニメが苦手。萌えアニメはソフトポルノだという偏見はなかなか拭えない。最近の日本の
-
日本も開けてきた?『終戦のエンペラー』
映画『終戦のエンペラー』を観た。 映画自体の出来映えはともかく、 こうい