*

イヤなヤツなのに魅力的『苦役列車』

公開日: : 最終更新日:2015/11/08 映画:カ行,

t02200147_0600040013220717646

西村堅太氏の芥川賞受賞作『苦役列車』の映画化。
原作は私小説。

日本の人気原作ものの映像化作品は
つまらないものが常なのだが、この作品は面白い。
原作にない場面も面白いし、
より主人公の人物像を掘り下げていて、
感情移入しやすくなった。

主人公は親が性犯罪で服役したのをきっかけに、
ロクな学校や職業につけなかったと
自己憐憫のまっただ中。
日雇い肉体労働をしては、
その金は即日酒と風俗に使ってしまう。
負のスパイラルにどっぷりハマったダメ男。

森山未來さんがもの凄くハマった演技でこなしてる。
本当にカメレオンな役者さんだ。

自分もこの主人公と同年代で、
同じ時代を生きた。

自分もその頃、即日報酬をもらえるこの
日雇い肉体労働をしたことがあるが、
どうもやっぱり続かなかった。

割に合わないというのもあるのだけれど、
先輩やオーナーがやけに威張っているのが
イヤで辞めてしまったという感じ。
こんな仕事を続けていれば、そりゃ卑屈にもなる。

ダメダメな主人公の唯一の知的な趣味は
ものすごい読書好きなところ。
ここを現状打破の突破口として
作品はとらえている。

原作にはない古本屋でバイトする女の子がでてくる。
それを元AKB48のトップだった前田敦子さんが演じてる。

こういったトップアイドルの起用は、
たいてい客寄せパンダに終始してしまうのだが、
この作品の前田敦子さんはとても良かった。

主人公は商売女としかつきあった事がない。
女といえば、性のはけ口のようなものと
自然と身に付いてしまっている。
そんな青年が恋をしても、
相手をどう尊重していいかわからない。

せっかくできた高良健吾さん演じる友人も、
彼が自分より育ちが良かったり、
ガールフレンドができたのに嫉妬して、
酷い態度をとってしまって、結局嫌われてしまう。

生きるのが本当にヘタ。

それでも一生懸命生きている。
自己憐憫の中にいても執筆活動で
道を切り開く姿に唯一の望みを感じる。

とにかく登場人物がみんな魅力的。
職場の先輩のマキタスポーツさんなんか
「こんな人いるいる!」って思っちゃう。

あんまり話題にならなかった映画だけど、
山下淳弘監督の代表作といっていいだろう。
前田敦子さんは次回作でもタッグ組んでるしね。

人生に卑屈になりかけたら、
この映画の主人公を参考にすべきかも?

関連記事

『コウノドリ』で子どもへの目が優しくなれば…… その1

自分はすっかりテレビドラマを観ることがなくなってしまった。というか結婚して子どもができてから、ろ

記事を読む

一見水と油かと思いきや。寂聴さんとホリエモンの対談集『死ぬってどういうことですか?』

尊敬する瀬戸内寂聴さんと、 自分はちょっとニガテな ホリエモンこと堀江貴文さんの対談集

記事を読む

『境界のRINNE』やっぱり昔の漫画家はていねい

ウチでは小さな子がいるので Eテレがかかっていることが多い。 でも土日の夕方の、青年向け

記事を読む

王道、いや黄金の道『荒木飛呂彦の漫画術』

荒木飛呂彦さんと言えば『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズの漫画家さん。自分は少年ジャンプの漫画

記事を読む

『WOOD JOB!』そして人生は続いていく

矢口史靖監督といえば、『ウォーターボーイズ』のような部活ものの作品や、『ハッピーフライト』み

記事を読む

高田純次さんに学ぶ処世術『適当教典』

日本人は「きまじめ」だけど「ふまじめ」。 決められたことや、過酷な仕事でも 我慢して

記事を読む

『反社会学講座』萌えアニメも日本を救う!?

まじめなことにユーモアをもって切り込んでいくのは大切なことだ。パオロ・マッツァリーノ氏の考え

記事を読む

『村上さんのところ』村上春樹の人間力

人気小説家の村上春樹さんと 読者の交流サイト『村上さんのところ』が 話題になっている。

記事を読む

『神風』ベッソン発SF映画は紛らわしいタイトル

フランスの俳優ミシェル・ガラブリュさんが1月4日に亡くなったそうです。フランスの役者さんとい

記事を読む

『ひとりぼっちを笑うな』蛭子さんはハルクの如し

最近、蛭子さんの言葉が流行っているらしい。蛭子さんとは、マンガ界のヘタウマ天才と言われ、タレント

記事を読む

『Ryuichi Sakamoto : CODA』やるべきことは冷静さの向こう側にある

http://ryuichisakamoto-coda.com/[/

『マイティ・ソー バトルロイヤル』儲け主義時代を楽しむには?

http://marvel.disney.co.jp/movie/t

『わたしを離さないで』自分だけ良ければいいの犠牲

今年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ原作の映画『わたしを

『ブレードランナー2049』映画への接し方の分岐点

http://www.bladerunner2049.jp/[/ca

『トロールズ』これって文化的鎖国の始まり?

配信チャンネルの目玉コーナーから、うちの子どもたちが『トロール

→もっと見る

PAGE TOP ↑