*

『ラストサムライ』渡辺謙の作品選び

公開日: : 最終更新日:2019/06/13 映画:ラ行

 

トム・クルーズ主演の日本を舞台にした時代物ハリウッド映画『ラストサムライ』。渡辺謙さんのハリウッド出世作でもあります。渡辺謙さんが演じるのは西郷隆盛をモデルにした幕末の武士。日本の風景や文化がこれでもかと美化されて描かれています。もうこれは史実に基づいているとかは論外で、ひとつのファンタジーとして捉えていいだろう。むしろこんなにカッコよく日本を世界に紹介してくれてありがとう、といった感じ。

ここでの日本は、自分たちが思っている日本とは別物だが、トム・クルーズ演じるアメリカの軍人が日本に渡ってくるという視点で描かれているので、不思議の国のアリスの如く、日本人だからといった違和感はあまり感じずに観れる工夫がなされている。

最近でもトニー賞にノミネートされた渡辺謙さん。『王様と私』だったので、確かにユル・ブリンナーの面影はあるなと関心。もう日本出身の俳優とかいう立ち位置ではなく、ハリウッドスターのケン・ワタナベとしてそこにいる。ハリウッドでチャンスをつかむ日本の役者さんは多いけれど、渡辺謙さんのように後の作品も話題作に恵まれる役者さんは少ない。相当作品選びの審美眼が肥えているし、慎重なのだろう。思えば渡辺謙さんは一時期白血病を患って、再起も危ぶまれたことがある。復活してどんどん躍進していく姿は、まだやるべきことがこの世にあるといった使命に導かれているようだ。

そして渡辺謙さん自身もハリウッド俳優らしく、政治的発言もきちっと発信していく。成功者はその役目があると、社会貢献活動するのは、ハリウッドセレブの特徴。日本を始めアジアの成功者は、どうしても自分の至福を肥やすことばかりに専念していてダサい。渡辺謙さんは見事にハリウッドセレブのスピリットで進んでいる。なんてカッコいいのだろう!

彼が関わった作品も王道のエンターテイメントでありながら、社会風刺を孕んでいる作品が多い。『ダークナイト』シリーズは9.11のテロ、『ゴジラ(2014)』は原発事故。声高に社会批判をテーマにしている作品でないところもいい塩梅。

『ラストサムライ』のラスト、中村七之助さんが演じる明治天皇が、トム・クルーズ演じる主人公オルグレンに、渡辺謙さん演じる勝元の最期はどのようなだったかと尋ねる場面がある。オルグレンは答えます「どのような最期だったかの話より、どのように生きたかの話をしましょう」。

日々の生活に追われていると、とかく自分は生きているという実感を忘れがちです。長寿することばかりが決していいことではない。自分自身が恥ずかしいと思わない人生を送ることがいかに大切か、棺桶に片足突っ込んだ時に後悔しない生き方を考える必要はありますね。

関連記事

no image

『ルパン三世 ルパンvs複製人間』カワイイものは好きですか?

  先日『ルパン三世』の原作者であるモンキー・パンチさんが亡くなられた。平成が終わり

記事を読む

no image

『リング』呪いのフォーマットは変われども

『リング』や『呪怨』を作った映画制作会社オズが破産したそうです。 そういえば幼稚園頃の娘が「さ

記事を読む

no image

『ルパン三世 カリオストロの城』これって番外編だよね?

  『ルパン三世』が30年ぶりに テレビシリーズになるとのことで。 数年前か

記事を読む

no image

『ローレライ』今なら右傾エンタメかな?

  今年の夏『進撃の巨人』の実写版のメガホンもとっている特撮畑出身の樋口真嗣監督の長

記事を読む

no image

『6才のボクが、大人になるまで。』育児の恐れを緩和させる映画的時間旅行

  『6才のボクが、大人になるまで。』と、邦題そのままの映画。6才の少年が18才にな

記事を読む

no image

『ローガン』どーんと落ち込むスーパーヒーロー映画

映画製作時、どんな方向性でその作品を作るのか、事前に綿密に打ち合わせがされる。制作費が高ければ高いほ

記事を読む

no image

愛すべき頑固ジジイ『ロボジー』

  2015年のゴールデンウィーク映画で『龍三と7人の子分たち』という映画があって、

記事を読む

no image

『リメンバー・ミー』生と死よりも大事なこと

春休み、ピクサーの最新作『リメンバー・ミー』が日本で劇場公開された。本国アメリカ公開から半年遅れだ。

記事を読む

no image

『ラースと、その彼女』心の病に真摯に向き合ったコメディ

  いまや飛ぶ鳥を落とす勢いの人気者になったライアン・ゴズリング。彼の魅力は、そこは

記事を読む

no image

『レゴバットマン/ザ・ムービー』男のロマンという喜劇

映画『レゴバットマン』が面白いという噂はずっと聞いていた。でもやっぱり子ども向けなので後回しになって

記事を読む

no image
『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』その扇動、のるかそるか?

『ハリー・ポッター』シリーズのスピンオフ『ファンタスティック・ビースト

no image
『日本のいちばん長い日(1967年)』ミイラ取りがミイラにならない大器

1967年に公開された映画『日本のいちばん長い日』。原作はノンフィクシ

no image
『SHOAH ショア』ホローコースト、それは証言か虚言か?

ホロコーストを調べている身内から借りたクロード・ランズマンのブルーレイ

no image
『ひろしま』いい意味でもう観たくないと思わせるトラウマ映画

ETV特集で『ひろしま』という映画を取り扱っていた。広島の原爆投下から

no image
『愛の渦』ガマンしっぱなしの日本人に

乱交パーティの風俗店での一夜を描いた『愛の渦』。センセーショナルな内容

→もっと見る

PAGE TOP ↑