『アベンジャーズ/エンドゲーム』ネタバレは国家を揺るがす

世界中で歴代ヒットの観客数を更新しつつある『アベンジャーズ/エンドゲーム』。マーベル・シネマテック・ユニバース(MCU)の一区切りをつける作品ということもあって話題は尽きない。
自分もいてもたってもいられずに、家族みんなで映画館へと足を運んだ。劇場で映画鑑賞するのは一年半ぶり。ずいぶん久しぶりとなった。やっぱり劇場の入場料金の高額さが、遠のいてしまう最大の原因。家族四人での鑑賞料金で、新発売のソフトが買えてしまう。6月から各社さらに値上げするらしいが、なんとかならないだろうか? でもやっぱり映画館で大勢で観る映画のワクワク感はなんともいえない。
本作は今までのMCUの総括に当たる作品なので、劇中には仕掛けが沢山てんこ盛り。感想のどれもがネタバレとなってしまう。未見の人の前では何も言えない。こういった多くのファンがいる作品は、ネタバレは特に厳禁だ。暗黙の箝口令が敷かれるのは、映画ファンのマナーとなってきた。
中国では、いままさにこれから映画を観ようと、劇場のロビーに待つ観客の前で、映画のネタバレを大声で叫んだ男がいたらしい。その男は、観客たちにボコボコにされて事件になった。これから映画を楽しみにしている観客のいる公共の場で、ネタバレを発するのは、ちょっとしたテロみたいなものだ。ネタバレを発した男はなにがしたかったのだろう。まさかの暴力事件の顛末に、自分自身がショックだったのではないだろうか。
映画未見でSNSを見るのは、思わぬネタバレ記事を読んでしまいそうなので危険だと言われている。それだけでなく公共の場も危険がいっぱい。ふと入ったレストランやカフェで、映画を観た人たちが感想を言い合っている場に出くわしたら大変だ。
自分たち家族は、映画鑑賞後食事をしたのだが、そんなネタバレ加害者になり、暴漢に襲われてはいけないので、映画の感想は全くできず。しーんと静まり返ってしまった。映画を観るのも命がけだ。
実は自分も前回の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の結末を、自分の子どもからうっかり聞いてしまった。学校ですでに映画を観た友だちからのネタバレ情報だった。それを知らなければ、初見のときもっと楽しめただろう。でも、ソフト化する前に公式宣伝でガンガンネタバレしていたので、公開初期に劇場で観なければ、なにがしら知ってしまいそうだ。
まあそれが怖いから、今回は早めに映画を観ようと思いきった。まさにこれはディズニーの戦略通りなのだろう。ええ、手の内で踊らされてますとも。
ネタバレをはじめ、ネットの情報を侮ってはいけない。本当か嘘か知らないが、同じディズニー社の『スターウォーズ/最後のジェダイ』で、ネット上で不評を流したのは、ロシアの情報操作によるものだとか。それが今回の『アベンジャーズ/エンドゲーム』でも、行われそうになったとか。
アメリカでトランプ大統領が誕生したのも、イギリスがEU離脱するのも、ドイツの右傾化も、みんなロシアが発信するフェイクニュースに操作されてるとか? 世にも恐ろしき陰謀説。発信者の顔が見えないネット社会。情報操作で世論を動かすのは、それほど難しいことではなさそう。あながち100パーセントデマとも言い難いのがシャレにならない。
政治的な情報操作と、映画を同一視するなと甘くはみれない。映画産業はアメリカの経済には大きなポジションだ。必ず世界でヒットを出せるであろうビッグバジェットの大作が、もしコケてしまったら国が傾きかねない。
日本の世界でのエンターテイメントの需要は、アメリカに次ぐ2位だった。いかんせん日本では、ポップカルチャーを政治利用はすれども、発展には力を貸さなかった。だから産業はどんどん矮小化した。国内完結型の商売になってきたのは残念だ。文化を舐めてかかるなかれ。
ディズニーはゴールデンウィーク明けに、SNS上での本作のネタバレ解禁日を決めた。そりゃあいつまでも箝口令が敷かれたままでは、息苦しいからの配慮かと思いきや、次の展開に宣伝を進めたいかららしい。新たな続編の予告編を発表したかっただけみたい。次回作にあたる『スパーダーマン/ファー・フロム・ホーム』は、『エンドゲーム』のその後から始まるらしい。まだまだ終わる気ないじゃん!
スパイダーマンと言えばちょっとネタバレ。映画のクライマックスで、スパイディがコケたとき、アベンジャーズの女ヒーロー(ヒロイン?)たちが一斉に取り囲んで、「お姉さんたちが守ってあげるから、坊やは引っ込んでな」みたいな構図になる。「おおっ!」とアツくなる場面なのだろうが、自分は違和感を感じた。少年とは言え、女性に囲まれるのはなんだか屈辱的。自分はスパイディに感情移入していたのだろう。
あとで聞いてみると、女性もあの場面はひっかかったらしい。世の中では、それほどお膳立てされなければ、女が前に出てこれないことを象徴しているようにも感じられるらしい。
『アベンジャーズ』シリーはじめMCUの世界観は、ゴリゴリのホモソーシャル。たとえ登場人物が女だとしても、マインドはみな男。だから男に媚びるような女性は出てこない。スカーレット・ヨハンソンやエリザベス・オルセンみたいな、かわいい系女子ですら、マッチョな立ち姿。戦う女性像。映画のメインターゲットが中年男性だったのに、若い女性にも受け入れてもらえた最大の要因だろう。
そんなジェンダーの差別問題も、心地よくエンタメとして浄化しているMCUですら、捻れねじれてしまった。しかし日本人はなぜ「強い女」が苦手なのだろうか? 根深い男尊女卑のコンプレックスを感じる。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、『タイタニック』の興行記録も破ったらしい。『タイタニック』が流行っていた頃は、猫も杓子も映画館に足を運んでいた印象だった。でも『アベンジャーズ』に関しては、案外周囲で観ている人が少ない。それどころかMCU自体を観たことがない人ばかりだ。
映画のヒットなど、所詮この程度のことなのだろう。まあ『タイタニック』の頃は自分も20代で、人生でいちばん映画を観る時期だし、周りはそんな友だちばかりだった。
あれから20年すぎて、社会人になったり親になったりして、交友関係の人の種類も随分変わった。何かに熱狂したとしても、渦中にいればそれは社会現象だが、少し引いた目でみると大したことはないのかもしれない。
どんなに夢中になっている好きなことでも、冷静に批判することは大切だ。自分が好きなものが、他人も好きとは限らない。けして盲信になるべからず。
もしかしたら、大人になるということは、「冷静と情熱のあいだ」を上手にコントロールできる術を得ることなのかもしれない。
MCUが続いていくのはいいけれど、飽きられてフェイドアウトしていくのだけはイヤだな。惜しまれて、有終の美を飾って、潔く去ってくれた方が伝説になる。記憶も美化される。いちファンとしては、「MCU、まだやってたの?」というのだけは避けてもらいたいものだ。
ネットをみると、さまざまな言語でこの映画の話題が、アツく飛び交っている。いろんな国のいろんな文化の人たちが、ひとつの映画を楽しんでる。とてもワクワクするじゃない?
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