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『カーズ/クロスロード』もしかしてこれもナショナリズム?

公開日: : アニメ, 映画:カ行, 映画館

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昨年2017年に公開されたピクサーアニメ『カーズ/クロスロード』。原題はシンプルに『Cars 3』。最近の海外の日本公開作品は、続編だとヒットしないという思い込みがあるらしく、タイトルに数字を入れたがらない。和製英語でローカライズしたタイトルになるのが流行りだ。オリジナルを尊重しない日本の配給会社のありかたはあまり好ましくない。まあ『クロスロード』という『人生の交差点(岐路)』という邦題は、今回の『カーズ』のテーマでもあるので、『Cars 3』よりかは、わかりやすいのは確かだ。

でも洋画の興行がイマイチなのは、ひとえに続編だからという理由ではないと思う。世界でもダントツで高額な、日本の映画館の鑑賞チケットだからに決まってる。日本ではこの数年どんどん景気が悪くなっている中、普通に1,800円の入場料は高すぎる。IMAXやらMX4Dなどの特殊上映になると、1人の入場料で3,000円を超えてしまうこともある。家族連れならいくらかかる? たとえ極上の上映環境だとしても、あまりの高額なら諦めちゃう。気軽に楽しめるはずの映画鑑賞は、かなり敷居の高い娯楽となってしまった。

自分は昨年自宅にプロジェクターとサラウンド環境を揃えてしまったせいか、最近では劇場へ足を運ぶことがほとんどなくなった。数百円で映画が楽しめるレンタルにシフトチェンジしてしまったのだ。映画は映画館で観るに限るし、自宅での映画鑑賞で自称映画ファンだというのは邪道なのは重々承知。映画は映画館やその周りの街の風景も含めて、鑑賞の思い出になる。それでもコストパフォーマンスを考えると、やっぱり映画館への足は遠のいてしまう。これは時代の流れなのかもしれない。

さて『カーズ/クロスロード』に話を戻す。うちの子たちは、予告編にもあるマックーンの事故の場面がショッキングすぎて、なかなかこの映画を観たがらなかった。半ば強制的に鑑賞に付き合わせてしまったが、最終的にはやっぱり子どもたちも楽しんで観てくれた。

『カーズ』シリーズの特徴は、車を使った風刺に限る。こんなタイプの人はこんな車乗ってるよねのステレオタイプ。車の擬人化。車のモデルになってる人種や出身なんかは、それにあった人選でキャスティングされている。『カーズ』シリーズは、吹替版よりもオリジナル言語で観る方がいっそう楽しい。

今回は子どもたちとの鑑賞だったので吹替版で観た。きっとオリジナルはこういう意図なんだろうなと想像しながらの鑑賞。主人公のレーサー・マックイーンは中年に差し掛かり、時代に追いつけなくなり始めている。冒頭でのマックイーンの事故をきっかけに人生の岐路を意識せずにいられなくなる。

世代交代を意識し始めるマックイーン。かつての師ドック・ハドソンが、自分を導いてくれたあの時の気持ちを思い出す。いつまでも自分が若いわけではない。ドックを演じたポール・ニューマンも実際に今は故人。時の流れは速く切ない。中年時代は、若い頃の記憶が未だ鮮明でありながら、年老いた自分もイメージしやすい。マックイーンみたいに歳相応にファッションも変えてゆける柔軟性は必要だ。カッコよく歳をとる方法のひとつをこの映画は示してくれている。

今回のマックイーンの相棒は、トレーナーのクルーズ・ラミレス。名前からして南部出身なのがわかる。南部出身というだけで下に見られ、差別されてきたのが想像できる。出身地が悪いからダメだよ、女だからムリだよ。クルーズは今まで、何かを始めようとするたびに周りから言われ続けてきたことだろう。ストーリーの中でもクルーズは挫折ばかりの人生だったが、マックイーンはこれまで「為せば成る」と自信と成功に満ちていたことが対照的に描かれている。

生まれた環境で、本来内在している能力が全面に発揮できないのはとても不幸だ。そしてたいして才能もないのに、白人だからとか、出自が良いとかはあまり参考にならないものだ。重要なのはその人個人をちゃんと見据えること。ステレオタイプもこだわりすぎると差別になる。とても際どい線引きだ。

この『カーズ』シリーズは、やっぱりアメリカ人の方が楽しめるんじゃないのかな? アメリカに住んでいない日本人としては、様々な人種が集まる国での生活は想像しづらい。こんな人はこんな車に乗っているというのも、かなりイメージを膨らませなくてはならない。

ではもし日本で同じことをやろうとしたらどうだろう? 各都道府県の方言やら文化の違いを面白おかしく描くことはできるだろうが、なんとも視野の狭い、自国に閉じこもった雰囲気の作品になってしまうだろう。そんな作品は、もちろん世界へ進出することはできない。自国民しか理解できないエンターテイメントは、視野が狭すぎてちょっとツラい。

そういえば自分は最近では意識して日本の作品を観ないようになってきた。邦画は、センセーショナルな話題性ばかりを求めているので、モラルのタガが外れた作品が多いのは昔から。オリジナリティのある単独の作品が少なく、関連作品も知らないとその作品だけでは理解できないような楽屋落のものばかりなのも、いちげんさんには入りにくい。それに加えて最近の国内大手メジャー作品は、なんらかの圧力がかかりすぎの印象で息苦しくもある。なので国内の作品を避け始めたら、すっかりモヤモヤが晴れて、映画が観やすくなってしまった。良いんだか悪いんだか?

『カーズ』も、「アメリカ人、こんな人あるある」の風刺映画なのだが、これもあんまりハマりすぎると、自国愛にどっぷり浸りすぎて息苦しくなってしまう。海外である日本で、このような「アメリカ人あるある」を、ファンタジーのように楽しんでいる方が健全な気さえしてくる。いくら個性の雑多なアメリカでも、このネタで三本も映画を作ってしまうのは引っ張りすぎかも。

『カーズ』といえばジョン・ラセター監督作品だったが、今回は新人監督のブライアン・フィーにバトンタッチしている。ジョン・ラセターもセクハラ問題でディズニー・ピクサーから追放されてしまったし、これもまさにリアル『クロスロード』。物語性のある作品は、時に関わった人の人生をそのまま反映したりもする。映画は嘘をつけない、恐ろしい媒体でもあるということだ。

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