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『オクジャ okuja』 韓国発、米国資金で米国進出!

公開日: : 最終更新日:2022/07/10 映画:ア行, 音楽

Netflixオリジナル映画『オクジャ』がメディアで話題になったのは2017年のこと。カンヌ国際映画祭に出品された。果たして映画館で流れていない映画を映画祭の受賞レースに乗せていいものかと論争になっていたかと思う。話題になった映画なら、とりあえず興味が湧く。でもNetflixに入っていなければこの映画は観れない。このとき自分にとってネット配信は、まだまだハードルが高かった。

自分も当時は、映画館にかからない作品は映画とは別物なのではないだろうかと偏見があった。それまでの常識として、衛星CS放送や配信会社でのオリジナル制作作品は、グレードが低いものばかりだった。どうせ大したことないんでしょと思い込んでしまっていた。Netflix作品はその後、世界中の映画祭で多くの作品が評価されている。配信のみのオリジナル作品にも関わらず、大きなスクリーンで上映しても問題ない高レベルの作品ばかり。むしろ家庭のリビングだけで放映するのは勿体無いくらい。

作品自体にパワーがあれば、どんな環境で観てもおもしろいものはおもしろい。映画は映画館で観るものという概念は、今回のコロナ禍で吹っ飛んだ。映画好きが映画館へ行けないこともある。映画を観れないで悶々とするくらいなら、今すぐスマホで観た方が精神衛生上に良い。自分は最近では、気になる作品はまずスマホで観て、良かったら大きな画面で観直すようにしている。気に入った作品は、何度観ても鑑賞に耐え得る。この映画『オクジャ』も、すっかりそのルートに乗ってしまった。

『オクジャ』はのちに『パラサイト』で米国アカデミー賞を獲得するポン・ジュノ監督の前作にあたる。緑の自然の中、女の子とモンスターのツーショットのビジュアル。モンスターが登場すると、同監督の『グエムル』も思い出す。この映画は当初、韓国版『となりのトトロ』と評されていた。もちろん『となりのトトロ』は自分も好きで何十回も観ている。でもいまさら『となりのトトロ』をリメイクされても興味が湧かない。実際に映画が始まってみると『トトロ』っぽいのは冒頭だけ。物語の始まりと中盤では、まるで別の作品を観るかのよう。

韓国映画の特徴で、いろんな要素をひとつの作品に盛り込んでしまうところがある。それがひとつの作品として、良いことなのか悪いことなのかよくわからない。『オクジャ』もロードムービーの姿を借りながら、場面がどんどん変化していく。舞台は韓国の山奥から始まって、都会のソウルへと向かう。そして世界の情報の中心地・ニューヨークで大団円を迎える。ファンタジーの鉄則として、冒険を終えた若者は、旅立ちの場所の故郷へと戻っていく。

アメリカ大企業で開発された新種の豚「スーパーピッグ」。それを企業が世界各地のさまざまな環境下で育てて回収する。主人公の少女ミジャの家もその養豚業に参加している。豚はオクジャと名付けられ、家族同然にミジャとともに育っていく。充分に育ったスーパーピッグを回収すべく、大企業はオクジャをさらっていく。ミジャが囚われたオクジャを助けに行くという単純なプロットに、アクションや社会風刺がてんこ盛り。かなりおもしろい。

冒頭での山奥の場面では、劇伴はほとんどかからず、木々や川のせせらぎ音などの自然音を活かした演出もいい。この後、この映画が急にテンポアップしていくことが、この時点では想像すらできない。コントラストの効いた演出。

近年、韓国のサブカルチャーがアメリカ文化を取り込んでいる。韓国はこの20年で、世界標準を意識したコンテンツづくりを国がらみで力を入れた。ブラックと言われる映画業界を、徹底した働き方改革に成功。撮影現場は定時で上がれたり、コンプライアンスがしっかりしている。パワハラなんてもってのほか。良い製品(作品)は良い職場環境でこそ生み出せる。熱意や根性論ではどうしようもないことが証明された。それに比べて日本はいまだに、やりがい搾取の業界のままという嘆かわしさ。クールジャパンもなんともお寒い。

アメリカのNetflixの制作で、韓国の監督で韓国絡みの映画を制作する。韓国の山奥から、自国の都会ソウルを経て、アメリカを乗っ取っていく。この『オクジャ』のプロットが、そのまま現代の韓国カルチャーの立ち位置を説明している。オクジャがソウルの地下街をぶち壊していく様が爽快。これまでの資本主義をぶち壊しているかのよう。加熱する食ブームにフードロス。映画の根底には貧富の格差問題が大きく流れている。

人は経済的に貧しすぎると、心も荒んで正い判断ができなくなる。韓国のエンターテイメント作品のテーマには、目先の金銭のために道を踏み出してしまう人の姿が多く見られる。世界的に一気に上り詰めた韓国だからこそ、格差社会は深刻な問題なのかもしれない。知性と反知性が拮抗する。そのバランス感は、万年不景気の日本よりも可視化しやすい。

動物愛護を思想にもつ団体が、過激化していくのも皮肉。感受性の高い彼らは、動物虐待の映像を見ただけで涙する。でももしポン・ジュノ監督に個人的な思想を問えるとしたら、きっと「そんなものはない」と答えるだろう。社会風刺が効いてるけれど、ポップに仕上がるのは、そこにウェットな感情がないから。反骨精神のないポップカルチャーはつまらない。エンターテイメントとして扱えるべき問題は、現代社会にはまだまだ山ほど溢れている。それに気付いてカタチにするには、センスと勇気が必要。

ポン・ジュノがあらかじめお断りしているように、『オクジャ』はさまざまな日本のアニメの影響を受けている。元ネタは同じなのに、どうしてこうもウェルメイドに仕上がるか。視点は意地悪だけど、けして後味を悪くさせない。観る人によって印象が変わってくる、ケムに巻くような語り口もセンスがいい。敷居は広く低いのに、いろいろと考えさせられる。

そしてハリウッドの名優たちのノリノリの怪演が凄すぎる。みんなこの映画に出たかったのね。韓国カルチャーとハリウッドの融合。なんともワクワクしっぱなしの映画だった。

Okja: The Art and Making of the Film ハードカバー

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