*

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』 お祭り映画の行方

公開日: : 最終更新日:2021/10/30 映画:ア行, 映画館

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』やっと観た!

連綿と続くMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の前作『ブラック・パンサー』を観そびれていたので、なかなかこちらへ進むことができなかった。このシリーズ、どの作品にどんな伏線が仕込んであるかわからないので、なるべくなら順番通りに観ておきたい。

出遅れてしまった『ブラック・パンサー』は、メンバー集合の『アベンジャーズ』以外の単独ヒーロー作品では、MCU最大のヒットだったとか。これから盛り上がりそうな『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の直前作だったので、抑えておかなければと動いた客が多かったのだろう。ディズニーの宣伝では「シリーズ最高傑作!」と謳っていた。自社の自画自賛ほど疑わしいものはない。商売がうまいな。そんな扇動に素直に乗れる人もいれば、自分のようにそのせいでメチャクチャ乗り遅れちゃう人もいるのだから、マーケティングはわからない。

『インフィニティ・ウォー』は、すっかり観るのに出遅れたせいで、あちこちでネタバレ情報が入ってきてしまった。自分の周りの映画好きな人は口のかたい人ばかりだが、話題作はネットや街を歩いているだけでも、誰が何を喋り出すかわからない。意外にも今回は、小学生の自分の子どもからネタバレ情報を聞かされてしまった。なんでもゴールデンウィークに映画館へ観に行った学友に、映画の結末を詳しく聞いてしまったらしい。

自分はそれほどネタバレを恐れないタイプ。百聞は一見にしかず。人から聞いた話でも、自分が実際に観てみたら、印象が全然違うなんてことはよくある。実際、『インフィニティ・ウォー』もそんな感じだった。子どもの伝え聞きという、不確かな情報も幸いした。でもやっぱりこの映画は、事前情報がまったくない方がいい。今回ばかりは、まっさらな状態で、ワクワクしながらこの映画を鑑賞できた人が羨ましい。

今年で10年になるというMCU。シリーズ一作目の『アイアンマン』は、上の子どもが生まれたばかりの頃だった。休日に、赤ん坊を寝かしつけて起こさないように、ヘッドホンでコソコソ観ていたのが懐かしい。今ではその子共々『アベンジャーズ』ファン。10年の月日は長い。

噂では、来年公開作『アベンジャーズ4』で、一応ストーリーを完結させると言われている。過去作でさんざ張り巡らされた伏線の回収が、この『インフィニティ・ウォー』でなされ始めた。いよいよ大団円といったところか。

今思うと、果たして10年前にどれだけの構想でこのアベンジャーズの映画プロジェクトを考えていたのだろう? 不人気だったら未完のまま打ち切りになるだろうし、見切り発車の賭けが大当たりしたのだろう。さも最初からこうなるのはわかっていたと、したり顔で超大作の風情だけど、内情はディズニー幹部しかわからない。そもそもスタートはディズニーじゃなかったし。ただ、のし上がっていくものを見ているのは、客観的にも楽しいものだ。

『アベンジャーズ4』で一応物語の展開に一括りつけるとはいえ、その後のMCU作品もまだまだ続けるつもりらしい。いちばんイヤな展開は、観客に飽きられたり、キャストやスタッフのトラブルで、自然消滅してしまうこと。やっぱり人気があるうちに、惜しまれて有終の美を飾った方が潔くて美しい。

ディズニー・マーベルの上手いところは、アメコミ原作のオタクっぽい題材なのに、オシャレな感じに仕上げていったところ。スーパーヒーローなんて、オッサンしか集まらなそうなジャンルなのに、女子でも観やすくする工夫がなされている。幼稚なはずなのにダサくならなかった。

他社でもこの成功にあやかって、複数の作品で世界観を共にするユニバーススタイルを真似してみてるが、ここまで上手くいった例はない。『アベンジャーズ』は間違いなく2010年代のカルチャーの代名詞になった。「あの頃、あんなのばっかり流行ってたね」と笑う時もやがてくるのだろう。不景気な世の中なのに、能天気に楽しめるエンターテイメントの成功。最近では珍しい華のある事象だ。

自分の『インフィニティ・ウォー』のお気に入りポイントは、やっぱりアイアンマンとスパイダーマン。今回の両者のスーツは、ボディにピッタリフィットのぴちぴちテカテカの全身タイツ。真紅の光沢のあるタイツ姿のおじさんと少年のツーショットが気色悪くてクスクス笑ってた。

そういえば『インフィニティ・ウォー』では、ヒーローたちがワンフレームに一同に会してポーズを決める「ヒーローショット」がなかった。これは次回のお預けなのね。そこで完結編らしいカタルシスを持ってくるのでしょうね。ルッソ兄弟の王道の演出、引っ張るね〜。

とにかく今自分は完全に「アベンジャーズ脳」になってしまった。来年公開予定の続編も、先日クランクアップしたらしい。『アベンジャーズ』は、映画というよりもお祭りイベントに近い。これは旬なときに乗らなきゃ面白くない。踊る阿呆と見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損。ディズニー・マーベルの罠にまんまとハマってやろうじゃないか!

関連記事

『君たちはどう生きるか』 狂気のエンディングノート

※このブログはネタバレを含みます。 ジャン=リュック・ゴダール、大林宣彦、松本零士、大

記事を読む

『アフリカン・カンフー・ナチス』 世界を股にかけた厨二病

2025年の今年は第二次世界大戦から終戦80周年で節目の年。それもあってか終戦記念日の8月近

記事を読む

no image

人を幸せにしたいなら、まず自分から『アメリ』

  ジャン=ピエール・ジュネ監督の代表作『アメリ』。 ジュネ監督の今までの作風

記事を読む

『アンという名の少女』 戦慄の赤毛のアン

NetflixとカナダCBCで制作されたドラマシリーズ『アンという名の少女』が、NHKで放送

記事を読む

『イニシェリン島の精霊』 人間関係の適切な距離感とは?

『イニシェリン島の精霊』という映画が、自分のSNSで話題になっていた。中年男性の友人同士、突

記事を読む

『Ryuichi Sakamoto | Playing the Orchestra 2014』 坂本龍一、アーティストがコンテンツになるとき

今年の正月は坂本龍一ざんまいだった。1月2日には、そのとき東京都現代美術館で開催されていた『

記事を読む

『永遠の門 ゴッホの見た未来』 ギフテッドとインフルエンサー

東京都美術館で開催されている『ゴッホ展』に行った。収集家のヘレーネ・クレラー=ミュラーのコレ

記事を読む

『帰ってきたヒトラー』 これが今のドイツの空気感?

公開時、自分の周りで好評だった『帰ってきたヒトラー』。毒のありそうな社会風刺コメディは大好物

記事を読む

『マッドマックス フュリオサ』 深入りしない関係

自分は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が大好きだ。『マッドマックス フュリオサ』は、そ

記事を読む

『オクジャ okuja』 韓国発、米国資金で米国進出!

Netflixオリジナル映画『オクジャ』がメディアで話題になったのは2017年のこと。カンヌ

記事を読む

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』 普通に生きるという特殊能力

リチャード・カーティス監督の『アバウト・タイム』は、ときどき話

『ヒックとドラゴン(2025年)』 自分の居場所をつくる方法

アメリカのアニメスタジオ・ドリームワークス制作の『ヒックとドラ

『世にも怪奇な物語』 怪奇現象と幻覚

『世にも怪奇な物語』と聞くと、フジテレビで不定期に放送している

『大長編 タローマン 万博大爆発』 脳がバグる本気の厨二病悪夢

『タローマン』の映画を観に行ってしまった。そもそも『タローマン

『cocoon』 くだらなくてかわいくてきれいなもの

自分は電子音楽が好き。最近では牛尾憲輔さんの音楽をよく聴いてい

→もっと見る

PAGE TOP ↑