『坂本龍一×東京新聞』目先の利益を優先しない工夫
「二つの意見があったら、
人は信じたい方を選ぶ」
これは本書の中で坂本龍一さん
(以下教授)が言った言葉。
「これをやったら金持ちになれるかもよ」
そう言われると人はそちらを優先してしまう。
今のメディアを始め、日本の社会自体がそんな風潮。
ビジネス中心の報道。
でも今は高度成長期とは違う。
商品を揃えれば飛ぶように
売れるような時代ではない。
そしてこの「金持ちになれるかもよ」の言葉の裏には
「そのかわりどうなるかは知らないよ」という
無責任な意味合いも含んでいる。
教授は東京新聞に向かって
「左翼新聞と思われないように」と警告している。
自分もすっかり東京新聞は左翼系かと思っていた。
自民党を批判したり、リベラルな意見を発すると
いまはすぐ左翼となってしまうのかもしれない。
本編では反原発について多く語っているが、
急激におかしな方向へ向かっている
日本についても批判的に語っている。
目先の金儲けや、便利さに心を奪われるのは
先々の道を踏み間違えやすい。
「正しいことを言ってるんだから聞けよ」とか
「深刻な話をしかめっ面で話すと聞いてもらえない」と
正しく伝える工夫をしてほしいと、教授は東京新聞に伝えている。
とてもわかりやすい言葉。
先日夜の11時頃、帰りも遅くなり晩飯もまだだったので、
24時間営業のファーストフード店へ入った。
店の外から若い女性が、トイレを貸して欲しいと
店員に頼むと、即答で断られ、すぐ出て行ってしまった。
それを見た若い男性が、店員につかみかかり
「トイレぐらい貸してやれよ! ケチ臭い店だな!!」
と大声で延々怒鳴っていました。
店員は「防犯ベルならしますよ」と言ったので、
男はそそくさと外へ出て行きました。
その若い男の言っていることは間違ってはいない。
ただ店内で怒鳴ってしまっては本末転倒。
なぜその男はそんなに怒ったのか?
世知辛い世の中が見えてくる。
マニュアル通りに対応する店員に
冷たさを感じたのか?
彼もそうした冷たい環境で働いているのか?
なぜこんな夜遅くまで働かなければならないのか?
ふと夜中もあいている店に入ってしまったが、
別に店も24時間営業する必要もない。
店がやっていなければ他の方法を考える。
便利に慣れてしまうとそこに甘んじてしまうが、
働いている人、そこに集まっている人、
なんだかみんなハッピーじゃない。
もしかしたらちょっと不便なところにこそ、
ささやかな幸せがあるのかも知れない。
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