*

『エイリアン』とブラック企業

公開日: : 最終更新日:2022/05/05 映画:ア行

去る4月26日はなんでもエイリアンの日だったそうで。どうしてエイリアンの日だったかと調べてみれば、エイリアンが見つかった惑星がLV-426という名前に由来しているらしい。5月4日が「May the force(4th) be with you」にひっかけて、スターウォーズの日に対抗してるのかな?

自分が一作目の『エイリアン』を観たのは小学生のときテレビの放送で。当時の吹き替えでは、マザーコンピューターのことを「おふくろさん」と訳していた。ご丁寧に「宇宙で孤独に旅をするクルー達は、コンピューターをおふくろさんと呼び、親しんでいる」とナレーションまで入っていたような。

『エイリアン』といえば、リドリー・スコット監督の第一作から、関連作品はたくさん誕生した。なかでもシガニー・ウィバーが演じるエレン・リプリーが主人公のシリーズがもっとも自分は好きだ。1〜4まであるオリジナルシリーズは、全作とも監督が違う。その監督達はのちに誰もが知っている名作を撮る監督さんへとなっていく。『エイリアン』シリーズは名匠の登竜門かも?

第一作の『エイリアン』は、巨匠リドリー・スコット。のちに『ブレードランナー』や『グラディエーター』を撮る。日本が舞台となった『ブラックレイン』なんて作品もある。SFとホラーを融合させ、HRギーガーのデザインしたエイリアンの造詣をハッキリ映さない、ジラす映像美の演出をした。
『エイリアン2』は、ジェイムズ・キャメロン。『タイタニック』や『アバター』、『ターミネーター』シリーズの生みの親。戦闘ものにアレンジした。女性アクションの代表的な作品。
『エイリアン3』はデビッド・フィンチャー。『セブン』や『ファイト・クラブ』、『ソーシャル・ネットワーク』の監督のデビュー作にあたる。シリーズでもっとも暗く、アメコミ的でペシミスティックな作風になった。
『エイリアン4』はジャン・ピエール・ジュネ。のちに『アメリ』を監督するフランス人監督の初の英語作品。ウィノナ・ライダーの起用は、やっぱり美少女ものへの憧れか? 緑を基調にしたアメコミ風映像美と、コメディ要素が加わっているのがフランスのエスプリ。
どれもが作風が違えど、それぞれの監督ののちの作風のエッセンスがすでに見受けられる。

『エイリアン』シリーズは、とかくエイリアンの造詣に焦点が当たりがちだけれど、実はこの映画、ブラック企業とそこで働いているブラック社員の関係の映画だと自分は思っている。ブラック企業で働いたり関わったるするとヒドい目にあうよって教訓の映画。これ、4作品とも共通のテーマ。『エイリアン vs プレデター』シリーズや、リドリー・スコットがリブートした『プロメテウス』なんかは、その要素がないから、自分は物足りないと感じてしまうのかも知れない。

第一作の『エイリアン』では、宇宙貨物船ノストロモ号のクルー達が、労働条件について文句を言っている場面から始まる。作り手は、当初はそんな大意のない場面のつもりだっただろう。宇宙旅行している人間も、自分たちとそれほど変わらない問題を抱えていると、共感を抱かせるための要素にしかなかったはず。

この映画の企業の指示は、クルーはエイリアンとの遭遇で、その接触を図るのが第一優先とすること。それを無視すればボーナスどころか、給料は支払われないという契約。実は人命は二の次という企業の考え方があとで露呈する。結局クルー達は、関わりたくもないエイリアンと接触して、とんでもない災難に遭遇することとなる。人命度外視の企業は、未開の星に多勢の家族を移住させたり、エイリアンを生物兵器にしようとしたり、利益のためならどんなことでもやってしまう。本当の悪はエイリアンではなくて、人間が作った企業だというのが興味深い。

ブラック企業という言葉は、ここ数年で日本で流行した言葉だ。なんでもこの『エイリアン』にでてくる悪徳企業ウェイランド・ユタニ(湯谷)社は日系会社。『エイリアン3』には「鉄」とかやたら日本語がでてくる。『AKIRA』とかの影響で、単純に「日本語カッコいい!」ぐらいの感覚で日系企業の設定にしているのなら光栄だけど、もし当時の日本の企業の様子が、海外からは悪徳な印象で、その風刺として選ばれたとしたら、完全にいまの日本の状況を暗示していて空恐ろしい。

そういえば第一作で、エイリアンの子どもが腹から出てくる場面で、アメリカでの観客が「オーノー!  スシスシ(寿司)!!」と叫んでいたらしいから、案外海外からすると、日本をイメージしやすい作品だったのかも。

関連記事

『アメリカン・フィクション』 高尚に生きたいだけなのに

日本では劇場公開されず、いきなりアマプラ配信となった『アメリカン・フィクション』。 最

記事を読む

『映画大好きポンポさん』 いざ狂気と破滅の世界へ!

アニメーション映画『映画大好きポンポさん』。どう転んでも自分からは見つけることのないタイプの

記事を読む

no image

『硫黄島からの手紙』日本人もアメリカ人も、昔の人も今の人もみな同じ人間

  クリント・イーストウッド監督による 第二次世界大戦の日本の激戦地 硫黄島を舞

記事を読む

『AKIRA』 ジャパニメーション黎明期

日本のアニメが凄いと世界に知らしめた エポックメーキング的作品『AKIRA』。 今更

記事を読む

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』 お祭り映画の行方

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』やっと観た! 連綿と続くMCU(マーベル・シ

記事を読む

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』 僕だけが知らない

『エヴァンゲリオン』の新劇場版シリーズが完結してしばらく経つ。すっかりブームもおさまって、『

記事を読む

『おおかみこどもの雨と雪』 人生に向き合うきっかけ

『リア充』って良い言葉ではないと思います。 『おおかみこどもの雨と雪』が テレビ放映

記事を読む

『アドレセンス』 凶悪犯罪・ザ・ライド

Netflixの連続シリーズ『アドレセンス』の公開開始時、にわかにSNSがざわめいた。Net

記事を読む

no image

『アバター』観客に甘い作品は、のびしろをくれない

ジェイムズ・キャメロン監督の世界的大ヒット作『アバター』。あんなにヒットしたのに、もう誰もそのタイト

記事を読む

『イレイザーヘッド』 狂気は日常のすぐそばに

渋谷のシネマライズが閉館した。自分が10代の頃からあしげく通っていた映画館。そういえば最近、

記事を読む

『プレデター バッドランド』 こんなかわいいSFアクション映画が観たかった

『プレデター』の最新作が公開される。近年日本では洋画が不人気。

『藤本タツキ 17-26』 変態宣言を強要する珠玉のアニメ短編集!

『チェンソーマン』は、期待してなかったにも関わらず意外とハマっ

『Ryuichi Sakamoto: Diaries』 こうしてすべてが変わっていく

『Ryuichi Sakamoto: Diaries』という映

『M3GAN ミーガン 2.0』 ゆるぎないロボ愛よ永遠に

自分はSFが好き。友だちロボットのAIがバグって、人間を襲い出すS

『ナミビアの砂漠』 生きづらさ観察記

日曜日の朝にフジテレビで放送している番組『ボクらの時代』に俳優

→もっと見る

PAGE TOP ↑