*

日本映画の時代を先行し、追い抜かれた『踊る大走査線』

公開日: : 最終更新日:2019/06/15 ドラマ, 映画:ア行

 

『踊る大走査線』はとても流行ったドラマ。
ドラマが映画化されて、国民的作品となった。
観た事はなくとも日本に住んでいれば
タイトルぐらいは誰もが知っていると思う。

ドラマから映画化へという、
日本映画の今のスタイルのひな形を作った。

90年代後半、このドラマが出てきたとき、
確かに新しいタイプの娯楽作品だった。

今までの刑事物は、鉄砲を撃ったり、
ノーヘルでバイクに乗ったり、
フィクション性が高かったのだが、
本作では刑事もサラリーマンと同じという、
ある意味夢を壊して、現実的に描いた。

今までの日本映画は泥臭かったのに対し、
本作のように走っても汗をかかない主人公の姿に、
日本娯楽映画の新境地を拓いたといってもいい。

それでいて根底にはサブカルネタ満載で、
いま実写版も制作されている
アニメ作品『パトレイバー』からは
大きく影響を受けている。

いくつものスプンオフ作品(番外編)も作られ、
もう面白いんだかつまらないんだかどうでもいいくらい
ブランディングされてしまった。

2010年に久しぶりに劇場版3作目が公開された。
正直もう『踊る』は飽きていたのだが、
今まで観てきたしと思って、こわごわ観てみる。

正直つまらなかった。
なにもかもが古くさく感じた。

スリーアミーゴスというダメ上司三人組が、
自分の保身のため猿芝居をうつ様など、
堅い職種の人の不祥事が多い昨今では
不愉快きわまりない。

主人公・青島とすみれの関係も
まったく進展していないのにもいらつきを感じさせた。
アニメの主人公をイメージした青島が
恋愛に成就したり、結婚したりしてはいけないのだろうが、
こんな草食系では主人公としてなんとも頼りない。

こんなつまらない映画を評価したりして
制作者を甘やかしたらダメだと感じた。

しかしブランドに弱い日本人。
『The FINAL』とうたった完結編も大ヒット。
この予告編を観たとき、
「あれ、新作なのに全部観た事あるような気がする」
と感じ、さすがに劇場へは足を運ばなかった。

あとで観たと思うのだが、全然記憶にない。

続編が重なると面白くなくなるのは世の常。
しかしながらここまでつまらない作品が、
それなりに観客動員を稼げるとは、
日本人のブランド信仰の根深さを感じる。

そりゃあリサーチの仕方も
観客をナメたものになるだろうし、
ウケるウケないの基準が
わからなくなってしまうだろう。

『踊る大走査線』は時代を先行し、
時代に追いつかれ、追い越されて行った作品だと思う。

かつて面白くても、
今の世に合わないものってあると思います。

関連記事

『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』 自由恋愛のゆくえ

スティーヴン・スピルバーグ監督の『インディ・ジョーンズ』シリーズが日テレの『金曜ロードショー

記事を読む

no image

『とと姉ちゃん』心豊かな暮らしを

NHK朝の連続テレビ小説『とと姉ちゃん』が面白い。なんでも視聴率も記録更新しているらしい。たしかにこ

記事を読む

『ヴァチカンのエクソシスト』 悪魔は陽キャがお嫌い

SNSで評判だった『ヴァチカンのエクソシスト』を観た。自分は怖がりなので、ホラー映画が大の苦

記事を読む

『今日から俺は‼︎』子どもっぽい正統派

テレビドラマ『今日から俺は‼︎』が面白かった。 最近自分はすっかり日本のエンターテイメ

記事を読む

no image

『高い城の男』占いは当たらない?

  映画『ブレードランナー』の原作者フィリップ・K・ディックの代表作『高い城の男』。

記事を読む

『お嬢さん』 無国籍お耽美映画は解放へ向かう

韓国産の作風は、韓流ドラマのような甘ったるいものと、血みどろで殺伐とした映画と極端に分かれて

記事を読む

『怒り』 自己責任で世界がよどむ

正直自分は、最近の日本のメジャー映画を侮っていた。その日本の大手映画会社・東宝が製作した映画

記事を読む

no image

『電車男』オタクだって素直に恋愛したかったはず

  草食男子って、 もう悪い意味でしか使われてないですね。 自分も草食系なんで…

記事を読む

no image

『オネアミスの翼』くいっっっぱぐれない!!

  先日終了したドラマ『アオイホノオ』の登場人物で ムロツヨシさんが演じる山賀博之

記事を読む

『エクス・マキナ』 萌えの行方

イギリスの独立系SFスリラー映画『エクス・マキナ』。なんともいえないイヤ〜な後味がする映画。

記事を読む

『SHOGUN 将軍』 アイデンティティを超えていけ

それとなしにチラッと観てしまったドラマ『将軍』。思いのほか面白

『アメリカン・フィクション』 高尚に生きたいだけなのに

日本では劇場公開されず、いきなりアマプラ配信となった『アメリカ

『不適切にもほどがある!』 断罪しちゃダメですか?

クドカンこと宮藤官九郎さん脚本によるドラマ『不適切にもほどがあ

『デューン 砂の惑星 PART2』 お山の大将になりたい!

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ティモシー・シャラメ主演の『デューン

『マーベルズ』 エンタメ映画のこれから

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の最新作『マーベ

→もっと見る

PAGE TOP ↑