*

『クラッシャージョウ』 日本サブカル ガラパゴス化前夜

公開日: : 最終更新日:2021/09/11 アニメ, 映画:カ行, 映画館,

アニメ映画『クラッシャージョウ』。1983年の作品で、公開当時は自分は小学生だった。この作品はなかなか単体ではソフト化されず、レンタルもされてなかった。渋谷のTSUTAYAにVHSがひとつ置いてあるだけだった。最近ではCSやらネットテレビやらで観れるようになったけど幻の作品でもあった。当時の宣伝は「『機動戦士ガンダム』のサンライズが送る最新作!!」と煽っていたっけ。自分も一回観たきりだった。

『クラッシャージョウ』は高千穂遙さんのスペースオペラ小説を原作としている。『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザイン兼作画監督をしていた安彦良和さんが挿絵を描いていた。自分は安彦さんの絵が好きだったので、それだけで自分はその小説を読んでいた。映画版はその安彦さんが監督を務めている。

確か観たのは今、新宿バルト9がある新宿東映だったと思う。でも調べると『クラッシャージョウ』は松竹系の映画。どうして東映の映画館でやっていたのだろう? 新宿松竹(現・新宿ピカデリー)との勘違いかな? 『機動戦士ガンダムⅢ/めぐりあい宇宙(そら)』を同級生の小学生と一緒に観にいった時、ギリギリまで「行く、行かない」と友達が騒いでいたので、もうめんどくさいからとひとりで観に行くことにした。いまでは小学生がひとりで都心をうろつくなんて物騒だけど、まだそこまで親も意識がなかったのでなんとなく許されていた。当時はまだ映画を観るには窓口でチケットを買うしか方法がない。大入りの映画では、行列をなして開場を待たなければならない。ひとりで待ちましたよ。周りには自分よりはるかに年上の大学生くらいのお兄さんばかり。あの頃の自分にはみんなオジサンにしかみえない。小学生がひとりでならんでいるので、周りの大人がちょくちょく声をかけてくれていた。

『クラッシャージョウ』は、当時の日本映画には珍しくドルビーステレオで制作されていた。モノラル音声の映画しか観たことのなかった自分は、この音響だけでもえらく感激してしまった。

最近になってこのアニメ映画を観直してみた。アトラクション的にエピソードを詰め込んだ面白さは再確認できた。メインキャラクターたちはどんなピンチがきても無傷で乗り越えられるが、モブキャラはことごとく安易に殺されるご都合主義も、まあ許しましょう。でもやっぱりひっかかるところがある。33年前の公開当時には許されていたのかもしれないけど、今の倫理観には合わないところ。もしかしたらソフト化が積極的でなかったのはそんなところもあるのかも?

まずは主人公のジョウ。19歳の設定なのに酒ガンガン飲んじゃってる。公私ともにパートナーのアルフィンなんかは17歳。未成年飲酒。いまならそれだけでR指定。あとは全体に流れる女性蔑視。直接的な性描写はないにせよ、女性が陵辱されている場面が多すぎる。自分は小学生の公開当時、「女の人は男に辱められてたいへんだな〜。自分は男で良かった」って思っちゃったもの。アニメ=男のものって構図がすでにできあがっていた。

当時アニメの鉄則みたいので、冒頭に女の裸を描けば掴みはオーケーみたいなものがあった。どんどん観客もエスカレートしていって、美少女キャラのヌードシーンを望むようになってくる。実際安彦さんの絵も、カワイイ女の子描きたいってパワーでみなぎってる。需要と共有が見事にマッチ。でも同じ女の子の絵が目的でも、描く方と観るだけの方とでは差が生まれて来る。絵を描くという能動的な行動と、ただ観たいだけの受動的なもの。人は能動的だとパワーを発揮するが、受動的なままだと、どんどん陰にこもってしまう。湧き水も流れれば清流になるが、同じところに溜まったままだと腐ってしまうように。

影響受けたものを呼び水にして、自分も表現者になるくらいにならないと、自分自身が苦しくなってしまうだろう。まさにオタクという言葉がまだ世になかった頃のこと。この映画は楽屋落ちネタも多いので、アニメファンでない、いちげんさんにはわかりづらい。そんな単体で観れないところも、アニメが一般のエンターテーメントになりづらかった要因だろう。

あまり語られることのない『クラッシャージョウ』。ちょっと調べたら、去年くらいからファンの集いみたいなものをあちこちでやっている。自分も急にこの作品を観たのも、なにがし縁があったのかも。当時は王道のエンタメ作品かと思っていたけど、今観るとかなりマニアックな作品だったことが判明してしまった。

関連記事

『キングコング 髑髏島の巨神』 映画体験と実体験と

なんどもリブートされている『キングコング』。前回は『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジ

記事を読む

『グッバイ、レーニン!』 長いものには巻かれて逃げろ

東西ドイツが統合された1989年。自分は子ども時代にそのニュースを見た。のちに学校の世界史の

記事を読む

no image

『スノーマン』ファンタジーは死の匂いと共に

4歳になる息子が観たいと選んだのが、レイモンド・ブリッグスの絵本が原作の短編アニメーション『スノーマ

記事を読む

no image

日本人が巨大ロボットや怪獣が好きなワケ

  友人から「日本のサブカルに巨大なものが 多く登場するのはなぜか考えて欲しい」と

記事を読む

『茶の味』かつてオタクが優しかった頃

もうすぐ桜の季節。桜が出てくる作品で名作はたくさんある。でも桜ってどうしても死のメタファーと

記事を読む

no image

『バウンス ko GALS』JKビジネスの今昔

  JKビジネスについて、最近多くテレビなどメディアで とりあつかわれているような

記事を読む

『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』 25年経っても続く近未来

何でも今年は『攻殻機動隊』の25周年記念だそうです。 この1995年発表の押井守監督作

記事を読む

no image

『猿の惑星: 創世記』淘汰されるべきは人間

  『猿の惑星:創世記』。 もうじき日本でも本作の続編にあたる 『猿の惑星:新世

記事を読む

『のだめカンタービレ』 約束された道だけど

久しぶりにマンガの『のだめカンタービレ』が読みたくなった。昨年の2021年が連載開始20周年

記事を読む

no image

『ガンダム Gのレコンギスタ』がわからない!?

  「これ、ずっと観てるんだけど、話も分からないし、 セリフも何言ってるか分からな

記事を読む

『ロード・オブ・ザ・リング』 ファンタージーがファンタジーのままならば

Amazonのオリジナル・ドラマシリーズ『ロード・オブ・ザ・リ

『鎌倉殿の13人』 偉い人には近づくな!

NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が面白い。以前の三谷幸喜さん

『星の子』 愛情からの歪みについて

今、多くの日本中の人たちが気になるニュース、宗教と政治問題。そ

『コーダ あいのうた』 諦めることへの最終章

SNSで評判の良かった映画『コーダ』を観た。原題の『CODA』は、

『あしたのジョー2』 破滅を背負ってくれた…あいつ

Amazon primeでテレビアニメの『あしたのジョー』と『

→もっと見る

PAGE TOP ↑