*

『FOOL COOL ROCK!』サムライ魂なんて吹っ飛ばせ!!

公開日: : 最終更新日:2019/06/13 映画:ハ行, 音楽

 

『FOOL COOL ROCK! ONE OK ROCK DOCUMENTARY FILM』は、今若い子を中心に人気のONE OK ROCKのワールドツワーを追いかけたドキュメント。日本のアーティストが海外で活躍している臨場感が伝わってくる。

この映画を監督・撮影・編集しているのは中野裕之監督。中野裕之監督といえば映画『SF サムライフィクション』を始めとする、90年代から2000年代のPVなどオシャレな映像感覚で有名だった人。映画作品でゲーム感覚の時代劇とかも多いのだが、自分とはなんとなく感性が合わないのか、よくわからない作風だった。環境もののような映画というのが当時の流行だったのだろう。でも映像と音楽の融合された作品が多い中野監督なので、こういった音楽ドキュメントと相性がいいみたい。

映画の中のONE OKE ROCK(ワンオク)のメンバー達は、楽屋ではいつもふざけていて、仲良し悪ガキが集まって夢を実現しているのが感じられる。欧州のライブハウスの前でファンが並んでいるのをみて「まさか俺たちを待ってるの?」なんて疑心暗鬼にツアーバスを降りると、待っていた現地のファン達から歓声があがる。ワンオクのメンバーも驚くのだが、ニヤッと手応えを感じる表情もみせる。

ワンオクはそもそも国内完結型のビジネスを狙っておらず、海外で通用するバンドになりたいと目標を持っている。国内完結だとどうしても閉じた作風になるし、狭いマーケットで規制やしがらみでがんじがらめになる。それを嫌って世界を目標とする。本来エンターテイメントは世界を視野にするべきものだ。彼らは世界に向かうのにいちばん不必要なのは『サムライ魂』だという。日本だからとか日本人だからとい観点で動いていては世界では通用しない。いま世界で活躍している人の殆どが日本人だから必要とされているのではなく、その人自身が必要とされている。渡辺謙さんだってオファーが来る役は日本人でなくてもいい役柄が多い。世界で通用する人はハナっから日の丸掲げて活動なんかしない。それはあとから政治家やマスコミが「日本が世界に誇る」と便乗しているだけ。

ワンオクは米ワーナー社と契約を正式にして、海外版のアルバムも発表しようとしている。彼らが所属している事務所『アミューズ』はアメリカに進出して、他に『Perfume』や『BABYMETAL』などもどんどん世界に売り込んでいる。もうどんな産業も日本国内だけを視野にしていてはやっていけない時代がきた。日本の狭い視野をぶちこわして、ワールドワイドに自己錬磨していかなければ廃れていくだけだ。表現者も観客も世界で通用するものを理解できなければ、どんどん世界から取り残されていくだろう。

関連記事

『さらば、我が愛 覇王別姫』 眩すぎる地獄

2025年の4月、SNSを通して中国の俳優レスリー・チャンが亡くなっていたことを初めて知った

記事を読む

『めぐり逢えたら』男脳女脳ってあるの?

1993年のアメリカ映画『めぐり逢えたら』。実は自分は今まで観たことがなかった。うちの奥さん

記事を読む

『戦場のメリークリスマス 4K修復版』 修復版で時間旅行

映画『戦場のメリークリスマス』の4K修復版の坂本龍一追悼上映を観に行った。そもそもこの映画の

記事を読む

『フェイブルマンズ』 映画は人生を狂わすか?

スティーヴン・スピルバーグ監督の自伝的映画『フェイブルマンズ』が評判がいい。映画賞も賑わせて

記事を読む

『火垂るの墓』 戦時中の市井の人々の生活とは

昨日、集団的自衛権の行使が容認されたとのこと。 これから日本がどうなっていくのか見当も

記事を読む

『博士と彼女のセオリー』 介護と育児のワンオペ地獄の恐怖

先日3月14日、スティーヴン・ホーキング博士が亡くなった。ホーキング博士といえば『ホーキング

記事を読む

no image

『バウンス ko GALS』JKビジネスの今昔

  JKビジネスについて、最近多くテレビなどメディアで とりあつかわれているような

記事を読む

『アーロと少年』 過酷な現実をみせつけられて

く、暗いゾ。笑いの要素がほとんどない……。 日本のポスタービジュアルが、アーロと少年ス

記事を読む

『ミニオンズ』 子ども向けでもオシャレじゃなくちゃ

もうすぐ4歳になろうとしているウチの息子は、どうやら笑いの神様が宿っているようだ。いつも常に

記事を読む

『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』 ヴィランになる事情

日本国内の映画ヒット作は、この10年ずっと国内制作の邦画ばかりがチャートに登っていた。世界の

記事を読む

『教皇選挙』 わけがわからなくなってわかるもの

映画『教皇選挙』が日本でもヒットしていると、この映画が公開時に

『たかが世界の終わり』 さらに新しい恐るべき子ども

グザヴィエ・ドラン監督の名前は、よくクリエーターの中で名前が出

『動くな、死ね、甦れ!』 過去の自分と旅をする

ずっと知り合いから勧められていたロシア映画『動くな、死ね、甦れ

『チェンソーマン レゼ編』 いつしかマトモに惹かされて

〈本ブログはネタバレを含みます〉 アニメ版の『チ

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』 普通に生きるという特殊能力

リチャード・カーティス監督の『アバウト・タイム』は、ときどき話

→もっと見る

PAGE TOP ↑