『FOOL COOL ROCK!』サムライ魂なんて吹っ飛ばせ!!
『FOOL COOL ROCK! ONE OK ROCK DOCUMENTARY FILM』は、今若い子を中心に人気のONE OK ROCKのワールドツワーを追いかけたドキュメント。日本のアーティストが海外で活躍している臨場感が伝わってくる。
この映画を監督・撮影・編集しているのは中野裕之監督。中野裕之監督といえば映画『SF サムライフィクション』を始めとする、90年代から2000年代のPVなどオシャレな映像感覚で有名だった人。映画作品でゲーム感覚の時代劇とかも多いのだが、自分とはなんとなく感性が合わないのか、よくわからない作風だった。環境もののような映画というのが当時の流行だったのだろう。でも映像と音楽の融合された作品が多い中野監督なので、こういった音楽ドキュメントと相性がいいみたい。
映画の中のONE OKE ROCK(ワンオク)のメンバー達は、楽屋ではいつもふざけていて、仲良し悪ガキが集まって夢を実現しているのが感じられる。欧州のライブハウスの前でファンが並んでいるのをみて「まさか俺たちを待ってるの?」なんて疑心暗鬼にツアーバスを降りると、待っていた現地のファン達から歓声があがる。ワンオクのメンバーも驚くのだが、ニヤッと手応えを感じる表情もみせる。
ワンオクはそもそも国内完結型のビジネスを狙っておらず、海外で通用するバンドになりたいと目標を持っている。国内完結だとどうしても閉じた作風になるし、狭いマーケットで規制やしがらみでがんじがらめになる。それを嫌って世界を目標とする。本来エンターテイメントは世界を視野にするべきものだ。彼らは世界に向かうのにいちばん不必要なのは『サムライ魂』だという。日本だからとか日本人だからとい観点で動いていては世界では通用しない。いま世界で活躍している人の殆どが日本人だから必要とされているのではなく、その人自身が必要とされている。渡辺謙さんだってオファーが来る役は日本人でなくてもいい役柄が多い。世界で通用する人はハナっから日の丸掲げて活動なんかしない。それはあとから政治家やマスコミが「日本が世界に誇る」と便乗しているだけ。
ワンオクは米ワーナー社と契約を正式にして、海外版のアルバムも発表しようとしている。彼らが所属している事務所『アミューズ』はアメリカに進出して、他に『Perfume』や『BABYMETAL』などもどんどん世界に売り込んでいる。もうどんな産業も日本国内だけを視野にしていてはやっていけない時代がきた。日本の狭い視野をぶちこわして、ワールドワイドに自己錬磨していかなければ廃れていくだけだ。表現者も観客も世界で通用するものを理解できなければ、どんどん世界から取り残されていくだろう。
関連記事
-
-
『ボーダーライン』善と悪の境界線? 意図的な地味さの凄み
映画『ボーダーライン』の原題は『Sicario』。スペイン語で暗殺者の意味らしい
-
-
『ソウルフル・ワールド』 今そこにある幸福
ディズニープラスを利用し始めた。小学生の息子は、毎日のように自分で作品を選んで楽しんでいる。
-
-
『アバター』観客に甘い作品は、のびしろをくれない
ジェイムズ・キャメロン監督の世界的大ヒット作『アバター』。あんなにヒットしたのに、もう誰もそのタイト
-
-
『槇原敬之』自分ではダメだと思っていても……。
今年は槇原敬之さんのデビュー25周年ということ。自分が槇原敬之さんの存在を知った
-
-
『今日から俺は‼︎』子どもっぽい正統派
テレビドラマ『今日から俺は‼︎』が面白かった。 最近自分はすっかり日本のエンターテイメ
-
-
『グレイテスト・ショーマン』 奴らは獣と共に迫り来る!
映画『グレイテスト・ショーマン』の予告編を初めて観たとき、自分は真っ先に「ケッ!」となった。
-
-
『ファインディング・ドリー』マイノリティへの応援歌
映画はひととき、現実から逃避させてくれる夢みたいなもの。いつからか映画というエン
-
-
『君たちはどう生きるか』 狂気のエンディングノート
※このブログはネタバレを含みます。 ジャン=リュック・ゴダール、大林宣彦、松本零士、大
-
-
『きみの色』 それぞれの神さま
山田尚子監督の新作アニメ映画『きみの色』。自分は山田尚子監督の前作にあたるアニメシリーズ『平
-
-
『ヒトラー 〜最期の12日間〜』 負け戦には精神論
「欲しがりません勝つまでは」 戦後70年たった今となっては、こんな我慢ばかりを要求する言葉
