*

美しい地獄『リリイ・シュシュのすべて』

公開日: : 最終更新日:2015/11/08 メディア, 映画:ラ行, 音楽

t02200316_0600086113237577637

川崎の中学生殺害事件で、
真っ先に連想したのがこの映画、
岩井俊二監督の2001年作品
『リリイ・シュシュのすべて』。

万引き、恐喝、窃盗、援助交際、
いじめ、レイプ、殺人……そして自殺。
少年犯罪の思い当たるところ
すべて詰め込まれてる。

青春映画というよりは戦争映画。

観たくない世界がどんどん展開していく。
気分が悪くなっていくのだが、
映像はこれでもかと美しく、
ドビュッシーのピアノ曲と、
小林武史氏プロディースで
Salyさん演じる『リリイシュシュ』の音楽。
センスよくまとめられているので、
なんとなく魅入ってしまう。

でもこの映画ではとくに
社会に対する問題提起は無く、
ただただ陰惨な子ども達の犯罪が
描かれていくだけ。
高尚な語り口の一種のポルノ。

つまるところ、本質は不快なだけで、
なにも考察されていない。
まあこれはこれでいいのだけど。

当時まだめずらしかった
デジタルカメラでの撮影。
編集はあえて民生機でする。
原作もネット上で視聴者参加型の
インタラクティブな方法で、
観るものはこれがフィクションなのか
現実なのかわからなくなる錯覚に陥る。
蒼井優さんや市原隼人さんが
この作品でデビューしている。

いろいろな意味で岩井監督の先見性を感じる。

劇中、現実にはいじめをしている子達が
ネット上では優しい言葉を交わし合う。

どうしてこんなに現実と理想が乖離しているのか。
どうしてそんなにペルソナのマスクを必要とするのか?

この映画の少年少女は14歳。
まさに中学二年生。中二病。
そしてこの映画公開から14年が過ぎた。
子ども達の迷いは、
あの頃も今もなんら変わらない。
問題はなにひとつ解決していない。

自分を嫌いなままの人では
ドラマは展開して行かない。
だから見栄えの美しさだけで
ごまかされてしまう。
でもそのほころびはいつか突然、
眼前に現れる。

ああ不愉快。

関連記事

『アントマン』ちっちゃくなってどう闘うの?

http://marvel.disney.co.jp/movie/antman.html[/cap

記事を読む

『百日紅』天才にしかみえぬもの

この映画は日本国内よりも海外で評価されそうだ。映画の舞台は江戸時代。葛飾北斎の娘のお栄(葛飾

記事を読む

『東京ディズニーランド』お客様第一主義の行方

自分はディズニーランドは大好きです。 子どもたちも喜ぶし、 自分も子どもみたいに楽しんで

記事を読む

『エクス・マキナ』萌えの行方

http://exmachina-movie.jp/[/caption] イギリスの独立系S

記事を読む

『ラストエンペラー』で近代史に興味がわいた

ca. 1940 --- Emperor Pu Yi (known as Henry Puyi i

記事を読む

坂本龍一の即興演奏が光る『トニー滝谷』

先日、自身のがんを公表し、 演奏活動はしばらく休止すると 発表した坂本龍一氏。 反

記事を読む

『エレファント・マン』と感動ポルノ、そして体調悪化

Paramount Pictures / Photofest / Zeta Image[/capt

記事を読む

アニメ『機動戦士ガンダムUC』が遂に完結!!

2010年スタートで完結まで4年かかった。 福井晴敏氏の原作小説は、遡る事2007年から。

記事を読む

『マトリックス』って続編はつまらないよね

映画『マトリックス』はSFアクション映画の転機になるような作品だった。もうカッコいいという言

記事を読む

愛すべき頑固ジジイ『ロボジー』

2015年のゴールデンウィーク映画で『龍三と7人の子分たち』という映画があって、ジジイ達のコ

記事を読む

『Ryuichi Sakamoto : CODA』やるべきことは冷静さの向こう側にある

http://ryuichisakamoto-coda.com/[/

『マイティ・ソー バトルロイヤル』儲け主義時代を楽しむには?

http://marvel.disney.co.jp/movie/t

『わたしを離さないで』自分だけ良ければいいの犠牲

今年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ原作の映画『わたしを

『ブレードランナー2049』映画への接し方の分岐点

http://www.bladerunner2049.jp/[/ca

『トロールズ』これって文化的鎖国の始まり?

配信チャンネルの目玉コーナーから、うちの子どもたちが『トロール

→もっと見る

PAGE TOP ↑