*

美しい地獄『リリイ・シュシュのすべて』

公開日: : 最終更新日:2019/06/14 映画:ラ行, 音楽

 

川崎の中学生殺害事件で、
真っ先に連想したのがこの映画、
岩井俊二監督の2001年作品
『リリイ・シュシュのすべて』。

万引き、恐喝、窃盗、援助交際、
いじめ、レイプ、殺人……そして自殺。
少年犯罪の思い当たるところ
すべて詰め込まれてる。

青春映画というよりは戦争映画。

観たくない世界がどんどん展開していく。
気分が悪くなっていくのだが、
映像はこれでもかと美しく、
ドビュッシーのピアノ曲と、
小林武史氏プロディースで
Salyさん演じる『リリイシュシュ』の音楽。
センスよくまとめられているので、
なんとなく魅入ってしまう。

でもこの映画ではとくに
社会に対する問題提起は無く、
ただただ陰惨な子ども達の犯罪が
描かれていくだけ。
高尚な語り口の一種のポルノ。

つまるところ、本質は不快なだけで、
なにも考察されていない。
まあこれはこれでいいのだけど。

当時まだめずらしかった
デジタルカメラでの撮影。
編集はあえて民生機でする。
原作もネット上で視聴者参加型の
インタラクティブな方法で、
観るものはこれがフィクションなのか
現実なのかわからなくなる錯覚に陥る。
蒼井優さんや市原隼人さんが
この作品でデビューしている。

いろいろな意味で岩井監督の先見性を感じる。

劇中、現実にはいじめをしている子達が
ネット上では優しい言葉を交わし合う。

どうしてこんなに現実と理想が乖離しているのか。
どうしてそんなにペルソナのマスクを必要とするのか?

この映画の少年少女は14歳。
まさに中学二年生。中二病。
そしてこの映画公開から14年が過ぎた。
子ども達の迷いは、
あの頃も今もなんら変わらない。
問題はなにひとつ解決していない。

自分を嫌いなままの人では
ドラマは展開して行かない。
だから見栄えの美しさだけで
ごまかされてしまう。
でもそのほころびはいつか突然、
眼前に現れる。

ああ不愉快。

関連記事

no image

『怪盗グルーのミニオン大脱走』あれ、毒気が薄まった?

昨年の夏休み期間に公開された『怪盗グルー』シリーズの最新作『怪盗グルーのミニオン大脱走』。ずっとウチ

記事を読む

no image

『ラストエンペラー』で近代史に興味がわいた

イタリアのベルナルド・ベルトルッチ監督の『ラストエンペラー』。西洋人が描く東洋の歴史。この映画を観た

記事を読む

no image

『ロッキー』ここぞという瞬間はそう度々訪れない

『ロッキー』のジョン・G・アヴィルドセン監督が亡くなった。人生長く生きていると、かつて自分が影響を受

記事を読む

no image

『マイティ・ソー バトルロイヤル』儲け主義時代を楽しむには?

ポップコーン・ムービーの王道、今ノリにノってるディズニー・マーベルの人気キャラクター・ソーの最新作『

記事を読む

no image

『CASSHERN』本心はしくじってないっしょ

  先日、テレビ朝日の『しくじり先生』とい番組に紀里谷和明監督が出演していた。演題は

記事を読む

no image

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』顛落の悲劇。自業自得か殉教者か?

  問題作すぎて新作『ニンフォマニアック』の 日本公開も危ぶまれながらもうじき公開

記事を読む

no image

『グラディエーター』Are You Not Entertained?

当たり外れの激しいリドリー・スコット監督の作品。この『グラディエーター』はファーストショットを観た瞬

記事を読む

no image

『美女と野獣』古きオリジナルへのリスペクトと、新たなLGBT共生社会へのエール

ディズニーアニメ版『美女と野獣』が公開されたのは1991年。今や泣く子も黙る印象のディズニーなので信

記事を読む

no image

部外者が描いたからこそ作品になれた『リトル・ブッダ』

  4月8日は花祭りの日。 ブッダが生まれた日としてお祝いする日だそうで。

記事を読む

『スカーレット』慣例をくつがえす慣例

NHK朝の連続テレビ小説『スカーレット』がめちゃくちゃおもしろい! 我が家では、朝の支

記事を読む

『もののけ姫』女性が創る社会、マッドマックスとアシタカの選択

先日、『マッドマックス/怒りのデスロード』が、地上波テレビ放送

『ジョジョ・ラビット』長いものに巻かれてばかりいると…

「この映画好き!」と、開口一番発してしまう映画『ジョジョ・ラビ

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』これからのハリウッド映画は?

マーベル・ユニバース映画の現時点での最新作『スパイダーマン:フ

『ブラック・クランズマン』明るい政治発言

アメリカではBlack Lives Matter運動が盛んにな

『ハンナ・アーレント』考える人考えない人

ブラック企業という悪い言葉も、すっかり世の中に浸透してきた。致

→もっと見る

PAGE TOP ↑