*

発信者がウソをついてたら?『告白』

公開日: : 最終更新日:2019/06/13 映画:カ行,

 

中島哲也監督作品、湊かなえ著原作『告白』。この映画の演出のセンスの良さにシビレました。音楽の使い方、渇いた映像、役者の演技。日本映画では最高水準ではないか? あまりに夢中になって映画を観たので、鑑賞後、足がふらついたのを憶えています。そういえばハリウッドからリメイクのオファーがきたと公開当時言っていたけど、あれからどうなったのだろう? 作品はほとんど一人称で描かれている。タイトル通りの『告白』によって物語は進んで行く。パート別に別れ、告白をする主人公は何度も入れ替わる。時系列通りではないので、同じ事件も視点がかわって登場する。レディオヘッドの曲がテーマ曲なのだが、日本作品で洋楽を使うととんでもないことになるのが常。エンドロールでこれでもかと作品とマッチしないままかけるのかと思いきや、予想外の使い方をしていてカッコ良かった。センス良い。

中島監督は生徒役の子どもたちに事前に原作本を読ませたらしい。そこで中島監督が、それぞれの登場人物が自分の都合のいいようにウソをついていたらどうする?と、生徒達に問いかけたところ、全員がギョッとなったそうです。犯罪の作品なので、登場人物は保身の為に平気でウソはつくだろう。中島監督曰く、こんなにみんな素直に情報を鵜呑みにしてしまう方が驚きだと。

日本人は世界でも珍しいくらい報道をそのまま信じてしまう傾向がある。欧米の人はマスコミの情報など、参考にするだけで、それほど信じていない。マスコミやネットの情報なんていい加減なもの。誰かがなにがしかの利益の為に、自分の都合のいいように発信されているものも多い。そんな危うい情報を信じて、騙されたと怒るのはお門違い。ニュースを見すぎるのもうつ病になりやすい原因と聞きます。

情報はあまり過度にインプットしすぎると自分自身の判断力が弱り、直感力のような感性が衰えてしまう。情報過多な現代社会。瞑想とまではいわずとも、じっくり自分の考えを咀嚼する時間は意図的に作っていかなければ、気付けば後戻りが出来ないところにいた、なんてことにもなりかねないです。

危うい危うい。

関連記事

『鎌倉殿の13人』 偉い人には近づくな!

NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が面白い。以前の三谷幸喜さん脚本の大河ドラマ『真田丸』は、

記事を読む

『ハンナ・アーレント』考える人考えない人

ブラック企業という悪い言葉も、すっかり世の中に浸透してきた。致死に至るような残業や休日出勤を

記事を読む

no image

『鉄コン筋クリート』ヤンキーマインド+バンドデシネ

アニメ映画『鉄コン筋クリート』が公開されて今年が10周年だそうです。いろいろ記念イベントやら関連書籍

記事を読む

『帝都物語』 混沌とした世にヤツは来る!!

9月1日といえば防災の日。1923年の同日に関東大震災で、東京でもたいへんな被害があったこと

記事を読む

『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』 ヒーローは妻子持ちNG?

今年は『機動戦士ガンダム』の35周年。 富野由悠季監督による新作 『ガンダム Gのレコン

記事を読む

『LAMB ラム』 愛情ってなんだ?

なんとも不穏な映画。アイスランドの映画の日本配給も珍しい。とにかくポスタービジュアルが奇妙。

記事を読む

『鑑定士と顔のない依頼人』 人生の忘れものは少ない方がいい

映画音楽家で有名なエンニオ・モリコーネが、先日引退表明した。御歳89歳。セルジオ・レオーネや

記事を読む

no image

映画づくりの新しいカタチ『この世界の片隅に』

  クラウドファンディング。最近多くのクリエーター達がこのシステムを活用している。ネ

記事を読む

『銀河鉄道の夜』デザインセンスは笑いのセンス

自分の子どもたちには、ある程度児童文学の常識的な知識は持っていて欲しい。マンガばかり読んでい

記事を読む

『銀河鉄道999』 永遠の命と拝金主義

『銀河鉄道999』は自分が小学生低学年の頃、 社会現象になるくらいの人気があった。

記事を読む

『枯れ葉』 無表情で生きていく

アキ・カウリスマキ監督の『枯れ葉』。この映画は日本公開されてだ

『エイリアン ロムルス』 続編というお祭り

自分はSFが大好き。『エイリアン』シリーズは、小学生のころから

『憐れみの3章』 考察しない勇気

お正月休みでまとまった時間ができたので、長尺の映画でも観てみよ

『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』 あらかじめ出会わない人たち

毎年年末になるとSNSでは、今年のマイ・ベスト10映画を多くの

『デッドプール&ウルヴァリン』 マルチバース、ずるい

ディズニープラスの年末年始の大目玉作品といえば、『インサイド・

→もっと見る

PAGE TOP ↑