*

マイケル・ジャクソン、ポップスターの孤独『スリラー』

公開日: : 最終更新日:2019/06/13 映画:サ行, 音楽

 

去る6月25日はキング・オブ・ポップことマイケル・ジャクソンの命日でした。早いことでもう6年も前のことだったんですね。自分がマイケル・ジャクソンの存在を知ったのは『スリラー』のミュージックビデオの大ヒットから。テレ朝の土曜の夜にやっていた『ベストヒットUSA』で13分あるドラマ仕立ての本作をノーカットで流したり、輸入版や遅れて発売の字幕付日本版両方とも観たりした。ホラー仕立ての内容がとにかく斬新で、小学生だった自分にも分かりやすく楽しい作品だった。普段映画や洋楽を聴かない親でさえマイケルは認めていたのは嬉しい限りだった。

当時は知る由もなかったジョン・ランディス監督作品。『狼男アメリカン』はもとより、あの『ブルースブラザーズ』の監督さん。ホラーも音楽ものもいける人なので起用されたのでしょう。特殊メイクは『スターウォーズ』のリック・ベイカーだ。

マイケル・ジャクソンというと、カッコいいダンスや創られたキャラクターの面白さが特徴。モノマネする人が世界中ごまんといる、完全に偶像化された存在。でも自分はマイケルのカリスマ性というよりも、彼からにじみでる哀しみに魅力を感じる。幼少の時から天才としてアメリカポップシーンの頂点にいたマイケル・ジャクソン。世界中どこへ行っても歓声を浴びる。ちょっとどこかへ行けば一瞬にして人だかり。一人で買い物や、どこかをぶらついたりすることもできない。巨万の富は得たかも知れない。豪邸を通り越して城に住んでいたかも知れない。それでも孤独。カネをもっているということは、それに群がる汚いヤツも多勢集まってくるということ。魅力あるアーティストというものは心が綺麗な人が多い。彼の歌には社会的メッセージ性が高い曲が多い。重いテーマもポップミュージックにのせている。生真面目さが伺える。そんな人が世間の好奇の目に晒されたら、壊れてしまうのは当然のこと。結局それがオーバードーズで亡くなってしまったのだからやるせない。

マイケルは亡くなって後にまた新たにファンも誕生したと思う。未完成のステージ『THIS IS IT』のメイキング映画が死後大ヒットしたが、正直自分はこれは面白くなかった。マイケルだってこんな未完成の状態のステージを、世の人の目には触れさせたくなかっただろう。この映画『THIS IS IT』の様子はあくまでリハーサル風景。マイケルが全力投球しているパフォーマンスではない。制作途中の作品を、いっぱしの作品として世に発表されてしまうほどアーティストにとってつらいものではない。完璧主義のマイケルにとっては無念の一言につきるだろう。映画『THIS IS IT』の公開は果たしてマイケルにとって良かったのかどうか?

心が美しいアーティストが、カネの亡者たちによって壊されていく様はとても不愉快。まったくこういった世の中、どうにかならんのかな。

関連記事

『恋する惑星』 キッチュでポップが現実を超えていく

ウォン・カーウァイ監督の『恋する惑星』を久しぶりに観た。1995年日本公開のこの映画。すでに

記事を読む

no image

『オネアミスの翼』くいっっっぱぐれない!!

  先日終了したドラマ『アオイホノオ』の登場人物で ムロツヨシさんが演じる山賀博之

記事を読む

『わたしを離さないで』 自分だけ良ければいい世界

今年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ原作の映画『わたしを離さないで』。ラブストーリ

記事を読む

no image

『スイス・アーミー・マン』笑うに笑えぬトンデモ・コメディ

インディペンデント作品は何が出てくるかわからないのが面白い。『スイス・アーミー・マン』は、無人島に一

記事を読む

『スター・ウォーズ・アイデンティティーズ』 パートナーがいることの失敗

寺田倉庫で開催されている『スターウォーズ・アイデンティティーズ・ザ・エキシビション』という催

記事を読む

no image

デート映画に自分の趣味だけではダメよ!!『サンダーバード』

  なんでも『サンダーバード』が50周年記念で、新テレビシリーズが始まったとか。日本

記事を読む

『ベイビー・ドライバー』 古さと新しさと遊び心

ミュージカル版アクション映画と言われた『ベイビー・ドライバー』。観た人誰もがべた褒めどころか

記事を読む

『男はつらいよ お帰り 寅さん』 渡世ばかりが悪いのか

パンデミック直前の2019年12月に、シリーズ50周年50作目にあたる『男はつらいよ』の新作

記事を読む

no image

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』ある意味これもゾンビ映画

『スターウォーズ』の実写初のスピンオフ作品『ローグ・ワン』。自分は『スターウォーズ』の大ファンだけど

記事を読む

『葬送のフリーレン』 もしも永遠に若かったら

子どもが通っている絵画教室で、『葬送のフリーレン』の模写をしている子がいた。子どもたちの間で

記事を読む

『アメリカン・フィクション』 高尚に生きたいだけなのに

日本では劇場公開されず、いきなりアマプラ配信となった『アメリカ

『不適切にもほどがある!』 断罪しちゃダメですか?

クドカンこと宮藤官九郎さん脚本によるドラマ『不適切にもほどがあ

『デューン 砂の惑星 PART2』 お山の大将になりたい!

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ティモシー・シャラメ主演の『デューン

『マーベルズ』 エンタメ映画のこれから

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の最新作『マーベ

『髪結いの亭主』 夢の時間、行間の現実

映画『髪結いの亭主』が日本で公開されたのは1991年。渋谷の道

→もっと見る

PAGE TOP ↑