*

招かざる未来に備えて『風立ちぬ』

公開日: : 最終更新日:2019/06/14 アニメ, 映画:カ行

 

なんとも不安な気分にさせる映画です。
悪夢から覚めて、夢の内容は忘れても、
ただただ不安な気分が残るような、そんな映画。

主人公は天才航空設計士。
天才は時にして空想と現実の境目がなくなる。
それを映画にするとこんな感じ。
どこが現実でどこが空想か分からなくなるのは
フェリーニの映画を観ているかのよう。

先日テレビ放送をあらためて観て、
やはりその観賞後の印象は変わらなかった。
これは御涙頂戴の映画ではないなと。

公開当時はまだ作品の意図など
理解も出来なかったけれど、
今の世の中の流れを肌で感じていると、
なんとなく以前より見えてくるものがある。

公開当時宮崎駿監督は、
「10年後20年後に
この作品の真価を問われるだろう」
のような意味深の言葉を放っていたと思う。

「地震のあとには戦争がやってくる」とは
忌野清志郎氏の言葉
この映画も関東大震災から始まり、
第二次世界大戦をむかえて終わります。

宮崎監督が関東大震災の場面の
絵コンテを描いているときに、
3.11震災が起こったと聞きます。
運命的です。

推測ですが、この映画は
依頼されて作ったのではないかと。

これから世の中が
戦争へむかっていきそうなので、
戦争にまつわる映画をつくってくれないかと。

宮崎監督としては、
戦争礼賛の映画はつくる訳にはいかないが、
設計士の話ならつくれるだろう。
そしてメロドラマも交えれば、
エンターテイメントとして成立し、
100%プロパガンダ映画にはならないと
工夫をされたのではないだろうか?

引退宣言には年齢的な問題も
当然あるでしょうが、
これからは自由な映画が作れない時代が来るなと
監督が感じていたのかも知れません。

映画に出てくる若者たちは
「戦争はイヤだ」とは絶対に口にしない。
当時の人間の潔さを感じる。

大きな時代のうねりの中では、
個人ではもうどうしようもない。

この映画の不安感は、
やがて近い未来にやってくるかもしれない、
暗闇に覆われた日本の姿。

映画はそんな時代がきたとしても、
「生きねばならぬ」と言っている。

{

関連記事

no image

『ゴジラ(1954年)』戦争の傷跡の貴重な記録

  今年はゴジラの60周年記念で、 ハリウッドリメイク版ももうすぐ日本公開。 な

記事を読む

no image

姫はセレブの国からやってきた『かぐや姫の物語』

  先日テレビで放送した『かぐや姫の物語』。 録画しておこうかと自分が提案した

記事を読む

no image

日本アニメを世界的評価に繋げた『AKIRA』

  日本のアニメが凄いと世界に知らしめた エポックメーキング的作品『AKIRA』。

記事を読む

no image

『トロールズ』これって文化的鎖国の始まり?

  配信チャンネルの目玉コーナーから、うちの子どもたちが『トロールズ』を選んできた。

記事を読む

no image

日本のアニメ、実は海外ではさほど売れてない

  今国策として『クールジャパン』の名のもと、 日本のカウンターカルチャーを 世

記事を読む

no image

原作への愛を感じる『ドラえもん のび太の恐竜2006』

  今年は『ドラえもん』映画化の 35周年だそうです。 3歳になる息子のお気

記事を読む

no image

『SING』万人に響く魂(ソウル)!

「あー楽しかった!」 イルミネーション・エンターテイメントの新作『SING』鑑賞後、ウチの子たちが

記事を読む

no image

『グーニーズ』ヤツは敵か味方か?

自分が子どもの頃に夢中になっていた映画を、大人になった今、我が子と一緒に観直すのは楽しい。 以

記事を読む

no image

『ローレライ』今なら右傾エンタメかな?

  今年の夏『進撃の巨人』の実写版のメガホンもとっている特撮畑出身の樋口真嗣監督の長

記事を読む

no image

『華氏911』アメリカは日本が進む反面教師?

  世界のパワーバランスが崩れ始めている。 平和ボケしている日本人にも とうとう

記事を読む

no image
『八甲田山』ブラック上司から逃げるには

今年になって日本映画『八甲田山』のリマスター・ブルーレイが発売されたら

no image
『さよなら、人類』ショボくれたオジサンの試される映画

友人から勧められたスウェーデン映画『さよなら、人類』。そういえば以前、

no image
『若草物語(1994年)』本や活字が伝える真理

読書は人生に大切なものだと思っている。だから自分の子どもたちには読書を

no image
『未来のミライ』真の主役は建物の不思議アニメ

日本のアニメは内省的で重い。「このアニメに人生を救われた」と語る若者が

no image
『映画から見える世界 上野千鶴子著』ジェンダーを意識した未来を

図書館の映画コーナーをフラついていたら、社会学者の上野千鶴子さんが書い

→もっと見る

PAGE TOP ↑