*

『風が吹くとき』こうして戦争が始まる

公開日: : 最終更新日:2015/11/08 アニメ, 映画:カ行,

風が吹くとき

レイモンド・ブリッグズの絵本が原作の映画『風が吹くとき』。レイモンド・ブリッグズといえば『さむがりやのサンタ』や『スノーマン』の作家さん。『さむがりやのサンタ』なんか、文句ばっかり言いながらプレゼントを運ぶサンタのおじさんの様子が楽しかった。『スノーマン』はキャラクター商品が先行してしまったけど、けっこう切ない内容。そんな可愛いタッチのブリッグズ作品。それだけで興味がわく。主題歌はデヴィッド・ボウイだし、日本語版の演出は大島渚監督。なんとなく『戦場のメリークリスマス』の続きのよう。当時アニメ作品にしては珍しく、単館ミニシアター系で公開されていた。自分は劇場で見逃してしまい、レンタルビデオで遅れて観た。

森繁久彌さんと加藤治子さんが吹き替えている老夫婦は、老後の生活を田舎でのんびり暮らしている。穏やかな映像が続く中、ラジオで戦争がっ始まったことが伝わる。それでもラジオの向こう側の情報なので、どこか他人ごと。そして核爆弾の投下。爆風の直接の被害は間逃れたけど……。

レイモンド・ブリッグズの可愛らしい絵の中に展開される恐ろしい世界。とくに恐ろしいのは、この老夫婦はラジオから流れてくる政府の情報に素直に従っているということ。もし自己判断で動いたらまた別の結果もあったのでは?と思ってしまう理不尽な話。ファンタジーとしてはとてもリアルなシミュレーション。戦争なんて他人事と思ってピンときていなかったら、すでに目の前に地獄が広がっていて逃げられなくなっている。戦争が始まるとはこういうことなのだろう。壊れるのは一瞬。

80年代、多くのアーティストたちが核の恐怖をテーマに作品を発表している。日本は唯一核攻撃を受けた国。そしてこの映画の公開と同じ頃、チェルノブイリの原発事故を迎えている。感覚の鋭いアーティストたちはずっと以前から核の脅威を訴えている。原爆が2発も落ちて、原発事故まで起こしている日本。果たして日本の現状を海外の人はどう感じているのだろうか? それでも核にすがろうとする姿は、さぞ愚かしくみえるだろう。

今の日本では、原発やら戦争やら究極の不幸へ向かう話ばかりなのがとても残念。もっと足元の日々の生活を豊かにしていく話ができていないものかと思ってしまう。

関連記事

ブライト・ノアにみる大人のあり方『機動戦士ガンダム』

『機動戦士ガンダム』は派生作品があまりに多過ぎて、 TSUTAYAでは1コーナー出来てしま

記事を読む

日本のアニメ、実は海外ではさほど売れてない

今国策として『クールジャパン』の名のもと、 日本のカウンターカルチャーを 世界的産業にし

記事を読む

『レクイエム・フォー・ドリーム』めくるめく幻覚の世界

「シェシェシェのシェー」と叫びながら隣人女性に危害を加えて捕まった男がいましたね。危険ドラッ

記事を読む

『ローガン』どーんと落ち込むスーパーヒーロー映画

http://www.foxmovies-jp.com/logan-movie/[/caption

記事を読む

『GODZILLA』破壊神というより守護神だったハリウッドリブート版

早くも2018年にパート2をやると 発表されたハリウッド版『ゴジラ』。 近年、アメリ

記事を読む

『猿の惑星:聖戦記』SF映画というより戦争映画のパッチワーク

http://www.foxmovies.jp/saruwaku-g/[/caption]

記事を読む

『王と鳥』パクリじゃなくてインスパイア

先日テレビで放送された 『ルパン三世・カリオストロの城』(以下『カリ城』)、 いまだに人

記事を読む

『ゲット・アウト』社会派ホラーの意図は、観客に届くか⁉︎

自分はホラー映画が苦手。単純に脅かされるのが嫌い。あんまり驚かされてばかりいると血液が固まる

記事を読む

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』映画監督がアイドルになるとき

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズの監督ジェームズ・ガンが、内定していたシリーズ次回

記事を読む

ヒーローは妻子持ちはNGなの?『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』

今年は『機動戦士ガンダム』の35周年。 富野由悠季監督による新作 『ガンダム Gのレコン

記事を読む

『ペンタゴン・ペーパーズ』ガス抜きと発達障害

スティーヴン・スピルバーグ監督の『ペンタゴン・ペーパーズ』。ベトナ

『デザイナー渋井直人の休日』カワイイおじさんという生き方

https://www.tv-tokyo.co.jp/shibuin

『ピーターラビット』男の野心とその罠

http://www.peterrabbit-movie.jp/[/

『めぐり逢えたら』男脳女脳ってホント?

1993年のアメリカ映画『めぐり逢えたら』。実は自分は今まで観

『タクシー運転手』深刻なテーマを軽く触れること

http://klockworx-asia.com/taxi-dri

→もっと見る

PAGE TOP ↑