*

実は主人公があまり活躍してない『あまちゃん』

公開日: : 最終更新日:2019/06/14 ドラマ

 

NHKの視聴率稼ぎの看板番組といえば
『大河ドラマ』と『朝の連続テレビ小説』。

『大河ドラマ』は相変わらず低迷気味だけれど、
『朝ドラ』はこの『あまちゃん』から
ずっと高視聴率を稼ぎ、人気返り咲きしてる。

『あまちゃん』の作者は宮藤官九郎さん。
サブカルの代表と言った感じの彼の作風が
果たして『朝ドラ』でどう開花するのか、
期待と不安の中、すっかり国民的な番組となった。

震災の後から日本はずっと自粛ブームで、
笑いが足りなさ過ぎた。
そんな日本人の欲求を満たしてくれる、
良質なコメディ作品となった。

『朝ドラ』は女一代記の物語で、
女性の一生を描く作品が多いのだけれど、
この『あまちゃん』は3年くらいの出来事を綴ってる。

よくみると、主人公の少女・アキちゃん、
海女さんからアイドルになったりと
職業こそは変化しているのだけれど、
実は彼女自身はなにもしてないのね。

本当に物語を動かしているのは、
主人公の少女の周りにいるオジサン、オバサンたち。

アイドルが題材になって、
可愛い女の子が出ているから、
普段『朝ドラ』を観ない層も引き込んだのだけれど、
いちばん活躍してるのはジジババ。

クドカンも若い女の子には
あんまり興味がなかったんでしょうね。
それが普段『朝ドラ』を観てる
おじいちゃん、おばあちゃんたちにも
認められた理由でしょう。

前半は岩手での海女さん編、
後半は東京でアイドル編。
そして最終章は震災編。

ずっとほのぼのとしたコメディだったのが、
日本人の多くが経験した「あの日」を
クライマックスに向かえます。

明るいコメディで、視聴者みんなが
登場人物達を好きになっていたころ、
このたいへんな災害をどう描いていくのか?

クドカンのセンスが活きました。
見事な演出でした。
「あの日」の映像を一切使わずに
「あの日」の記憶を追体験させました。

クドカンの作風を
マネしようとする人は大勢います。
でもみんなマネできないんですね。

実は彼の作品は、ふざけているようでいて、
とっても真面目なのです。

真面目で覚悟があった上でのコメディなので、
悲惨な事件が起こっても、作風がブレたりしない。

いやむしろたいへんな事態の時こそ
笑いをみつけるユーモアが必要なのです。
これは豊かな人生を送るための
重要な秘訣だったりもします。

覚悟を決めて生きていれば
多少の悲惨な事象が起こったとしても
ちょっとやそっとじゃブレないものです。

関連記事

『鎌倉殿の13人』 偉い人には近づくな!

NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が面白い。以前の三谷幸喜さん脚本の大河ドラマ『真田丸』は、

記事を読む

『Love Letter』 ヨーロッパ映画風日本映画

岩井俊二監督の『Love Letter』。 この映画をリアルタイムで観たときに 「やられ

記事を読む

no image

『まれ』劇伴作曲家の新しい才能・澤野弘之氏

  NHK朝の連続テレビ小説の 春の新番組『まれ』。 はやくも好評ですね。

記事を読む

『TOMORROW 明日』 忘れがちな長崎のこと

本日8月9日は長崎の原爆の日。 とかく原爆といえば広島ばかりが とりざたされますが、

記事を読む

『ゲゲゲの女房』本当に怖いマンガとは?

水木しげるさんの奥さんである武良布枝さんの自伝エッセイ『ゲゲゲの女房』。NHKの朝ドラでも有

記事を読む

『グッド・ドクター』明るい未来は、多様性を受け入れること

コロナ禍において、あらゆる産業がストップした。エンターテイメント業界はいちばん最初に被害を受

記事を読む

『ロード・オブ・ザ・リング』 ファンタージーがファンタジーのままならば

Amazonのオリジナル・ドラマシリーズ『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』が配信開始にな

記事を読む

no image

日本映画の時代を先行し、追い抜かれた『踊る大走査線』

  『踊る大走査線』はとても流行ったドラマ。 ドラマが映画化されて、国民的作品とな

記事を読む

no image

『ごめんね青春!』クドカンもああみえて天才なのよね

  話題の新ドラマ『ごめんね青春!』。 脚本はクドカンこと宮藤官九郎さん。

記事を読む

no image

王道、いや黄金の道『荒木飛呂彦の漫画術』

  荒木飛呂彦さんと言えば『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズの漫画家さん。自分は少年ジ

記事を読む

『夜明けのすべて』 嫌な奴の理由

三宅唱監督の『夜明けのすべて』が、自分のSNSのTLでよく話題

『きみの色』 それぞれの神さま

山田尚子監督の新作アニメ映画『きみの色』。自分は山田尚子監督の

『ベルサイユのばら(1979年)』 歴史はくり返す?

『ベルサイユのばら』のアニメ版がリブートされるとのこと。どうし

『窓ぎわのトットちゃん』 他を思うとき自由になれる

黒柳徹子さんの自伝小説『窓ぎわのトットちゃん』がアニメ化される

『チャレンジャーズ』 重要なのは結果よりプロセス!

ゼンデイヤ主演のテニス映画『チャレンジャーズ』が面白いとネット

→もっと見る

PAGE TOP ↑