『がんばっていきまっしょい』青春映画は半ドキュメンタリーがいい
今年はウチの子どもたちが相次いで進学した。
新学年の入学式というのは
期待と不安が入り交じっている。
これからこの場所でどんなことが
起こるんだろう?
子どもを通してあの頃の記憶を追体験する。
映画というのは、
見た事のない世界を知る機会でもあるが、
かつて経験した事のある感情を
追体験する力も持っている。
とかく青春映画というのは、
若い子が同年代の時代の最先端を知る
ファッション的要素ばかりが先行してしまうが、
この映画『がんばっていきまっしょい』は
大人になってしまったからこそ、
懐かしく切ない気分にさせてくれる。
映画は入学式の場面から始まる。
この学校では生徒会長の
「がんばっていきま~しょい」の合い言葉に
全校生徒が「しょい!」とついてくるかけ声が好例。
主人公を演じるこの作品でデビューした
田中麗奈さんのリアクションがとてもいい。
全校生徒の「しょい!」のかけ声が響く。
この臨場感は映像芸術ならでは。
この映画ではボート部の活動が描かれる。
湖畔の空気や、潮のにおい。
経験が多い大人ほど、
この映画を通して既視感を呼ぶ。
もうすっかり忘れてしまった
10代の頃の気持ちも、思い出してしまう。
この映画も原作にはなかった
ボート部の部室を老朽化で壊すという
エピソードから始まって行く。
映画自体も過去を語っているのだ。
この映画にでてくるボート部の子達は
このあとどんな人生を送ったのだろうか?
いろいろ想像すると、ますます切なくなる。
本作は磯村一路監督作品であるが、
このあと同じプロデュース陣で
矢口史靖監督で『ウォターボーイズ』や
『スイングガールズ』に展開していく。
その後の作品はコメディ要素が多くなっていく。
この『がんばっていきまっしょい』で、
すっかりしょぼくれた中年も
輝かしい青春時代を思い出す
カンフル剤にはなるであろう作品です。
でも10代まっただ中の時って、
なにもかもうまくいかなくて
ツラいばかりの時期だったようなきがするのに、
映画によって記憶が美化されてしまった訳です。
関連記事
-
-
『薔薇の名前』難解な語り口の理由
あまりテレビを観ない自分でも、Eテレの『100分de名著』は面白くて、毎回録画してチェックし
-
-
『君の名は。』株式会社個人作家
日本映画の興行収入の記録を塗り替えた大ヒット作『君の名は。』をやっと観た。実は自
-
-
『愛がなんだ』 さらば自己肯定感
2019年の日本映画『愛がなんだ』が、若い女性を中心にヒットしていたという噂は、よく耳にして
-
-
『WOOD JOB!』そして人生は続いていく
矢口史靖監督といえば、『ウォーターボーイズ』のような部活ものの作品や、『ハッピー
-
-
『一九八四年』大事なことはおばちゃんに聞け!
『一九八四年』はジョージ・オーウェルの1949年に発表された、近未来の完全管理社会を描いたディストピ
-
-
『すーちゃん』女性の社会進出、それは良かったのだけれど……。
益田ミリさん作の4コママンガ 『すーちゃん』シリーズ。 益田ミリさんとも
-
-
宇多田ヒカル Meets 三島由紀夫『春の雪』
昨日は4月になったにもかかわらず、 東京でも雪が降りました。 ということで『春の雪』。
-
-
『かがみの孤城』 自分の世界から離れたら見えるもの
自分は原恵一監督の『河童のクゥと夏休み』が好きだ。児童文学を原作に待つこのアニメ映画は、子ど
-
-
『ローガン』どーんと落ち込むスーパーヒーロー映画
映画製作時、どんな方向性でその作品を作るのか、事前に綿密に打ち合わせがされる。制作費が高けれ
-
-
『ゴジラ(1954年)』戦争の傷跡の貴重な記録
今年はゴジラの60周年記念で、 ハリウッドリメイク版ももうすぐ日本公開。 な