*

『がんばっていきまっしょい』青春映画は半ドキュメンタリーがいい

公開日: : 最終更新日:2019/06/14 映画:カ行,

 

今年はウチの子どもたちが相次いで進学した。
新学年の入学式というのは
期待と不安が入り交じっている。

これからこの場所でどんなことが
起こるんだろう?
子どもを通してあの頃の記憶を追体験する。

映画というのは、
見た事のない世界を知る機会でもあるが、
かつて経験した事のある感情を
追体験する力も持っている。

とかく青春映画というのは、
若い子が同年代の時代の最先端を知る
ファッション的要素ばかりが先行してしまうが、
この映画『がんばっていきまっしょい』は
大人になってしまったからこそ、
懐かしく切ない気分にさせてくれる。

映画は入学式の場面から始まる。
この学校では生徒会長の
「がんばっていきま~しょい」の合い言葉に
全校生徒が「しょい!」とついてくるかけ声が好例。

主人公を演じるこの作品でデビューした
田中麗奈さんのリアクションがとてもいい。
全校生徒の「しょい!」のかけ声が響く。
この臨場感は映像芸術ならでは。

この映画ではボート部の活動が描かれる。
湖畔の空気や、潮のにおい。
経験が多い大人ほど、
この映画を通して既視感を呼ぶ。
もうすっかり忘れてしまった
10代の頃の気持ちも、思い出してしまう。

この映画も原作にはなかった
ボート部の部室を老朽化で壊すという
エピソードから始まって行く。
映画自体も過去を語っているのだ。

この映画にでてくるボート部の子達は
このあとどんな人生を送ったのだろうか?
いろいろ想像すると、ますます切なくなる。

本作は磯村一路監督作品であるが、
このあと同じプロデュース陣で
矢口史靖監督で『ウォターボーイズ』や
『スイングガールズ』に展開していく。
その後の作品はコメディ要素が多くなっていく。

この『がんばっていきまっしょい』で、
すっかりしょぼくれた中年も
輝かしい青春時代を思い出す
カンフル剤にはなるであろう作品です。

でも10代まっただ中の時って、
なにもかもうまくいかなくて
ツラいばかりの時期だったようなきがするのに、
映画によって記憶が美化されてしまった訳です。

 

関連記事

no image

日本企業がハリウッドに参入!?『怪盗グルーのミニオン危機一発』

  『怪盗グルー』シリーズは子ども向けでありながら大人も充分に楽しめるアニメ映画。ア

記事を読む

『リアリティのダンス』ホドロフスキーとトラウマ

アレハンドロ・ホドロフスキーの23年ぶりの新作『リアリティのダンス』。ホドロフスキーと言えば

記事を読む

『夜明けのすべて』 嫌な奴の理由

三宅唱監督の『夜明けのすべて』が、自分のSNSのTLでよく話題に上がる。公開時はもちろんだが

記事を読む

no image

『スノーデン』オタクが偉人になるまで

スノーデン事件のずっと前、当時勤めていた会社の上司やら同僚がみな、パソコンに付属されているカメラを付

記事を読む

no image

太宰治が放つ、なりすましブログのさきがけ『女生徒』

  第二次大戦前に書かれたこの小説。 太宰治が、女の子が好きで好きで、 もう

記事を読む

no image

『境界のRINNE』やっぱり昔の漫画家はていねい

  ウチでは小さな子がいるので Eテレがかかっていることが多い。 でも土日の夕方

記事を読む

『枯れ葉』 無表情で生きていく

アキ・カウリスマキ監督の『枯れ葉』。この映画は日本公開されてだいぶ経つが、SNS上でもいまだ

記事を読む

『ハイキュー‼︎』 勝ち負けよりも大事なこと

アニメ『ハイキュー‼︎』の存在を初めて意識したのは、くら寿司で食事していたとき。くら寿司と『

記事を読む

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』映画監督がアイドルになるとき

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズの監督ジェームズ・ガンが、内定していたシリーズ

記事を読む

no image

『間宮兄弟』とインテリア

  江國香織さん原作の小説を、故・森田芳光監督で映画化された『間宮兄弟』。オタクの中

記事を読む

『侍タイムスリッパー』 日本映画の未来はいずこへ

昨年2024年の夏、自分のSNSは映画『侍タイムスリッパー』の

『ホットスポット』 特殊能力、だから何?

2025年1月、自分のSNSがテレビドラマ『ホットスポット』で

『チ。 ー地球の運動についてー』 夢に殉ずる夢をみる

マンガの『チ。』の存在を知ったのは、電車の吊り広告だった。『チ

『ブータン 山の教室』 世界一幸せな国から、ここではないどこかへ

世の中が殺伐としている。映画やアニメなどの創作作品も、エキセン

『関心領域』 怪物たちの宴、見ない聞かない絶対言わない

昨年のアカデミー賞の外国語映画部門で、国際長編映画優秀賞を獲っ

→もっと見る

PAGE TOP ↑