*

『リング』呪いのフォーマットは変われども

公開日: : 最終更新日:2019/06/13 映画:ラ行,

『リング』や『呪怨』を作った映画制作会社オズが破産したそうです。

そういえば幼稚園頃の娘が「さだこ〜」と言って、前髪を全部たらして遊んでいたので、今の子も『リング』を知ってるんだ〜と思っていたら、地味にいまだにシリーズが続いていたのね。最新作のタイトルが『貞子3D2 2Dバージョン』ときたから、もう怪文書のようでさっぱりわからないヤケクソぶり。

『リング』といえばVHSビデオテープに呪いが籠って、そのビデオを見た人が死ぬという話。時はすぎ、VHSもなくなり、DVD、Blu-rayとフォーマットは変遷し、録画方法もHDDデータ化が進んで外部に持ち運ぶことも少なくなった。それこそレーザーディスクは何者だ? 今の『貞子3D』シリーズの呪いのフォーマットはネット動画らしい。そんな時代の変遷をよそ目に、いまだに20年前のヒット作にすがらずにはいられないほど、新しいネタが生まれなかったのだろうか。それなら会社が潰れてしまっても仕方がない。

『リング』といえばジャパニーズホラーの先駆けの作品。ハリウッドでリメイクもされたくらいの一大ブームまでのし上がった。日本版の中田秀夫監督や『呪怨』の清水崇監督も海外進出に成功はしたものの、そのあとはそれっきりになってしまった。

『リング』ブームが起こる前、日本に来ているオーストラリア人に、「オレ、ホラー映画大好きだから、日本のコワい映画教えてくれ」と言われたので、真っ先に『リング』を勧めたことがあったっけ。「どんな映画なの?」と聞く彼に、井戸から女が出てくる旨を伝えたら、「血はでないの? 血が出ないならこわくないよ」と一蹴されてしまった。どうも言葉では伝えられないコワさらしい。というか英語圏にはない恐怖表現だったのかもしれない。だからこそ世界では新鮮な感覚で、リメイクまでされたのかも。彼はその後『リング』観たのかしら?

そういえば映画『リング』では、事件の真相を探る主人公二人は、元夫婦の設定。原作ではおっさん二人だったのを変更している。これにより二人の主人公の関係がもっと複雑になったのと、男二人がずっと画面に出続けるのよりも、むさ苦しさがなくなって良い効果があった。これ以降、むやみやたらに原作の男ばかりの設定を、無理矢理女に変更するのがブームになった。女性タレントや女優が出てくることで、画面に華がでてくるし、集客しやすくなるからだろうが、やっぱり作品の効果を大前提に設定は変えて欲しいものだ。

そういえば原作者の鈴木光司氏は、自分も通ったことのあるシナリオ養成学校の先輩らしい。なんでも学校で披露する秀作に『リング』の草稿を持っていき、連作で生徒達に読ませたらしい。そこでどれだけみんなが怖がるかリサーチしていたらしい。これはとても効率のいい授業料の使い方。やっぱり学校へ通っても、自分で利用方法を駆使しなければ、ただ通っただけで終わってしまうのだなあ……。

関連記事

『アン・シャーリー』 相手の話を聴けるようになると

『赤毛のアン』がアニメ化リブートが始まった。今度は『アン・シャーリー』というタイトルになって

記事を読む

『コクリコ坂から』 横浜はファンタジーの入口

横浜、とても魅力的な場所。都心からも交通が便利で、横浜駅はともかく桜木町へでてしまえば、開放

記事を読む

『帝都物語』 混沌とした世にヤツは来る!!

9月1日といえば防災の日。1923年の同日に関東大震災で、東京でもたいへんな被害があったこと

記事を読む

『パフューム ある人殺しの物語』 狂人の言い訳

パトリック・ジュースキントの小説『香水 ある人殺しの物語』の文庫本が、本屋さんで平積みされて

記事を読む

『ハンナ・アーレント』考える人考えない人

ブラック企業という悪い言葉も、すっかり世の中に浸透してきた。致死に至るような残業や休日出勤を

記事を読む

『愛がなんだ』 さらば自己肯定感

2019年の日本映画『愛がなんだ』が、若い女性を中心にヒットしていたという噂は、よく耳にして

記事を読む

『ドグラ・マグラ』 あつまれ 支配欲者の森

夢野久作さんの小説『ドグラ・マグラ』の映画版を久しぶりに観た。松本俊夫監督による1988年の

記事を読む

no image

原作への愛を感じる『ドラえもん のび太の恐竜2006』

  今年は『ドラえもん』映画化の 35周年だそうです。 3歳になる息子のお気

記事を読む

no image

『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』虐待がつくりだす歪んだ社会

ウチの子どもたちも大好きな『ハリー・ポッター』シリーズ。こわいこわいと言いながらも、「エクスペクト・

記事を読む

no image

『WOOD JOB!』そして人生は続いていく

  矢口史靖監督といえば、『ウォーターボーイズ』のような部活ものの作品や、『ハッピー

記事を読む

『サタンタンゴ』 観客もそそのかす商業芸術の実験

今年2025年のノーベル文化賞をクラスナホルカイ・ラースローが

『教皇選挙』 わけがわからなくなってわかるもの

映画『教皇選挙』が日本でもヒットしていると、この映画が公開時に

『たかが世界の終わり』 さらに新しい恐るべき子ども

グザヴィエ・ドラン監督の名前は、よくクリエーターの中で名前が出

『動くな、死ね、甦れ!』 過去の自分と旅をする

ずっと知り合いから勧められていたロシア映画『動くな、死ね、甦れ

『チェンソーマン レゼ編』 いつしかマトモに惹かされて

〈本ブログはネタバレを含みます〉 アニメ版の『チ

→もっと見る

PAGE TOP ↑