『リング』呪いのフォーマットは変われども
『リング』や『呪怨』を作った映画制作会社オズが破産したそうです。
そういえば幼稚園頃の娘が「さだこ〜」と言って、前髪を全部たらして遊んでいたので、今の子も『リング』を知ってるんだ〜と思っていたら、地味にいまだにシリーズが続いていたのね。最新作のタイトルが『貞子3D2 2Dバージョン』ときたから、もう怪文書のようでさっぱりわからないヤケクソぶり。
『リング』といえばVHSビデオテープに呪いが籠って、そのビデオを見た人が死ぬという話。時はすぎ、VHSもなくなり、DVD、Blu-rayとフォーマットは変遷し、録画方法もHDDデータ化が進んで外部に持ち運ぶことも少なくなった。それこそレーザーディスクは何者だ? 今の『貞子3D』シリーズの呪いのフォーマットはネット動画らしい。そんな時代の変遷をよそ目に、いまだに20年前のヒット作にすがらずにはいられないほど、新しいネタが生まれなかったのだろうか。それなら会社が潰れてしまっても仕方がない。
『リング』といえばジャパニーズホラーの先駆けの作品。ハリウッドでリメイクもされたくらいの一大ブームまでのし上がった。日本版の中田秀夫監督や『呪怨』の清水崇監督も海外進出に成功はしたものの、そのあとはそれっきりになってしまった。
『リング』ブームが起こる前、日本に来ているオーストラリア人に、「オレ、ホラー映画大好きだから、日本のコワい映画教えてくれ」と言われたので、真っ先に『リング』を勧めたことがあったっけ。「どんな映画なの?」と聞く彼に、井戸から女が出てくる旨を伝えたら、「血はでないの? 血が出ないならこわくないよ」と一蹴されてしまった。どうも言葉では伝えられないコワさらしい。というか英語圏にはない恐怖表現だったのかもしれない。だからこそ世界では新鮮な感覚で、リメイクまでされたのかも。彼はその後『リング』観たのかしら?
そういえば映画『リング』では、事件の真相を探る主人公二人は、元夫婦の設定。原作ではおっさん二人だったのを変更している。これにより二人の主人公の関係がもっと複雑になったのと、男二人がずっと画面に出続けるのよりも、むさ苦しさがなくなって良い効果があった。これ以降、むやみやたらに原作の男ばかりの設定を、無理矢理女に変更するのがブームになった。女性タレントや女優が出てくることで、画面に華がでてくるし、集客しやすくなるからだろうが、やっぱり作品の効果を大前提に設定は変えて欲しいものだ。
そういえば原作者の鈴木光司氏は、自分も通ったことのあるシナリオ養成学校の先輩らしい。なんでも学校で披露する秀作に『リング』の草稿を持っていき、連作で生徒達に読ませたらしい。そこでどれだけみんなが怖がるかリサーチしていたらしい。これはとても効率のいい授業料の使い方。やっぱり学校へ通っても、自分で利用方法を駆使しなければ、ただ通っただけで終わってしまうのだなあ……。
関連記事
-
-
愛すべき頑固ジジイ『ロボジー』
2015年のゴールデンウィーク映画で『龍三と7人の子分たち』という映画があって、
-
-
『デザイナー渋井直人の休日』カワイイおじさんという生き方
テレビドラマ『デザイナー渋井直人の休日』が面白い。自分と同業のグラフィックデザイナーの50代
-
-
『ひとりでしにたい』 面倒なことに蓋をしない
カレー沢薫さん原作のマンガ『ひとりでしにたい』は、ネットでよく読んでいた。そもそもカレー沢薫
-
-
『猿の惑星:新世紀』破滅への未来予測とユーモア
2011年から始まった『猿の惑星』のリブートシリーズ第二弾にあたる『猿の惑星:新
-
-
『ハリー・ポッター』貧困と差別社会を生き抜いて
映画版『ハリー・ポッター』シリーズが日テレの金曜の夜の枠で連続放送されるのがすっかり恒例にな
-
-
『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』妄想を現実にする夢
映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』は、女性向け官能映画として話題になった
-
-
大人になれない中年男のメタファー『テッド』
大ヒットした喋るテディベアが主人公の映画『テッド』。 熊のぬいぐるみとマーク・
-
-
『ロスト・イン・トランスレーション』幸せなはずなのに……。
日本のアニメ作品『Ghost in the Shell』が スカーレット・ヨハ
-
-
『cocoon』 くだらなくてかわいくてきれいなもの
自分は電子音楽が好き。最近では牛尾憲輔さんの音楽をよく聴いている。牛尾憲輔さんは電気グルーヴ
-
-
『嫌われ松子の一生』 道から逸れると人生終わり?
中島哲也監督の名作である。映画公開当時、とかく中島監督と主演の中谷美紀さんとが喧嘩しながら作
- PREV
- 『台風クラブ』制服に封じ込まれたもの
- NEXT
- 『下妻物語』 若者向け日本映画の分岐点
