*

『超時空要塞マクロス』 百年の恋も冷めた?

公開日: : 最終更新日:2021/10/12 アニメ, 映画:タ行

1980年代、自分が10代はじめの頃流行った
『超時空要塞マクロス』が
ハリウッドで実写化されるらしい。
アメリカでは『マクロス』をはじめ
3作品をひとまとめとして
『ロボテック』というタイトルで放映していたので、
どの要素を使うかはわからないけど……。

このアニメ映画は、そのテレビシリーズの劇場版。
『超時空要塞マクロス 愛おぼえていますか』は
1984年公開だから、もう31年も経つ。
スタッフや出演者もだいぶ亡くなってる。
映画版は、テレビアニメ版を原作にした
オリジナルストーリーの一本完結だが、
いちげんさんではやはり説明不足の内容。

『マクロス』シリーズは、
80年代の『ガンダム』ブームを
引き継いで生まれたロボットアニメ。
このシリーズも息は長く、
最近まで冠作品は続いてる。

制作スタッフ陣も『ガンダム』ファンで
優秀な同人誌作品をつくっていた人たちが
スカウトされプロとして起用されている。

ちょうどこの映画版の頃、
自分もまさに中学二年生。
『中二病』なんて言葉は当時なかったけど、
この『マクロス』はロボットと恋愛、
アイドルをくっつけた
完全に今の萌えアニメのハシリ。

バイクの写真に必ず水着美女がいたり、
レースクイーンとか
メカニックなものと美女っていうのは定番。
メカと女性のツーショットとは
現実では相性の悪い組み合わせだが、
男が好きなものをそろえればこうなってしまう。

本作は戦争ものと恋愛もののイノベーション。
アニメ業界は30年間ずっと同じ事をやってる。

カミングアウトしちゃうと、小学生の自分は
このアニメの主人公リン・ミンメイみて
カワイイおねえさんだな~と、ほのかに想っていた。
だから二次元の世界に閉じこもっちゃう
いまのオタク心理というのは
なんとなく理解できるんです。

ミンメイは30年前の美少女像だから、
いまの美少女のイメージとは違って肉感的。
二の腕も太いし、体型にボリュームがある。
ただ、猫なで声で話してるのは今と同じ。
まあ、同性には好かれないタイプでしょう。

映画版のミンメイが言うんです。
「あなたと私以外、みんな死んじゃえばいいのに!!」
百年の恋も冷めました。
イヤな女だなって。
自分のことしか考えてないんだって。
カワイイだけじゃダメなんだな。

でもこの考え方、
今のサブカル作品のテーマでもある。
自分たちの小さな世界に閉じこもって、
あとはどうでもいいみたいな狭い視野と重なる。

ホントは周りと自分があってはじめて
世界はまわっているのに
自分だけが閉じこもってる。
そんな世界は一見居心地がいいようでいて
じつは閉塞感しかない。自由ではない。
自ら檻の中に閉じこもってしまっている。

この映画の最後でミンメイは、
いままで自分の事ばっかりだったのに、
利他の為に歌うんですね。
ここにカタルシスがある。

今のアニメは、観客の望む方向のみにしか
力点を置いていないので、
コアなファンは増えるだろうが、
それ以外の人には理解できない。

二次元に閉じこもる心理はわからんでもないが、
生身の女の子とデートする方が
数百万倍、刺激的で面白いかってのは、
経験しなきゃ分からない。
傷つくことがあっても、それは経験値アップ。
疑似恋愛は10代で卒業すべき。

日本の作品がガラパゴス化する
起点になったアニメでもある訳です。

関連記事

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』 これぞうつ発生装置

90年代のテレビシリーズから 最近の『新劇場版』まで根強い人気が続く 『エヴァンゲリオン

記事を読む

『アーロと少年』 過酷な現実をみせつけられて

く、暗いゾ。笑いの要素がほとんどない……。 日本のポスタービジュアルが、アーロと少年ス

記事を読む

『花束みたいな恋をした』 恋愛映画と思っていたら社会派だった件

菅田将暉さんと有村架純さん主演の恋愛映画『花束みたいな恋をした』。普段なら自分は絶対観ないよ

記事を読む

no image

『おさるのジョージ』嗚呼、黄色い帽子のおじさん……。

  もうすぐ3歳になろうとするウチの息子は イヤイヤ期真っ最中。 なにをするにも

記事を読む

『ツイスター』 エンタメが愛した数式

2024年の夏、前作から18年経ってシリーズ最新作『ツイスターズ』が発表された。そういえば前作の

記事を読む

『龍の歯医者』 坂の上のエヴァ

コロナ禍緊急事態宣言中、ゴールデンウィーク中の昼間、NHK総合でアニメ『龍の歯医者』が放送さ

記事を読む

『デザイナー渋井直人の休日』カワイイおじさんという生き方

テレビドラマ『デザイナー渋井直人の休日』が面白い。自分と同業のグラフィックデザイナーの50代

記事を読む

『進撃の巨人』 残酷な世界もユーモアで乗り越える

今更ながらアニメ『進撃の巨人』を観始めている。自分はホラー作品が苦手なので、『進撃の巨人』は

記事を読む

『Mr.インクレディブル』 好きな仕事に就くこと

今年続編が公開される予定のピクサー2004年の映画『Mr.インクレディブル』。もうあれから1

記事を読む

no image

『デッドプール』映画に飽きた映画好きのためのスパイス的映画

映画『デッドプール』は、劇場公開時に見逃してからずっと観たかった映画。小さな子どもがいる我が家では、

記事を読む

『動くな、死ね、甦れ!』 過去の自分と旅をする

ずっと知り合いから勧められていたロシア映画『動くな、死ね、甦れ

『チェンソーマン レゼ編』 いつしかマトモに惹かされて

〈本ブログはネタバレを含みます〉 アニメ版の『チ

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』 普通に生きるという特殊能力

リチャード・カーティス監督の『アバウト・タイム』は、ときどき話

『ヒックとドラゴン(2025年)』 自分の居場所をつくる方法

アメリカのアニメスタジオ・ドリームワークス制作の『ヒックとドラ

『世にも怪奇な物語』 怪奇現象と幻覚

『世にも怪奇な物語』と聞くと、フジテレビで不定期に放送している

→もっと見る

PAGE TOP ↑