『ワンダーウーマン』女が腕力を身につけたら、男も戦争も不要となる?
ガル・ギャドットが演じるワンダーウーマンの立ち姿がとにかくカッコイイ! それを一見するだけでもこの映画を観る価値がある。
最近のワーナー&DCのアメコミヒーローモノは、成功しているディズニー&マーベルを意識しすぎて空回りしている感は否めない。
『DCエクステンデッド・ユニバース』の前作にあたる『スーサイド・スクワッド』。マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインと、ジャレッド・レトのジョーカーとのカップルはとても魅力的。でもかんじんの映画では中途半端な活躍ぶりでガッカリ。
『バットマン vs スーパーマン』も、彼らがなぜ争っているのかサッパリ理解できなかった。ガル・ギャドットのワンダーウーマンが、この作品で中途参戦する。彼女が登場した場面だけはスカッとした。『バットマン vs スーパーマン』は、ワンダーウーマンにすべて持ってかれていた。
なんでもガル・ギャドットは、『マッドマックス』でシャーリーズ・セロンが演じたフュリオサ役のオーディションで競ったらしい。シャーリーズ・セロンのフュリオサはサイコーだったけど、仮にガル・ギャドットがフュリオサでも、絶対あのキャラクターのファンになっていた。
ガル・ギャドットはイスラエル出身で、兵役の経験がある。この『ワンダーウーマン』も、なんらかのプロパガンダではと懸念の声もあったが、そもそもアメコミ自体が当時の子どもたちへのそれであったので、いまさら騒ぐ問題でもないかも。受け手である観客のセンスに大いに委ねられる。
むしろいつも悪役にされているドイツ人は、この映画を一体どうとらえているだろうか? 「どーせ自分たちは歴史の悪役だよ」と拗ねてるんじゃないか? 悪の軍神に取り憑かれている設定とはいえ、ドイツ人なら殺してもいいってのはなんとも気色悪い。あとドイツ人がみな英語喋ってるのとかもあまり気にしてはいけない。
人間の脳は男性よりも女性の方が優れているのは科学が証明している。記憶力やら共感力が女性の方が得意とするのは日々感じること。でもほとんどの社会が男性優位になるようにできている。日本でも女性の社会進出がうながされてからだいぶ経つが、それでも続く男尊女卑の流れ。
女性が男性を立てているのは、腕力ではかなわないから一歩譲ってくれているだけなのかもしれない。男性は自分の脳の方が能力が劣っているのを本能的に知っているからこそ、女性を従えようとする。でもそれはかなり原始的な考え。男性の脳のCPUが低いのは、その「忘れやすい能力」こそが、狩猟での恐怖を乗り越えるためのものらしい。男性も現代社会では危険な仕事をしなくて済むようになった。そうなるとただのおバカさんに成り下がってしまうのか?
バカなだけならいいが、無駄に闘争本能が残っているため、誰が上で誰が下かばかり気になり、争いごとが絶えなくなる。経済的な競い合いから戦争までと果てなく続く。
女性がもし男性よりも腕力があったなら、ワンダーウーマンの故郷と同じように、女性だけのコロニーをつくって、女だけで生きていくのではないだろうか。映画での女の王国では子どもがいなかったが、子どもがいたら、その子たちが生きやすい社会をつくるのを最優先にするのが女性だろう。日々の生活を少しでも快適に過ごすだめの工夫と努力。静かだがクリエイティブな作業に一生をかける。
もちろん女性でも争いごとを好む人だっている。でも大抵そんな人は同性から嫌われてる。自分から好んで男社会の修羅道に飛び込んでいくだろう。女社会の戦いは、調和を保つための建設的で平和を求める静かなもの。暴力は皆無。
好評な『ワンダーウーマン』の映画に対してジェイムズ・キャメロン監督が辛口批判をした。それに対して本作を演出した女流監督パティ・ジェンキンスは知的に対応した。とても爽快。周知の通りジェイムズ・キャメロン作品には、強い女性が大活躍する映画ばかり。でもやはりそれは男性目線の女性像。
『ワンダーウーマン』は、女性監督による、女性が好感が持てるスーパーヒロインを成立させた。ワンダーウーマンのコスチュームは、肌の露出すら武装にみえる。相手役のクリス・パインだって結構マッチョなはずなのに、ガル・ギャドット=ワンダーウーマンと並ぶと、華奢な草食男子にみえてきちゃう。もう姐さんにお任せします!
ジェイムズ・キャメロンは明らかに嫉妬してる。でもキャメロンの言い分もあながち的はずれではない。自分ももっとワンダーウーマンの活躍場面がみたかった。これくらいじゃ物足りない! ワンダーウーマンことダイアナと、人間社会のカルチャーギャップをもっとみたかった! そしてダイアナのイノセントぶりもみたい! これはDCエクステンデッド・ユニバースの総括を目論む頭の固いプロデューサー側が不自由にさせているせいから?
でも続編の製作も同じパティ・ジェンキンス監督の続投で決まったし、本作の成功でまだまだ盛り上がりそう。DCエクステンドの次回作『ジャスティス・リーグ』にもワンダーウーマンは登場するけど、こちらはいささか不安。『ワンダーウーマン2』に期待はふくらむばかり。
ガル・ギャドットは実際に二児のママ。ハリウッドのオーディションには娘を連れてイスラエルから通っていたらしい。アクションスターで母親という、なんともカッコイイ存在。そんな人物がワンダーウーマンを演じるのだから、キャラクターに魅力も滲み出る。
映画館には一人で観に来ている女性が多かった。同性の興味を惹くワンダーウーマン。かつて冒険譚は少年の専売特許だったけど、今は女性が活躍する作品が圧倒的に面白い。もう男の出番はなさそうだ。ようやく男目線じゃない「良い女」像がみえてきた。とにかくもう男に媚びる女はみたくない!
関連記事
-
-
『Ryuichi Sakamoto : CODA』やるべきことは冷静さの向こう側にある
坂本龍一さんのドキュメンタリー『Ryuichi Sakamoto : CODA』を観た。劇場は恵比寿
-
-
『ラ・ラ・ランド』夢をみること、叶えること
ミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』の評判は昨年末から日本にも届いていた。たまたま自分は日本公開初日の
-
-
『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』ディズニー帝国の逆襲
自分は『スター・ウォーズ』が大好きだ。小学1年のとき、アメリカで『スター・ウォーズ』という得
-
-
『プロジェクトA』ジャッキー映画でちょっと強くなった気になる
ジャッキー・チェンの映画を観たあとは、観るまえよりちょっとだけ気が大きくなる。な
-
-
『野火』人が人でなくなるところ
塚本晋也監督の『野火』。自分の周りではとても評判が良く、自分も観たいと思いながらなかなか観れずにいた
-
-
『名探偵ホームズ』ストーリー以外の魅力とは?
最近、ジブリ作品が好きな自分の子どもと一緒に『名探偵ホームズ』を観た。 か
-
-
『パイレーツ・オブ・カリビアン』映画は誰と観るか?
2017年のこの夏『パイレーツ・オブ・カリビアン』の新作『最後の海賊』が公開された。映画シリーズ第1
-
-
『わたしを離さないで』自分だけ良ければいいの犠牲
今年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ原作の映画『わたしを離さないで』。ラブストーリーのよう
-
-
『幸せへのキセキ』過去と対峙し未来へ生きる
外国映画の日本での宣伝のされ方の間違ったニュアンスで、見逃してしまった名作はたく
-
-
『スター・ウォーズ/スカイ・ウォーカーの夜明け』映画の終焉と未来
『スターウォーズ』が終わってしまった! シリーズ第1作が公開されたのは1977年。小学
- PREV
- 『ダンケルク』規格から攻めてくる不思議な映画
- NEXT
- 『エクス・マキナ』萌えの行方