日本映画の時代を先行し、追い抜かれた『踊る大走査線』
『踊る大走査線』はとても流行ったドラマ。
ドラマが映画化されて、国民的作品となった。
観た事はなくとも日本に住んでいれば
タイトルぐらいは誰もが知っていると思う。
ドラマから映画化へという、
日本映画の今のスタイルのひな形を作った。
90年代後半、このドラマが出てきたとき、
確かに新しいタイプの娯楽作品だった。
今までの刑事物は、鉄砲を撃ったり、
ノーヘルでバイクに乗ったり、
フィクション性が高かったのだが、
本作では刑事もサラリーマンと同じという、
ある意味夢を壊して、現実的に描いた。
今までの日本映画は泥臭かったのに対し、
本作のように走っても汗をかかない主人公の姿に、
日本娯楽映画の新境地を拓いたといってもいい。
それでいて根底にはサブカルネタ満載で、
いま実写版も制作されている
アニメ作品『パトレイバー』からは
大きく影響を受けている。
いくつものスプンオフ作品(番外編)も作られ、
もう面白いんだかつまらないんだかどうでもいいくらい
ブランディングされてしまった。
2010年に久しぶりに劇場版3作目が公開された。
正直もう『踊る』は飽きていたのだが、
今まで観てきたしと思って、こわごわ観てみる。
正直つまらなかった。
なにもかもが古くさく感じた。
スリーアミーゴスというダメ上司三人組が、
自分の保身のため猿芝居をうつ様など、
堅い職種の人の不祥事が多い昨今では
不愉快きわまりない。
主人公・青島とすみれの関係も
まったく進展していないのにもいらつきを感じさせた。
アニメの主人公をイメージした青島が
恋愛に成就したり、結婚したりしてはいけないのだろうが、
こんな草食系では主人公としてなんとも頼りない。
こんなつまらない映画を評価したりして
制作者を甘やかしたらダメだと感じた。
しかしブランドに弱い日本人。
『The FINAL』とうたった完結編も大ヒット。
この予告編を観たとき、
「あれ、新作なのに全部観た事あるような気がする」
と感じ、さすがに劇場へは足を運ばなかった。
あとで観たと思うのだが、全然記憶にない。
続編が重なると面白くなくなるのは世の常。
しかしながらここまでつまらない作品が、
それなりに観客動員を稼げるとは、
日本人のブランド信仰の根深さを感じる。
そりゃあリサーチの仕方も
観客をナメたものになるだろうし、
ウケるウケないの基準が
わからなくなってしまうだろう。
『踊る大走査線』は時代を先行し、
時代に追いつかれ、追い越されて行った作品だと思う。
かつて面白くても、
今の世に合わないものってあると思います。
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