*

『風立ちぬ』 憂いに沈んだ未来予想図

公開日: : 最終更新日:2021/10/09 アニメ, 映画:カ行

映画『風立ちぬ』、
Blu-rayになったので観直しました。

この映画、家族には不評です。
小さな子どもには難しいらしく、
騒いでいるか寝てしまいます。

妻は最初から観たくないと言っております。
震災が起こって、戦争に向かっていき、
奥さん病気……。明るい要素が何も無いと。

戦争がテーマなので、
なんらかのプロパガンダは絡んでいるでしょう。
それも警戒感を与えるのでしょう。

昨年は本作と『永遠の0』という、
2本の零戦映画が公開され、どちらもヒットしました。
右側と左側の作家から、バランス良く出てきたと思います。

この『風立ちぬ』、
良い映画だとは思いますが、
如何せん、今迄の宮崎駿監督作品の
爽快感は期待できないのです。

最初から大人向けに作っているし、
戦争に取り込まれていく
ひとりの天才の姿を描いた作品だからです。

大きな時代の流れの中では、
個はあまりに小さく無力。
ワーカホリックの男の姿は、
当時のステレオタイプなのでしょうが、
仕事中心になると当然家庭は崩壊していきます。
妻の結核という病気もその象徴でしょう。

これが引退作と発表した宮崎監督。
過去を描きながらも、これからの未来を予兆した本作。

監督が描いたこの国の未来はあまりに暗く、
絶望的なものとなっております。

最終作にしては憂い過ぎではと、
観賞後不安にすらなります。

これが宮崎監督の最後のメッセージなんですね。

ちなみにこの作品を発表後、
アニメ業界の古株の方々から
「宮崎バッシング」が多発したそうです。
宮崎監督はいい人で業界でも有名。
悪口を言いづらい人らしいのです。

どうやら、大人向け作品と子ども向け作品、
どちらも成功した人は稀なので、
やっかみが業界に流れたのでは?と解釈します。

作品で成功すると、同業者から敵を作ってしまうのですね。
まったくもって嫉妬は恐ろしい。

 

関連記事

『Ryuichi Sakamoto : CODA』やるべきことは冷静さの向こう側にある

坂本龍一さんのドキュメンタリー『Ryuichi Sakamoto : CODA』を観た。劇場

記事を読む

『async/坂本龍一』アートもカジュアルに

人の趣味嗜好はそうそう変わらない。 どんなに年月を経ても、若い頃に影響を受けて擦り込ま

記事を読む

『コジコジ』カワイイだけじゃダメですよ

漫画家のさくらももこさんが亡くなった。まだ53歳という若さだ。さくらももこさんの代表作といえ

記事を読む

no image

『くまのプーさん』ハチミツジャンキーとピンクの象

  8月3日はハチミツで、『ハチミツの日』。『くまのプーさん』がフィーチャーされるの

記事を読む

no image

『スター・トレック BEYOND』すっかりポップになったリブートシリーズ

オリジナルの『スター・トレック』映画版をやっていた頃、自分はまだ小学生。「なんだか単純そうな話なのに

記事を読む

『あしたのジョー2』 破滅を背負ってくれた…あいつ

Amazon primeでテレビアニメの『あしたのジョー』と『あしたのジョー2』が配信された

記事を読む

『君の名前で僕を呼んで』 知性はやさしさにあらわれる

SF超大作『DUNE』の公開も間近なティモシー・シャラメの出世作『君の名前で僕を呼んで』。イ

記事を読む

『花束みたいな恋をした』 恋愛映画と思っていたら社会派だった件

菅田将暉さんと有村架純さん主演の恋愛映画『花束みたいな恋をした』。普段なら自分は絶対観ないよ

記事を読む

『かぐや姫の物語』 この不気味さはなぜ?

なんとも不気味な気分で劇場を後にした映画。 日本人なら、昔話で誰もが知っている 『

記事を読む

no image

『ジュブナイル』インスパイア・フロム・ドラえもん

  『ALWAYS』シリーズや『永遠の0』の 山崎貴監督の処女作『ジュブナイル』。

記事を読む

『アン・シャーリー』 相手の話を聴けるようになると

『赤毛のアン』がアニメ化リブートが始まった。今度は『アン・シャ

『新幹線大爆破(Netflix)』 企業がつくる虚構と現実

公開前から話題になっていたNetflixの『新幹線大爆破』。自

『ラストエンペラー オリジナル全長版」 渡る世間はカネ次第

『ラストエンペラー』の長尺版が配信されていた。この映画は坂本龍

『アドレセンス』 凶悪犯罪・ザ・ライド

Netflixの連続シリーズ『アドレセンス』の公開開始時、にわ

『HAPPYEND』 モヤモヤしながら生きていく

空音央監督の長編フィクション第1作『HAPPYEND』。空音央

→もっと見る

PAGE TOP ↑