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『パラサイト 半地下の家族』国境を越えた多様性韓流エンタメ

公開日: : 映画:ハ行, 音楽

ここのところの韓流エンターテイメントのパワーがすごい。音楽ではBTSが、アメリカのビルボードで一位をとったりもしている。世界のアイドルといえば、圧倒的に欧米人、白人ばかりのイメージだった。でもそれはもう古いものとなってしまった。

アジア人のコンプレックスだった目の細さも、世界中からカワイイとかカッコいいとか言われるようになった。韓流のスターが世界で認められている姿は、同じアジア人として素直に嬉しい。ある意味世界は白人文化に飽きてしまったのかもしれない。マイノリティを認めないなんて、カッコ悪いこと。多様性を受け入れてこその文化。この流れは気持ちがいい。サブカルチャーを牽引している若者たちが、こぞってアジアのアイドルを応援する姿に、明るい未来を感じてしまう。

ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』が、カンヌでパルムドールを獲ったのがすごい。それに加えてアメリカのアカデミー賞を受賞してしまったことが、なによりの驚き。アカデミー賞は、アメリカ産のハリウッド映画が獲るものだとばかり思っていた。それが、韓国で韓国語で製作されたこの映画が、アメリカで優秀賞を獲る。

アメリカ人は、外国語映画は芸術作品として考えるものと思っていた。しかも『パラサイト』のような、純粋な娯楽作品が受け入れられることの偉大さ。もしかしたらハリウッドは、もうネタ切れなのかもしれない。自国の外側に目を向けていかなければ、立ち行かないところまできているのかも。

この『パラサイト』という映画は、とくに海外進出を目的で製作したわけではないらしい。でも、韓国のエンターテイメント業界は、それこそ20年くらい前から自国のエンターテイメントを、輸出産業にしようと国を挙げて盛り上げていた。ドラマでは『冬のソナタ』、映画では『シュリ』とか『JSA』がヒットした頃だ。それらの作品は、日本のエンタメに強く影響を受けたものだった。でも今ではその元ネタを遥かに越えた収益を、世界規模で成功させている。そのあいだ、日本のエンタメはかなり弱体化してしまった。

ポン・ジュノ監督が語るこの映画『パラサイト』の撮影現場の「働き方改革」っぷりが半端ない。映画の撮影現場といえば、とかく毎晩夜通し寝ずに働いて、精神論で押し切る、やる気搾取の典型的なイメージ。日本が世界に撮影の招致をかけたとき、「撮影スタッフの残業代はタダで請負います」なんて言ってしまうのがなにより。それでもポン・ジュノ監督は、「撮影終盤の佳境に入ったら、残業せざるを得なかった」と残念そうに言っていた。

どんなに綿密なスケジューリングを組んでいても、思い通りに進まないこともある。でも最初からオーバーワークを当然としているのと、結果的にそうなってしまったのではプロセスが違いすぎる。スタッフを守りながらも仕事が押してしまったのでは、スタッフのモチベーションも違う。その現場には疲弊よりも士気の高まりが想像できる。いい現場はいい作品へと繋がりやすい。

映画『パラサイト』の題材は、世界中で問題となっている格差社会。社会派のテーマを扱ってはいるものの、この映画は純粋なエンターテイメント。重くなるどころか、軽快に「次はどうなるんだ?」と、ジェットコースターのように観客をグイグイ引っ張っていく。重いテーマを孕んでいながら、軽く料理してしまうところが大人。

映画の舞台は、ある金持ちの豪邸。そこに集まる複数の家族の物語。家族がテーマというのも韓国らしい。いくつかの価値観が一つの舞台に集まる面白さ。

主人公である父親のソン・ガンホ。自分は以前からずっと年上のおじさんとばかり思っていたが、あまり歳が変わらないことにびっくり。主人公の子どもたちの方が、自分とずっと歳が離れてる。そうか、もう自分も親の世代か。自分もこんなにおじさんなんだなぁ……。

日本経済には「年収700万円の壁」というものがある。ひと家族で年収700万円あれば、そこそこ裕福で満足な暮らしができるらしい。もしそれ以上の収入になると、それを持て余してしまう。見栄とか世間の目とか余計なものに振り回されてしまう。経済的に貧しいのは不幸だが、多すぎる収入も不幸につながる。

過剰収入で、自分たちだけでは管理できないほどの大きな豪邸に住む。結局他人を家に雇って、管理してもらわなければならなくなる。その時点でプライバシーは無くなった。王様には常に誰か側近が付きまとい、一人っきりになれることはない。本当の自由はこんなものなのだろうか。

この映画の登場人物たちには、極端に貧富の差がある。このコントラストを上手に演出している。この格差のどちらにも属したくない。そう思えたら、作り手の意図に近づけたか。ホントの幸せってなんだろう。

我々観客は、ブラックな笑いにクスクスしているうちに、やがてやるせない気持ちになっていく。堅苦しくない社会風刺。ブラックコメディ。自分はそんな映画は大好物。現代社会があまりに世知辛いせいか、やっぱりドーンと重いものがのしかかってくる。現代格差社会で、自分たちはこの極端な貧富のどちらかに属しているのだと見返えざるを得ない。

作品は問題提起はしていない。でも我々観客は問題意識を持たなければいけない。この映画で起こっていることは、明日自分の身にも降りかかるかも知れないのだから。

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