『プロジェクトA』ジャッキー映画でちょっと強くなった気になる
ジャッキー・チェンの映画を観たあとは、観るまえよりちょっとだけ気が大きくなる。なんだか自分も強くなった気になるから不思議だ。
お笑いコンビのドランクドラゴンが、子どもがいじめられない対策に、ジャッキー映画を観ることでメンタルをトレーニングするといいと言っていた。そういえばドランクドラゴンってコンビ名も、ジャッキー映画の『酔拳』から取っているのかしら?
ジャッキー映画の主人公は、心優しいく正義感があるが、どうも何をやってもうまくいかないダメ男。それが得意のカンフーで、ひとつひとつ問題を解決していく。そのうちに大業を成し遂げてしまうというもの。そりゃあ勇気がもらえる。こりゃあウチも子どもと観なければ!
自分がこの『プロジェクトA』を観たのは10代の頃。当時近所だった川越スカラ座に、学校の帰りに友達と観に行った。川越スカラ座は二番館の名画座。都内の大手ロードショー館が終わった作品を二本立てで上映する。だから料金もリーズナブル。今みたいに完全入替制ではないので、一日中映画館に入り浸っても大丈夫。たしかその時の同時上映は『エイリアン2』だったような。
最近、川越スカラ座では『この世界の片隅に』の勢力的な応援で、テレビの取材がきていた。テレビの向こうの川越スカラ座は、30年前通いつめてたころとほとんど変わらない、街の片隅の小さな映画館の雰囲気のままだった。
10代の頃の自分は、「香港映画なんてダサい」と思っていた。でも、CG全般で映画がコンピュータ上で作られていく現代だからこそ、ジャッキー映画のような肉弾戦そのままの迫力に価値がでてきた。
映画の登場人物たちは、二階建ての建物くらいだったら平気で飛び降りちゃうし、足蹴りだけで悪漢2、3人は軽く蹴り飛ばしちゃう。映画鑑賞後は、自分も飛べるんじゃないかと錯覚してしまう。さて落ち着いて二階建てを見上げてみる。結構高い。ジャッキーはじめ、映画のスタントマンたちの身体能力の高さを実感する。マネしちゃダメだ。ケガする。
ジャッキーもこの映画の時計塔から飛び降りるスタントで大怪我してる。当時はあまりピンとこなかったが、恐ろしいスタントの連続で、今回映画を観ながら「あぶない!」って悲鳴あげっぱなしだった。
ジャッキー演じる主人公ドラゴンは水兵さん。軍隊がでてくるとやっぱりプロパガンダ映画ではないかといぶかってしまう。
『プロジェクトA』は時代モノだけど、映画製作当時の1983年は、香港はまだイギリスの植民統治下。映画の中では、英国人がなんとなく威張ってて、上官たちが「女王陛下のために働けて光栄です!」なんておべんちゃらしている姿が興味深い。『プロジェクトA』はコメディだから、決して卑屈には描かれていないが、当時の香港もこんな感じだったのだろう。自分の国のために働くのではなく、植民元の国のために働く矛盾。その空気感が独特だ。
今回観た『プロジェクトA』はブルーレイ版。配給はアメリカのパラマウント社というのが意外。音声も5.1チャンネルにリミックスされ、映像は白人の目に合わせた赤みのあるレストア。香港映画がアメリカの技術で修復されて販売されている。今なおジャッキー・チェンの映画が世界的に愛されているのがこれでわかる。
今回は子どもたちと観るので、モノラルの吹替版での鑑賞。そうそうジャッキーの声は石丸博也さんだよね。サモハン・キンポーはもちろん水島裕さん。自分が小さい頃、ジャッキー・チェンなどのカンフー映画がテレビで放送されるたび、かぶりつくように観ていたのを思い出す。吹替の声優さんたちの演技もすばらしく楽しいので、こちらもなかなか聞き逃せない。
劇中の翻訳で、「あそこにハクいスケがいるぜ」なんてセリフがある。2018年の今ではそんな日本語ないので、何言ってるんだかサッパリわからない。当時の流行り言葉を使ってしまうと、ウェルメイドでなくなっちゃう。死語の世界は恐ろしい。
映画鑑賞後、うちの子たちも飛び跳ねてポージングしてた。ジャッキー・チェン映画の正しい効果。これでいいのだ。
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