*

『グレイテスト・ショーマン』奴らは獣と共に迫り来る!

公開日: : 映画:カ行, 音楽

http://www.foxmovies-jp.com/greatest-showman/

映画『グレイテスト・ショーマン』の予告編を初めて観たとき、自分は真っ先に「ケッ!」となった。「『ラ・ラ・ランド』のスタッフと、『レミゼラブル』のヒュー・ジャックマンが贈る最新ミュージカル映画です」って。近年の評判の良い素材を集めました。皆さん好きでしょう? あざとい商魂がモロわかり。

でも映画公開が始まると、あちこちでで好評の声が聞こえてくる。ラジオから聞こえてくる映画のサウンドトラックは、どれもテンションが上がる楽しいものばかり。これは観ないわけにはいかなくなった。

映画『グレイテスト・ショーマン』は、オープニングの掴みもバッチリ。いきなりハイテンション。カッコよく音楽とダンスと映像の総合演出で、グイグイ観客の心を惹きこませる。強引なくらいのパワーがある。

ミュージカルは、なによりも音楽先にありき。良い楽曲さえあれば、ストーリーなんてあってないようなもの。曲をひきたたせるために、演出や脚本だって変更する。

あの『アナと雪の女王』だって、一番最初にに出来上がった、雪の女王であるエルサの心情を歌った『Let it go』があまりに良かったため、当初悪役の予定だったエルサを善人に変えてしまったくらい。無理くり変更したから、脚本的には整合性取れない部分もあるけど、それを凌駕するくらい作品にパワーがあった。ミュージカルでプロットの粗探しをするのは野暮ってもの。

この『グレイテスト・ショーマン』は一応伝記映画でもある。サーカスや見世物小屋の創始者P.T.バーナムがモデル。バーナムをヒュー・ジャックマンが、爽やか中年スマイルで演じてるから、おどろおどろしい感じがまったくしない。バーナムがこんな善人なわけがない。サーカスのもつ魑魅魍魎なイメージを刷新してしまった。

作中でバーナムの放つ興行を、評論家が批判する。それに対してバーナムは、「でも、観客が笑ってくれている」と応える。この映画『グレイテスト・ショーマン』事態、映画評論家の反応は芳しくなかったが、一般観客側からはSNSをはじめ、口コミの話題でもちきりになった。

ミュージカルといえば、日本なら女性ファンが多いものと思いがちだが、世界的にはゲイカルチャーの代表ジャンルでもある。映画を作るにあたって、いちばんのお得意様であるLGBT層をかなり意識している。映画の起源は、サーカスを描きたかったからではなく、美意識の高い、豪華絢爛のゲイカルチャーの再現だ。サーカスやバーナムは素材でしかない。そして、虐げられているフリークスたちのやるせない心情に、己を重ねるもよし。

ミュージカルの楽曲は、クラッシックやオペラに近いものが多い。作品のスパイス的にポップスやロックなど、違うエッセンスの曲調が入ってくるような印象。『グレイテスト・ショーマン』の楽曲は、耳あたりの良いポップスに絞られている。一貫性があって、とても聴きやすい。映画鑑賞後は、作中のミュージカル曲が、頭の中でヘビーローテションしてしまうくらい。時折オーケストレーションが入ってくると、違和感を感じるくらい。

「あなたの歌は聴いたことがない。でもあなたと仕事がしたい。自分の耳より、世間の評価の方が確実だ」劇中でのバーナムの歌手への口説き文句。これはこの映画のプロデューサーのそのまま本心だろう。

2時間に満たない上映時間は、ミュージカルは長尺だという慣例もとっぱらっていて良い。卑賤の者を見て笑う見世物小屋のサーカスや、ネットで罵詈雑言を書き連ねるより、楽しいだけのミュージカル映画に、ひととき心を委ねた方が、心身の健康には遥かに良い。

いま、世界中が疲れている。軽くても薄っぺらくてもいいじゃない。お客さんに優しい、軽やかな映画も必要だ。今という時代だからこそウケた『グレイテスト・ショーマン』。2時間弱のほんのひととき、夢をみさせて貰いましょう。

ちなみに、あまりに映画が良かったので、子どもたちと再度鑑賞。みんなノリノリで、ずっと映画の歌を口ずさんでる。『グレイテスト・ショーマン』好きな小学生とはシブすぎる。サントラご所望だそうです。

関連記事

『怒り』自己責任で世界がよどむ

http://www.ikari-movie.com/[/caption] 正直自分は、最近

記事を読む

『汚れた血』カノジョをキレイに撮る。それだけで映画になる。

『あの人は今?』的存在になってしまったレオス・カラックス監督。2年前に新作『ホーリー・モータ

記事を読む

風が吹くとき

『風が吹くとき』こうして戦争が始まる

レイモンド・ブリッグズの絵本が原作の映画『風が吹くとき』。レイモンド・ブリッグズといえば『さ

記事を読む

低予算か大作か?よくわからない映画『クロニクル』

ダメダメ高校生三人組が、未知の物体と遭遇して 超能力を身につけるというSFもののハリウッド

記事を読む

『007 スペクター』シリアスとギャグの狭間で

評判の良かった『007 スペクター』をやっと観た。 前作『スカイフォール』から監督は続

記事を読む

『レディ・プレイヤー1』やり残しの多い賢者

http://wwws.warnerbros.co.jp/readyplayerone/[/cap

記事を読む

『華氏911』アメリカは日本が進む反面教師?

世界のパワーバランスが崩れ始めている。 平和ボケしている日本人にも とうとう現実が伸し掛

記事を読む

ヒーローは妻子持ちはNGなの?『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』

今年は『機動戦士ガンダム』の35周年。 富野由悠季監督による新作 『ガンダム Gのレコン

記事を読む

『がんばっていきまっしょい』青春映画は半ドキュメンタリーがいい

今年はウチの子どもたちが相次いで進学した。 新学年の入学式というのは 期待と不安が入り交

記事を読む

『miwa』世代を越えても響くもの

http://ticketcamp.net/live-blog/miwa-lyrics/[/cap

記事を読む

PAGE TOP ↑