*

『シン・ゴジラ』まだ日本(映画)も捨てたもんじゃない!

公開日: : 最終更新日:2016/12/21 アニメ, メディア, 映画:サ行

from : www.oricon.co.jp/ (C)2016 TOHO CO.,LTD.

from : www.oricon.co.jp/
(C)2016 TOHO CO.,LTD.

映画公開前、ほとんどの人がこの映画『シン・ゴジラ』に興味がわかなかったはず。かく言う自分もこの作品は観るつもりもなかった。でも公開が始まってすぐ、ネットではこの映画を褒め称える声でいっぱいになった!

しかも絶賛しているのはクリエイターや評論家たち。いわゆるプロやツウがみんなこぞって評価してる。公開日はガラガラだった劇場が、週明けには満員御礼になるなんてとこもあったらしい。これはちょっとした社会現象。そうとなったら自分の目で確かめなくちゃと劇場へ駆け込んだ。

なんともこれは観たこともない映画だ! でも、いまもっとも観たかった映画‼︎ 怪獣映画を観に行ったはずなのに、印象として残っているのは、登場人物の顔ばかり。そう、これは働く大人がカッコイイ映画なのです。

政治家や閣僚、各部門の専門家がたくさんでてきます。みんな「こんな人いるいる!」のオンパレード。リアリティがありすぎて、終始ニヤニヤしてしまった。ここで登場するのは、その道のトップ、エリート中のエリート。だから変わった人ばかり。その人たちの独特の特徴を誇張しているのだから意地悪だけど、基本的にあらゆる職業人に対してのリスペクトを感じる。あの政治家は誰をモデルにしてるのかと想像するのも楽しい。無個性と言われがちの日本人の、なんともまあキャラクターの豊かなこと。

かつて漫画家の松本零士さんやスティーブン・スピルバーグ監督なんかが言っていたと思うけど、SFやファンタジーでやってはいけない表現は、政治家がずっと会議をしている場面を観せること。作品がつまらなくなるから。その普通に考えればタブーになる描写を延々観せられる。それが面白い!

自分達は311の大地震を経験している。いつ首都直下型の大地震が起きても不思議でない状況下にある。ニュースではキナ臭い情報が毎日のよう流れ、日本もいつ世界のどこかの戦争に巻き込まれかねない。SFやファンタジーは、世に警鐘を鳴らしたり、風刺や批判をするジャンル。ゴジラというメタファーを利用して、最悪の事態を完全シミュレートしている。

最近の日本では、ニュースやメディア、ネットでも、カッコ悪い大人しか見かけなくなってしまった。大丈夫か日本? この国の未来に多くの人が憂いはじめている。その最中にこのカウンターパンチ! 日々の仕事を一生懸命することがここまでカッコイイとは‼︎ 仕事に疲れた日本人に、いま必要なカンフル剤的映画。本作に登場する人物の仕事の末端で働くであろう人々は、自分の知り合いや身内かもしれない。もしかしたら自分もこの群像劇のひとりなのかも知れないということ。

いま、現実の日本もかなりキツイ状況にきている。日本映画も然り。日本のあらゆる産業も然り。

日本でゴジラの新作を制作すると聞いたとき、イヤな印象しかなかった。ハリウッド版の成功にあやかろうとしているし、うつ病だった庵野秀明さんを無理矢理担ぎあげているようにも感じた。このネームバリューがあればと、企業の商魂ばかりが伝わる。きっと防衛省も全面協力して、宣伝に利用する。まあ結果としてはそうなのだろうけど、ここまでカッコイイ映画に仕上がったのなら許せちゃう。

庵野秀明総監督の脚本は、普通の映画の何倍もあるであろう情報量。でもそれらをいちいち細かく理解する必要はない。作り手も分からせるつもりも毛頭ない。パッパといさぎよく編集でかっ飛ばしちゃう。重要なのは雰囲気。

有事が発生したとき、国のトップはどう動くのか? いつ未曾有の災厄が起こりかねない今の日本だからこそ、ゴジラは怖い。でもやっぱり怪獣映画なので、邪悪なゴジラのデザインにきゃあきゃあ言いながら楽しめるのがなにより救い。バカバカしい笑える要素があるからこそ、エンターテイメントは成立する。

最近の日本映画はすっかりマンガ原作や、ティーン向けの恋愛モノばかりになってしまって、観るものがなくてさみしいな〜と諦めかけている矢先の骨太映画でした。元気がでる映画。これで日本映画や日本が景気付けばいいけど。まあ欲を言えば、完全オリジナルの企画でこれくらいの作品が観たいものですが……。

映画の終盤では、なんだか泣けてきた。ドライな演出だからこそ、迫るものがある。

最後に映画のセリフを拝借しましょう。
日本も、日本映画も、まだまだ捨てたもんじゃありませんね!

関連記事

『オネアミスの翼』くいっっっぱぐれない!!

先日終了したドラマ『アオイホノオ』の登場人物で ムロツヨシさんが演じる山賀博之氏。

記事を読む

『境界のRINNE』やっぱり昔の漫画家はていねい

ウチでは小さな子がいるので Eテレがかかっていることが多い。 でも土日の夕方の、青年向け

記事を読む

マンガ原作でも世界中の大人が評価した『アデル、ブルーは熱い色』

日本とフランスの文化は似てる。 カンヌ国際映画祭で最高賞であるパルムドールを受賞した『

記事を読む

『はじめて投票するあなたへ、どうしても伝えておきたいことがあります。』って、はじめてじゃないけどね

7月10日に参議院選挙がある。今回から選挙権が18歳以上に引き下げになる。それに対して発売さ

記事を読む

『ラストサムライ』渡辺謙の作品選び

トム・クルーズ主演の日本を舞台にした時代物ハリウッド映画『ラストサムライ』。渡辺謙さんのハリ

記事を読む

『野火』人が人でなくなるところ

http://www.tsukamotoshinya.net/[/caption] 塚本晋也

記事を読む

男は泣き、女は勇気をもらう『ジョゼと虎と魚たち』

この映画『ジョゼと虎と魚たち』。 公開当時、ミニシアター渋谷シネクイントに 長蛇の列に並

記事を読む

『ルパン三世(PART1)』実験精神あればこそ

MXテレビで、いちばん最初の『ルパン三世』の放送が始まった。レストアされて、ものすごい高画質

記事を読む

何が来たってへっちゃらさ!『怪盗グルーのミニオン危機一発』

世界のアニメ作品はほぼCGが全盛。 ピクサー作品に始まり、 母体であるディズニーも 最

記事を読む

自分の人生に責任をもつこと その1

自分に言い聞かせるつもりで記します。 ネットに拡散された『宮崎駿に人生を壊された女』という

記事を読む

『ペンタゴン・ペーパーズ』ガス抜きと発達障害

スティーヴン・スピルバーグ監督の『ペンタゴン・ペーパーズ』。ベトナ

『デザイナー渋井直人の休日』カワイイおじさんという生き方

https://www.tv-tokyo.co.jp/shibuin

『ピーターラビット』男の野心とその罠

http://www.peterrabbit-movie.jp/[/

『めぐり逢えたら』男脳女脳ってホント?

1993年のアメリカ映画『めぐり逢えたら』。実は自分は今まで観

『タクシー運転手』深刻なテーマを軽く触れること

http://klockworx-asia.com/taxi-dri

→もっと見る

PAGE TOP ↑