*

『(500)日のサマー』映画は技術の結集からなるもの

公開日: : 最終更新日:2019/06/10 映画:カ行

 

恋愛モノはどうも苦手。観ていて恥ずかしくなってくる。美男美女の役者さんが演じてるからサマになるけど、このセリフやシチュエーションを考えてるのが、オタクみたいなおっさんや、夢見る夢子のままおばさんになってしまった人なのが、見え隠れしてなんかしてくると、興ざめどころかキモい。

現実で恋愛しているときの刺激は、なによりも勝る。そこではあらゆる感情が現れてくる。人生の歓びもあるだろうが、修練の場といった方がよさそうだ。だからわざわざ創作で、他人様の惚れた腫れたに付き合っている暇はない。むしろなんで恋愛モノなんてジャンルがあるのかすら疑問に思ってしまうほど。

まだ小中学生の女子が少女マンガにハマるのはわかる。数年後、自分も恋愛するだろうから、いろいろな凡例の知識として興味があって当然。このときの書物との出会いが、後の人生に大きく影響してくる。その時代だけしか通用しない流行りのマンガやアニメより、何十年も読み継がれている作品に出会った方が幸せな人生が送れそう。

自分はシリアスな恋愛モノは寒気がして観てられないが、海外のラブコメは結構好きだ。恋愛は当事者にとっては一大事だが、第三者からみたらイジワルな笑いの要素でいっぱい。人のふり見て我がふり直せではないが、ちょっとした襟を正して生きていく指針にもなる。

この『(500)日のサマー』は、今から10年弱前の2009年の作品なのに、いまだに話題にする人が多い。監督はマーク・ウェブ。聞いたことがあるぞ。なんだ『アメージング・スパイダーマン』の監督か。この映画がきっかけで大作に抜擢されたのか。

恋愛で相手のリアクションに一喜一憂して大騒ぎするのはよくある話。主人公が大騒ぎすればするほど、観客側はどんどん冷めていく。もちろん主人公は熱烈でいい。その物語が面白くなるかならかならないかの要は、いかに語り部の作家が、一歩引いた目で事象をとらえられるか。

この映画はボーイ・ミーツ・ガールからその終焉までの500日に絞って、時系列をバラバラにする仕掛けがある。ある場面では出会いのときめきに胸膨らむ姿が描かれていれば、次の場面では500日に近くなり、なんだか倦怠期に落ち込んでる。なんでそうなっちゃったの? 観客の興味をそそる。あたかもミステリー小説のページをめくるかのように、その顛末を紐解いていく楽しさ。

ジョセフ・ゴードン=レヴィットが、奥手の主人公をぶざまに演じてる。ぶざまだけど、彼、イケメンだからあんまりぶざまに見えない。ここが恋愛モノのファンタジー。

クロエ・グレース・モレッツ演じるローティーンの妹がやけに達観している。しどろもどろの兄に恋愛のアドバイスしてる姿も面白い。男はいつまでたっても子どものままだが、女は子どもの頃から女だ。でも他人事を客観的に正論でまとめるのはそれほど難しいことではない。

日本でもすっかりおなじみになったIKEAが、オシャレなデートスポットとして登場するのに時代を感じる。

『(500)日のサマー』は、小洒落た映画的テクニックがあちこちに散りばめられている。男目線だけで描かれているのも映画的デフォルメ。女性側がそのときなにを感じ考えているかは、全編通して直接的には描かない。それは観客ひとりひとりが洞察すればいい。映画は省略の芸術でもある。解釈の幅があった方が、鑑賞後語り合うのが楽しい。

マーク・ウェブ監督は、演出技術を巧みに使って、映画を面白くしている。未完で頓挫した『アメージング・スパイダーマン』シリーズは、よっぽどプロデューサーとかがうるさいこと言って、のびのび演出させてくれなかったのではないだろうか。この監督の他の作品も観てみたくなった。

関連記事

no image

『勝手にふるえてろ』平成最後の腐女子のすゝめ

自分はすっかり今の日本映画を観なくなってしまった。べつに洋画でなければ映画ではないとスカしているわけ

記事を読む

no image

『かぐや姫の物語』この不気味さはなぜ?

  なんとも不気味な気分で劇場を後にした映画。 日本人なら、昔話で誰もが知っ

記事を読む

no image

日本企業がハリウッドに参入!?『怪盗グルーのミニオン危機一発』

  『怪盗グルー』シリーズは子ども向けでありながら大人も充分に楽しめるアニメ映画。ア

記事を読む

no image

『カーズ/クロスロード』もしかしてこれもナショナリズム?

昨年2017年に公開されたピクサーアニメ『カーズ/クロスロード』。原題はシンプルに『Cars 3』。

記事を読む

no image

『乾き。』ヌルい日本のサブカル界にカウンターパンチ!!

  賛否両論で話題になってる本作。 自分は迷わず「賛」に一票!! 最近の『ド

記事を読む

no image

ヒーローは妻子持ちはNGなの?『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』

  今年は『機動戦士ガンダム』の35周年。 富野由悠季監督による新作 『ガンダム

記事を読む

no image

東京テロリズムのシミュレーション映画『機動警察パトレイバー the movie2』

  今実写版も制作されている アニメ版『パトレイバー』の第二弾。 後に『踊る

記事を読む

no image

アニメ『機動戦士ガンダムUC』が遂に完結!!

  2010年スタートで完結まで4年かかった。 福井晴敏氏の原作小説は、遡る事20

記事を読む

no image

『銀河鉄道の夜』デザインセンスは笑いのセンス

  自分の子どもたちには、ある程度児童文学の常識的な知識は持っていて欲しい。マンガば

記事を読む

no image

『キングコング 髑髏島の巨神』映画体験と実体験と

なんどもリブートされている『キングコング』。前回は『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン

記事を読む

no image
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』そこに自己治癒力はあるのか?

自分はどストライクのガンダム世代。作家の福井晴敏さんの言葉にもあるが、

no image
『ナイトミュージアム』学びは最強の武器

ベン・ステラー監督主演のコメディ映画『トロピック・サンダー』を観たら、

no image
『トロピック・サンダー』映画稼業はいばらの道よ

  ベン・ステラーが監督主演したハリウッドの裏側をおち

no image
『アベンジャーズ/エンドゲーム』ネタバレは国家を揺るがす

世界中で歴代ヒットの観客数を更新しつつある『アベンジャーズ/エンドゲー

no image
『ボヘミアン・ラプソディ』共感性と流行と

昨年はロックバンド・クイーンの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒ

→もっと見る

PAGE TOP ↑