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『(500)日のサマー』映画は技術の結集からなるもの

公開日: : メディア, 映画:カ行

恋愛モノはどうも苦手。観ていて恥ずかしくなってくる。美男美女の役者さんが演じてるからサマになるけど、このセリフやシチュエーションを考えてるのが、オタクみたいなおっさんや、夢見る夢子のままおばさんになってしまった人なのが、見え隠れしてなんかしてくると、興ざめどころかキモい。

現実で恋愛しているときの刺激は、なによりも勝る。そこではあらゆる感情が現れてくる。人生の歓びもあるだろうが、修練の場といった方がよさそうだ。だからわざわざ創作で、他人様の惚れた腫れたに付き合っている暇はない。むしろなんで恋愛モノなんてジャンルがあるのかすら疑問に思ってしまうほど。

まだ小中学生の女子が少女マンガにハマるのはわかる。数年後、自分も恋愛するだろうから、いろいろな凡例の知識として興味があって当然。このときの書物との出会いが、後の人生に大きく影響してくる。その時代だけしか通用しない流行りのマンガやアニメより、何十年も読み継がれている作品に出会った方が幸せな人生が送れそう。

自分はシリアスな恋愛モノは寒気がして観てられないが、海外のラブコメは結構好きだ。恋愛は当事者にとっては一大事だが、第三者からみたらイジワルな笑いの要素でいっぱい。人のふり見て我がふり直せではないが、ちょっとした襟を正して生きていく指針にもなる。

この『(500)日のサマー』は、今から10年弱前の2009年の作品なのに、いまだに話題にする人が多い。監督はマーク・ウェブ。聞いたことがあるぞ。なんだ『アメージング・スパイダーマン』の監督か。この映画がきっかけで大作に抜擢されたのか。

恋愛で相手のリアクションに一喜一憂して大騒ぎするのはよくある話。主人公が大騒ぎすればするほど、観客側はどんどん冷めていく。もちろん主人公は熱烈でいい。その物語が面白くなるかならかならないかの要は、いかに語り部の作家が、一歩引いた目で事象をとらえられるか。

この映画はボーイ・ミーツ・ガールからその終焉までの500日に絞って、時系列をバラバラにする仕掛けがある。ある場面では出会いのときめきに胸膨らむ姿が描かれていれば、次の場面では500日に近くなり、なんだか倦怠期に落ち込んでる。なんでそうなっちゃったの? 観客の興味をそそる。あたかもミステリー小説のページをめくるかのように、その顛末を紐解いていく楽しさ。

ジョセフ・ゴードン=レヴィットが、奥手の主人公をぶざまに演じてる。ぶざまだけど、彼、イケメンだからあんまりぶざまに見えない。ここが恋愛モノのファンタジー。

クロエ・グレース・モレッツ演じるローティーンの妹がやけに達観している。しどろもどろの兄に恋愛のアドバイスしてる姿も面白い。男はいつまでたっても子どものままだが、女は子どもの頃から女だ。でも他人事を客観的に正論でまとめるのはそれほど難しいことではない。

日本でもすっかりおなじみになったIKEAが、オシャレなデートスポットとして登場するのに時代を感じる。

『(500)日のサマー』は、小洒落た映画的テクニックがあちこちに散りばめられている。男目線だけで描かれているのも映画的デフォルメ。女性側がそのときなにを感じ考えているかは、全編通して直接的には描かない。それは観客ひとりひとりが洞察すればいい。映画は省略の芸術でもある。解釈の幅があった方が、鑑賞後語り合うのが楽しい。

マーク・ウェブ監督は、演出技術を巧みに使って、映画を面白くしている。未完で頓挫した『アメージング・スパイダーマン』シリーズは、よっぽどプロデューサーとかがうるさいこと言って、のびのび演出させてくれなかったのではないだろうか。この監督の他の作品も観てみたくなった。

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