*

『黒い雨』エロスとタナトス、そしてガラパゴス

公開日: : 最終更新日:2019/06/15 映画:カ行,

 

映画『黒い雨』。
夏休みになると読書感想文の候補作となる
井伏鱒二氏の原作を今村昌平監督が映画化。

広島の原爆と原爆症に苦しむ
普通の人々を描いた本作。

当時としてはかえって制作費のかかる
モノクロフィルムで制作されている。

原爆の場面を真正面から描きたい
という意気込みが映像から伝わる。

今はシネコン・バルト9となっている場所にあった
新宿東映で、自分は10代のとき鑑賞しました。

今と違って防音設備のない映画館。
道路の音もだだ漏れで、
遂には劇場で演説しはじめちゃう人とかいて、
なんだか落ち着かない鑑賞でした。

実はその頃自分は生前の今村昌平監督と
お会いしてるんですね。

当時、今平監督が校長をしていた
日本映画学校(現・日本映画大学)を
受験した時、面接官だったのです。

今平監督の作風は豪快なので、
さぞかし怖い人かと思い、
ビクビクしていましたが、
なんのことはない、
ボクちゃん相手にするくらい
優しく接してくれました。

この学校で説明会で、
生徒の作品をみせていただいたんですね。

驚いたのは、必ず学生女優の
ヌードシーンがあるってこと。

まだまだ習作です。
技術も演技も内容も稚拙です。
そのなかで意味もなくヌードがでてくると
びっくりしちゃいます。

人前で裸になるくらいの覚悟が無くて
女優になれるか!! って精神論が聞こえてくる。

精神論でなく、技術論だけを教えて欲しい。
そんな甘ったれた言葉は通用しなさそう。

男性芸人でネタに困ったら、
全裸になればウケる。
女性タレントで落ち目になったら、
全裸になれば注目を浴びる。
よく言われる。
ある意味最終手段。

性をテーマにした、
センセーショナルな作品を発表して、
世に問うくらいの気概があるならまだしも、
闇雲に裸になっても、そればかりが浮いてしまう。

高い授業料払って、
娘が裸を撮られて発表されてしまうのでは、
親も泣きますよ。

ただ根性を見せれば良いというものでもない。
正しい場所で正しいエネルギーを使うべき。
習作でヌードなんて10年早いっ!!

今平監督作の特徴で赤裸々な性描写は必至。
女優のヌードシーンはひとつの見せ場。

ただ今平監督作の場合、
ヌードシーンは重要な意味を持っている。
むしろ必要不可欠な効果素材。

性と生と死。生命力の象徴。

生徒の作品はなんとなく
校長の作品の表面だけを
なぞっただけにすぎないという印象。
顔色うかがい過ぎ!

ただ、当時の校風が
たまたまそうだっただけで、
今はどうかはわかりませんが……。

なんて反発してるので、
もちろんその学校は受かりませんでした。

この『黒い雨』でも、
田中好子さんのヌードシーンがあります。

入浴しているときに、
自分の髪がゴソッと抜けるんですね。
原爆症が発症したのを自覚する場面。

そこで抜けた髪をみて、
ニタアって笑うんですね。
なんとも不気味な場面。

そういった効果を踏まえての描写は、
観客の脳裏にずっと残るのです。

作品を作るのに、精神と技術、
その整合性をとる冷静な判断力は
必要不可欠なのです。


関連記事

『コジコジ』カワイイだけじゃダメですよ

漫画家のさくらももこさんが亡くなった。まだ53歳という若さだ。さくらももこさんの代表作といえ

記事を読む

no image

『パンダコパンダ』自由と孤独を越えて

子どもたちが突然観たいと言い出した宮崎駿監督の過去作品『パンダコパンダ』。ジブリアニメが好きなウチの

記事を読む

no image

男は泣き、女は勇気をもらう『ジョゼと虎と魚たち』

  この映画『ジョゼと虎と魚たち』。 公開当時、ミニシアター渋谷シネクイントに

記事を読む

no image

作者を逆感化させた『ドラゴンボールZ 復活の「F」』

  正直に言ってしまうと自分は 『ドラゴンボール』はよく知らない。 鳥山明氏の作

記事を読む

no image

『嫌われ松子の一生』道から逸れると人生終わり?

  中島哲也監督の名作である。映画公開当時、とかく中島監督と主演の中谷美紀さんとが喧

記事を読む

no image

招かざる未来に備えて『風立ちぬ』

  なんとも不安な気分にさせる映画です。 悪夢から覚めて、夢の内容は忘れても、

記事を読む

no image

『かもめ食堂』クオリティ・オブ・ライフがファンタジーにならないために

  2006年の日本映画で荻上直子監督作品『かもめ食堂』は、一時閉館する前の恵比寿ガ

記事を読む

no image

DT寅次郎がゆく『みうらじゅんのゆるゆる映画劇場 』

  雑誌『映画秘宝』に現在も連載中の記事を再編集されたもの。普通の映画評論に飽きたら

記事を読む

no image

『ツレがうつになりまして。』鬱を身近に認知させた作品

  鬱病を特別な人がなる病気ではなく、 誰をもいつなりうるか分からな事を 世間に

記事を読む

no image

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』映画監督がアイドルになるとき

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズの監督ジェームズ・ガンが、内定していたシリーズ次回作『

記事を読む

『鬼滅の刃 無限列車編』映画が日本を変えた。世界はどうみてる?

『鬼滅の刃』の存在を初めて知ったのは仕事先。同年代のお子さんが

『パラサイト 半地下の家族』国境を越えた多様性韓流エンタメ

ここのところの韓流エンターテイメントのパワーがすごい。音楽では

『ターミネーター/ニュー・フェイト』老人も闘わなければならない時代

『ターミネーター』シリーズ最新作の『ニュー・フェイト』。なんで

『家族を想うとき』頑張り屋につけ込む罠

  引退宣言をすっかり撤回して、新作をつくり続

『もののけ姫』女性が創る社会、マッドマックスとアシタカの選択

先日、『マッドマックス/怒りのデスロード』が、地上波テレビ放送

→もっと見る

PAGE TOP ↑