ダメ男というのは笑えるが、ダメ女というのはなかなか笑えない。それは世間一般の潜在意識の中に「女の人はきちんとしている。きちんとしていなければ」というような固定観念があるからではないだろうか?

山下敦弘監督と前田敦子さん主演という、『苦役列車』のコンビ再びのこの映画。なんでも当初は映画化する予定ではない映像コンテンツだったこの企画が、長編映画へとなっていったのだ。

前田敦子さんといえば元AKB48のセンターを勤めたトップアイドル。自分はこのアイドル文化や萌え文化が理解できずにいるので、とうぜんAKBにも疎い。山下敦弘監督といえば単館系映画の監督さんと言うイメージが強い。当初は硬派な作風だったけど『リンダリンダリンダ』あたりから、女の子を可愛く撮れる監督さんと言うイメージになっていった。しかも単館系というスタイルはそのままなので、アイドル映画のようなダサい感じには決してならない。この映画もトップアイドル主演にしてはひっそりと公開された。

自分は正直AKBの女の子達があんまり可愛いと思えない。とても普通っぽくて、創られた女の子像を演じて、オッサン達にヒャーヒャー言われている、発信者と受信者の偶像崇拝的なものを感じてしまって、どこにも本物が無い感じが苦手。

でも、この映画の前田敦子さんはとても魅力的。職を無くして、実家に転がり込んで、一日中マンガを読んだりゲームをしたりしてダラダラ過ごしてる。実はこういった生活感ある姿の前田敦子さんの方が、自分が彼女に抱いていたイメージそのまま。親近感が湧く。

ただ、この映画がうまくいっているのは、前田敦子さんというアイドルの虚像を演じ切ったパーソナリティだったからこそ。普通の女の子がノーメイクで寝癖のままでダラダラしていても、なんとなくそのままで笑えない。

前田敦子さんは相当の映画好きと聞きます。本来ならメジャー系のアイドル映画に引っ張りだこであろうに、こういったインディーズ系の作品にもどんどん出てしまう。AKBファンは困惑するだろうけど、自分のような映画ファンの目にも留まっていく訳だから、作品選びのセンスはいいと思います。

この映画では前田敦子さん演じるタマ子は、一年中ダラダラと何もしていないのだが、お父さんは地道に働き者。流行っていなさそうなスポーツ店を経営しながら、家事もこなす。家で出される素朴な家庭料理がとても美味しそう。働かざるもの食うべからずとは言ったものの、映画に出てくるカレーライスやゴーヤーチャンプルとか健康そうな食べ物ばかり。良い食べ物は良い心を築く。

タマ子は丸一年ダラダラしていたけれど、大きな人生の中ではこのダラダラも必要。本来彼女はしっかりしていて、ひととき父親に甘えていただけという、大きな人生の流れでは短い期間。働かないでいるのは生ける屍であるが、この映画のようにゆっくり時間が流れていくひとときは、人生に何度かは必要なのだと思う。