『マグノリアの花たち』芝居カボチャとかしましく
年末テレビの健康番組で、糖尿病の特集をしていた。糖尿病といえば、糖分の摂取を制限される病気だと思っていた。番組で紹介していたのは、糖が足りなくてなる糖尿病。
『マグノリアの花たち』でジュリア・ロバーツが演じてる役が、その難病にかかっていると聞いた。この映画は未見だった。
人が健康的に日々生活するためには、糖分を摂りすぎてもいけないし、足りないのもよくない。現代日本人は働き過ぎで、食事がどうしても不規則になる。
朝ごはんを食べて会社へ行く。昼食は昼休みに摂るから、正しい時間に食べられる。問題は昼食から夜までの食事。仕事をしていれば、残業になったりする。晩飯にありつけるのは、夜の9時以降になったりする。昼からずっと断食してるから、腹も空いてるし疲れも溜まってる。どうしても寝る間際の時間帯なのに暴飲暴食してしまう。これがすこぶる健康に良くない。
そして知らず知らずのうちに、糖尿病になっている。本人は「食べてないのにどうして?」となるが、糖分が過度に不足しているのも糖尿病なら、それもまた当たり前。
現代日本は、仕事中心の生活でなければ生きていけない。晩飯が遅いのは仕方ないから、どうしたらいいのだろう?
番組では、遅い時間の食事は軽めにして、こまめに間食することを勧めていた。要するに昼から夜にかけての、長時間におよぶ断食が、体に負担をかけてしまうのだと。
そういえば自分も数年前、健康診断の一環で、栄養士さんから食事についてアドバイスを受けたことがある。栄養士さんは、夕食は夜の8時までにすることを勧めてきた。でもいくらなんでも夜8時に晩飯を済ますのは、どう工夫しても難しい。
外食より自炊した方が健康にいいのは誰もが知っている。でも夜8時過ぎに食べる自炊飯より、早い時間に済ませる外食晩飯の方が、健康に良いのだと言う。
夜8時までの晩飯は無理だから、せめて9時までに済ませてしまおうと心がけてみた。すると1カ月もしないうちに体重が5kgも減った。もともと太っていたわけではないので不思議だった。やつれた風もない。身体が軽くなって調子がいい。食生活を改めるだけでこれほどラクになるのなら、いくらでもやりますとも!
『マグノリアの花たち』をどうして観ていなかったのかは、映画が始まってすぐに理由がわかった。この映画のあまりにも女性的な感覚が、映画公開時10代だった自分には、まったく興味がない感性だったからだ。
女三人寄れば姦(かしま)しいとはよく言ったものだ。しかもご丁寧に「かしましい」という漢字は「女」が3つ集まっている。映画はそれこそさまざまな年代の、それぞれ問題を抱えた女たちが集まって、「かしましく」お喋りしている。
冠婚葬祭の人生において重要なイベントに区切って作品は描かれている。ひとつのイベントが1幕として扱われる。イベントとイベントの間に起こった出来事は、登場人物たちの会話で補完する。原作は戯曲なのがすぐわかる。
「芝居カボチャ芋たこなんきん」と、女性が好きなものを語呂良くあげた言葉がある。確かに男で芝居を愉しむ習慣がある人は少ない。むしろ多くの男性は、映画も観なければ本も読まない。テレビドラマの客層は、そもそも女性に絞って作られている。
舞台劇は、限られた空間で演者たちが集まって、ひとつの出来事を観客とともに共有する。共感力の高い女性が芝居を好むのはよくわかる。それが女性たちのお喋りで構成された芝居なら、なおのこと支持される。観客の女性たちは、作中の登場人物たちと一緒になって、このお喋りを興じる。「いろいろあるけど、いろいろなのよ〜」って、こんな楽しいエンターテイメントはないだろう。
小1になる息子が、「お芝居って、何もないところでやるものでしょ?」と言っていた。自分は男だからかその解釈はよくわかる。実際の場所で演じる映画やドラマと違って、芝居はその場で、そこにないものを想像しながら愉しむもの。これはかなり男性的なロジカルなもののとらえ方。
クリストファー・ノーランの映画みたいに、やれ70mmがどうのIMAXがどうのと、フォーマットにこだわるのは男性的。ちまちまマニアックな理屈に深入りするのも、映画の愉しみ方のひとつ。でもあんまりオタクな世界に没入してしまうと、肝心な映画の内容に入っていけなくなって本末転倒。
よく女性からは「で、その映画おもしろいの? 内容ぜんぜんわかんないんだけど」なんて言われちゃう。映画の愉しみ方は、男と女とで大きな違いのポイントだ。
自分ととらえ方が違う人と出会ったとき、それを面白がるか、排除しようとするかで、その人の人生は変わってくる。
『マグノリアの花たち』は、公開当時の10代の自分だったらサッパリわからない映画だっただろう。でも中年になった今だからこそ、この一件無駄話ばかりのように感じるところの面白さを愉しめるようになってきた。
歳をとると、感性にも多様性が芽生えてくる。こだわりが減り、ルーズになるのだろう。もののとらえ方ひとつで人生が豊かになるのなら、多角的にものごとをみつめていくクセをつけた方がお得に決まってる。
関連記事
-
-
『ワンダー 君は太陽』親になってわかること
自分はお涙頂戴の映画は苦手だ。この『ワンダー』は、予告編からして涙を誘いそうな予感がする。原
-
-
『プライドと偏見』 あのとき君は若かった
これまでに何度も映像化されているジェーン・オースティンの小説の映画化『プライドと偏見』。以前
-
-
男は泣き、女は勇気をもらう『ジョゼと虎と魚たち』
この映画『ジョゼと虎と魚たち』。 公開当時、ミニシアター渋谷シネクイントに
-
-
『ローレライ』今なら右傾エンタメかな?
今年の夏『進撃の巨人』の実写版のメガホンもとっている特撮畑出身の樋口真嗣監督の長
-
-
『ブリジット・ジョーンズの日記』 女性が生きづらい世の中で
日本の都会でマナーが悪いワーストワンは ついこの間まではおじさんがダントツでしたが、 最
-
-
『ドライブ・マイ・カー』 綺麗な精神疾患
映画『ドライブ・マイ・カー』が、カンヌ国際映画祭やアカデミー賞で評価されているニュースは興味
-
-
『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』妄想を現実にする夢
映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』は、女性向け官能映画として話題になった
-
-
『ベルサイユのばら』ロックスターとしての自覚
「あ〜い〜、それは〜つよく〜」 自分が幼稚園に入るか入らないかの頃、宝塚歌劇団による『ベルサイユの
-
-
『チェンソーマン』 サブカル永劫回帰で見えたもの
マンガ『チェンソーマン』は、映画好きにはグッとくる内容だとは以前から聞いていた。絵柄からして
-
-
『ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘』天才と呼ばれた普通の父親たち
なんともうまいタイトルの本。本屋さんをブラブラしていたら、水木しげるさんの追悼コ