*

愛すべき頑固ジジイ『ロボジー』

公開日: : 最終更新日:2019/06/13 映画:ラ行

 

2015年のゴールデンウィーク映画で『龍三と7人の子分たち』という映画があって、ジジイ達のコメディ作品というふれこみだったので、これは面白そうだと思って観に行ったら、コメディというよりは犯罪映画で、あまりにガラが悪過ぎて引いてしまった自分。じゃあどんなジジイコメディが好みなのかと考えてみたら、案外近年作で『ロボジー』が当てはまった。しかも日本映画というところが良いじゃない。

監督は矢口史靖氏。『ウォーターボーイズ』や『スイングガールズ』など学生部活もののコメディ作が多い監督さん。もともと好きな作品が多いので、この『ロボジー』も期待大だった。

ロボット製造会社の設計士のダメダメトリオが、新型ロボットが完成の寸前で壊れてしまい、苦肉の策でロボットの中身に人に入ってもらう事にする。オーディションをしたら、腰痛持ちのおじいちゃんの動きが、たまらなくロボットに似ていたので大抜擢。そしてこのロボットに理系女子が恋をしたりする。

基本的に登場人物全員を愛情込めて描いているので、観ているうちにどんどんキャラクターが好きになってくる。朝ドラ女優の吉高由里子さんの理系女子っぷりも笑える。キレイな女優さんなのに、そうみせない監督のイジワルぶりもなかなか好み。

そしてもっとも魅力的なのはミッキー・カーチスこと五十嵐信次郎さんの『ロボジー』。このおじいさんのキャラクターが最高。
職人気質の頑固じいさんで、短気で自分勝手、でも寂しがりや。こんな愛すべきじいさん、自分の周りにもいます。きっと自分も将来こんなじいさんになることでしょう。

ロボット工学をテーマに扱っているのも、いまの日本的なイメージで面白い。
この映画のロボットは、ちっともカッコ良くなくて泥臭い。「世界に誇る日本の◯◯」とか、ギャグにしかならない自画自賛はダサいからもうやめにしましょうよ。

ロボットが今のリアルな日本に共存している姿は、こんな感じだと思う。それはそれで魅力的な日常だと思うのだけれど……。

関連記事

『落下の解剖学』 白黒つけたその後で

フランス映画の『落下の解剖学』が話題となった。一般の映画ファンも話題にしていたが、なにより海

記事を読む

『ラースと、その彼女』 心の病に真摯に向き合ったコメディ

いまや飛ぶ鳥を落とす勢いの人気者になったライアン・ゴズリング。彼の魅力は、そこはかとなく漂う

記事を読む

『LAMB ラム』 愛情ってなんだ?

なんとも不穏な映画。アイスランドの映画の日本配給も珍しい。とにかくポスタービジュアルが奇妙。

記事を読む

no image

『ロッキー』ここぞという瞬間はそう度々訪れない

『ロッキー』のジョン・G・アヴィルドセン監督が亡くなった。人生長く生きていると、かつて自分が影響を受

記事を読む

no image

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』ある意味これもゾンビ映画

『スターウォーズ』の実写初のスピンオフ作品『ローグ・ワン』。自分は『スターウォーズ』の大ファンだけど

記事を読む

『ラストナイト・イン・ソーホー』 ハイセンスなおもちゃ箱

前作『ベイビー・ドライバー』がめちゃめちゃ面白かったエドガー・ライト監督の新作『ラストナイト

記事を読む

『レクイエム・フォー・ドリーム』 めくるめく幻覚の世界

「シェシェシェのシェー」と叫びながら隣人女性に危害を加えて捕まった男がいましたね。危険ドラッ

記事を読む

no image

『るろうに剣心』マンガ原作というより、大河ドラマの続編

  自分は実は『るろうに剣心』の マンガもアニメも未見。 でもこの映画を観たいと

記事を読む

no image

『レ・ミゼラブル』ミュージカル映画って流行なの?

  今年の当り映画といえば 文句なく『アナと雪の女王』。 昨年といえば『レ・ミゼ

記事を読む

『ローガン』どーんと落ち込むスーパーヒーロー映画

映画製作時、どんな方向性でその作品を作るのか、事前に綿密に打ち合わせがされる。制作費が高けれ

記事を読む

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』 戦場のセンチメンタル

アメリカの独立系映画スタジオ・A24の作品で、同社ではかつてな

『1987、ある闘いの真実』 関係ないなんて言えないよ

2024年12月3日の夜、韓国で戒厳令が発令され、すぐさま野党

『三体(Netflix)』 神様はいるの?

Netflix版の『三体』をやっと観た。このドラマが放送開始された

『T・Pぼん』 マンスプレイニングはほどほどに

Netflixで藤子・F・不二雄原作の『T・Pぼん』がアニメ化

『ならず者(1964年)』 無国籍ギリギリ浪漫

話題のアニメ『ダンダダン』で、俳優の高倉健さんについて語ってい

→もっと見る

PAGE TOP ↑