*

『ナイトミュージアム』学びは最強の武器

公開日: : 最終更新日:2020/03/10 映画:ナ行

ベン・ステラー監督主演のコメディ映画『トロピック・サンダー』を観たら、無性に『ナイトミュージアム』が観たくなってしまった。『ナイトミュージアム』の予告編で、ベン・ステラーの驚く芝居が面白すぎて、ずっと気になっていた。

この映画が日本で公開された頃は、ちょうど自分も結婚やら第一子の誕生やらで、ゆっくり映画なんて観られる状況ではなかった。それにそんな映画が観れない時期に、『ナイトミュージアム』のような、ファミリー向け映画をわざわざ観るとも思えない。親となった今だからこそ、子どもたちと一緒に観られる作品だ。

当初は、ただ博物館の展示物が、夜な夜な動き出すだけの、CGアトラクション映画なんでしょ?って侮っていた。映画を観てみると意外や意外、知的なテーマを忍ばせた、楽しいファンタジーコメディだった。

確かに博物館の展示物って怖い。こんなところの夜警なんて、不気味すぎてイヤだな〜とは常々思っていた。だから展示物が人の目を盗んで動き出すなんて、子どもの想像力をくすぐって当然。でもそれだけじゃあ、映画としてはものたりない。『ナイトミュージアム』を観ると博物館の楽しみ方や、面白みが具体的に紹介されていく。映画鑑賞後には、博物館に行ってみたくなる。

博物館は体験型学習だ。歴史ある展示物や、それを模したオブジェが並んでいる。観覧者は必ずしも展示物に造詣があるわけではない。初めて出会うものばかりというのが正直なところ。

いろんなものを実際に目にして、感動したりショックを受けたりする。その体験はとても貴重。そしてその衝撃を受けたものの正体が一体何だったのだろうと考えてみる。考えても分からないから調べてみる。その時代や文化を想像してみること。それが学習となる。

夜な夜な博物館で大騒ぎする展示物たち。やっと掴んだ夜警の仕事を何とかしたいベン・ステラー扮する主人公ラリーは、展示物たちのことを調べ始める。おじさんが必死で勉強する姿は、観客の子どもたちには刺激になるはず。幾つになろうが、勉強することってカッコいいんだって。

大人になったら勉強しなくていいなんてことはない。むしろ人生死ぬまで勉強だ。学ぶことを楽しめなければ、人生は開拓できない。

ラリーは展示物たちについて詳しくなる。そうなると彼らが騒ぐ理由が理解できたりする。騒いでた展示物たちも、理解者が現れたことでびっくりするほどおとなしくなる。力でねじ伏せたりするのではなく、学んで理解することの方が、手早く社会をまとめることができる。

『ナイトミュージアム』は、映画に魔法がかかっているかのように楽しい。夢のような映画だ。観客にとって魔法のように感じることは、作り手からすると、工夫に工夫を重ねた技術の結集の成功だ。

『ナイトミュージアム』がこのあとシリーズ化されていくのも頷ける。でもやはり第1作目でやり尽くした感がある。これでもかとメッセージが込められている。闇雲に数を重ねると、ただ展示物が動くだけの軽いアトラクションムービーの道を歩んでいってしまうだろう。シリーズ化したからこそ、タイトルが有名になるのだけれど、オリジナルを超えるのはなかなか高いハードルだ。

なんと脇役に『アントマン』のポール・ラッドが出ていたり、昨年大ヒットした『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディ・マーキュリー役をやったラミ・マレックが何気に出演していたりする。

このゴールデンウィークの映画の旅は『ボヘミアン・ラプソディー』から見初めて、『アベンジャーズ/エンドゲーム』を映画館で観た。その余韻でロバート・ダウニーjrが観たくなり、『トロピック・サンダー』を観た。そして監督主演のベン・ステラーに興味が湧いて『ナイトミュージアム』に至った。そしたら『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレックの登場で、すっかりこの映画の旅がひとつに繋がってしまった。もうお腹いっぱいだ。

『ナイトミュージアム』は、これからも子どもたちと何度も観ていきたい映画だ。ドタバタコメディの装いをまといながら、日常での勉強の大切さを伝えている。映画のラリーのように、一見ダメ男が学問に目覚めていくというところに最大のカタルシスがある。ダメ男でも何とかなる。この映画を観て、勉強は敷居の高いものではなく楽しいものだ。役に立つものだ。そんなことを子どもたちにも感じて欲しい。

関連記事

no image

映画化までの長い道のり『のぼうの城』

  鳥取市のマスコットキャラクター 『かつ江(渇え)さん』が批判を受けて非公開にな

記事を読む

『日本のいちばん長い日(1967年)』ミイラ取りがミイラにならない大器

1967年に公開された映画『日本のいちばん長い日』。原作はノンフィクション。戦後20年以上経

記事を読む

『NOPE ノープ』 正しく怖がる勇気

『NOPE』が面白いと、自分のSNSがこの作品の映画公開当時騒ぎになっていた。評判がいい。そ

記事を読む

『ノマドランド』 求ム 深入りしない人間関係

アメリカ映画『ノマドランド』が、第93回アカデミー賞を受賞した。日本では3月からこの映画は公

記事を読む

『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』 変遷するヒーロー像

コロナ禍の影響で、劇場公開の延期を何度も重ね、当初の公開日から1年半遅れて公開された007シ

記事を読む

『ニュー・シネマ・パラダイス』 昨日のこと明日のこと

『ニュー・シネマ・パラダイス』を初めて観たのは、自分がまだ10代の頃。当時開館したばかりのシ

記事を読む

no image

『野火』人が人でなくなるところ

塚本晋也監督の『野火』。自分の周りではとても評判が良く、自分も観たいと思いながらなかなか観れずにいた

記事を読む

『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類! 新春スペシャル!!』 結束のチーム夫婦も前途多難⁉︎

2016年に人気だった『逃げるは恥だが役に立つ』、通称『逃げ恥』の続編スペシャル版。なんとな

記事を読む

『日本沈没(1973年)』 そして第2部が始まる

ゴールデンウィークの真っ只中、twitterのトレンドワードに『日本沈没』があがった。NHK

記事を読む

『なつぞら』自分の人生とは関係ないドラマのはずだったのに……

「アニメーターってなによ?」7歳になる息子が、NHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』の番宣での

記事を読む

『ウェンズデー』  モノトーンの10代

気になっていたNetflixのドラマシリーズ『ウェンズデー』を

『坂の上の雲』 明治時代から昭和を読み解く

NHKドラマ『坂の上の雲』の再放送が始まった。海外のドラマだと

『ビートルジュース』 ゴシック少女リーパー(R(L)eaper)!

『ビートルジュース』の続編新作が36年ぶりに制作された。正直自

『ボーはおそれている』 被害者意識の加害者

なんじゃこりゃ、と鑑賞後になるトンデモ映画。前作『ミッドサマー

『夜明けのすべて』 嫌な奴の理由

三宅唱監督の『夜明けのすべて』が、自分のSNSのTLでよく話題

→もっと見る

PAGE TOP ↑