*

部外者が描いたからこそ作品になれた『リトル・ブッダ』

公開日: : 最終更新日:2019/06/14 映画:ラ行, 音楽

 

4月8日は花祭りの日。
ブッダが生まれた日としてお祝いする日だそうで。

映画『リトル・ブッダ』。
タイトルに「リトル」とついているので、
公開当時「冒涜だ」と騒いでいる
ところがありました。
今で言う炎上と言ったところ。
ただ映画のふたを開けてみると、
ここまできちんと仏教を映像化できている
作品はあまりないのでは?
とさえ感じるほど丁寧な映画。

監督はベルナルド・ベルトルッチ。
『ラスト・エンペラー』からのオリエンタル三部作の
最終作がこの『リトル・ブッダ』。
この三部作はスタッフがほとんど同じ。

音楽を担当した坂本龍一氏が、
毎回ベルトルッチのダメだしに悩まされていたと
昨年のライブで語ってました。
この『リトル・ブッダ』は10回近く書き直したとの事。

当初ベルトルッチからの注文は
「悲しい曲を書いてくれ」とのこと。
3回4回と書いて、手応えのある曲がかけたとき、
「ダメだよこの曲、悲しすぎる。希望がなければ」
って監督から言われたらしい。
希望が欲しいなんて聞いてなかったよって。

晴れてOKがおりた曲は、
作品のエンドタイトルにかかって、
サンスクリット語の般若心経が歌詞にのっている。
ボツ曲は坂本氏自身のアルバムに
『SWEET REVENGE』という
タイトル変更で発表している。

この映画、輪廻転生をテーマに、
ファンタジックに描かれている。
とにかくチベットの描写がカッコいい!!

ベルトルッチはイタリア人。
『ラスト・エンペラー』でアジアに心酔して、
仏教ってカッコよくね? と感じた
そのままを映像化したのでしょう。

もしこれが熱心な仏教徒が映画を作ったなら、
こんなにクールなアプローチで
映画は作れなかったと思う。

若きブッダをキアヌ・リーブスが演じてる。
後の『マトリックス』の芝居を彷彿とさせる。

この映画自体はさほど話題にもならなかったけれど、
撮影もヴィットリオ・ストラーロだったりと、
これでもかというくらいスタッフが豪華。

ストラーロはチベットとブッダの修行を暖色で、
現代のシアトルを寒色で撮影している。
これも『ラスト・エンペラー』と同じ手法。

日本でも、超有名漫画家原作の
ブッダものアニメ映画が作られているけれど、
内容的にも興行的にも
かなり苦戦しているようですしね。

なんにせよ、宗教色が強い作品は
どんなに見やすくても、
なかなか一般ウケはしずらい
ジャンルなのでしょうね。

関連記事

no image

『6才のボクが、大人になるまで。』育児の恐れを緩和させる映画的時間旅行

  『6才のボクが、大人になるまで。』と、邦題そのままの映画。6才の少年が18才にな

記事を読む

no image

『マイティ・ソー バトルロイヤル』儲け主義時代を楽しむには?

ポップコーン・ムービーの王道、今ノリにノってるディズニー・マーベルの人気キャラクター・ソーの最新作『

記事を読む

『RRR』 歴史的伝統芸能、爆誕!

ちょっと前に話題になったインド映画『RRR』をやっと観た。噂どおり凄かった。S・S・ラージャ

記事を読む

『Ryuichi Sakamoto | Playing the Orchestra 2014』 坂本龍一、アーティストがコンテンツになるとき

今年の正月は坂本龍一ざんまいだった。1月2日には、そのとき東京都現代美術館で開催されていた『

記事を読む

no image

『フラガール』生きるための仕事

  史実に基づいた作品。町おこしのために常磐ハワイアンセンターを設立せんとする側、新

記事を読む

no image

『トロールズ』これって文化的鎖国の始まり?

  配信チャンネルの目玉コーナーから、うちの子どもたちが『トロールズ』を選んできた。

記事を読む

『アメリカン・ユートピア』 歩んできた道は間違いじゃなかった

トーキング・ヘッズのライブ映画『ストップ・メイキング・センス』を初めて観たのは、自分がまだ高

記事を読む

no image

アーティストは「神」じゃない。あなたと同じ「人間」。

  ちょっとした現代の「偶像崇拝」について。 と言っても宗教の話ではありません。

記事を読む

『アデル、ブルーは熱い色』 心の声を聴いてみる

2013年のカンヌ国際映画祭で最優秀賞パルムドールを受賞したフランス映画『アデル、ブルーは熱

記事を読む

『アーロと少年』 過酷な現実をみせつけられて

く、暗いゾ。笑いの要素がほとんどない……。 日本のポスタービジュアルが、アーロと少年ス

記事を読む

『教皇選挙』 わけがわからなくなってわかるもの

映画『教皇選挙』が日本でもヒットしていると、この映画が公開時に

『たかが世界の終わり』 さらに新しい恐るべき子ども

グザヴィエ・ドラン監督の名前は、よくクリエーターの中で名前が出

『動くな、死ね、甦れ!』 過去の自分と旅をする

ずっと知り合いから勧められていたロシア映画『動くな、死ね、甦れ

『チェンソーマン レゼ編』 いつしかマトモに惹かされて

〈本ブログはネタバレを含みます〉 アニメ版の『チ

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』 普通に生きるという特殊能力

リチャード・カーティス監督の『アバウト・タイム』は、ときどき話

→もっと見る

PAGE TOP ↑