部外者が描いたからこそ作品になれた『リトル・ブッダ』
4月8日は花祭りの日。
ブッダが生まれた日としてお祝いする日だそうで。
映画『リトル・ブッダ』。
タイトルに「リトル」とついているので、
公開当時「冒涜だ」と騒いでいる
ところがありました。
今で言う炎上と言ったところ。
ただ映画のふたを開けてみると、
ここまできちんと仏教を映像化できている
作品はあまりないのでは?
とさえ感じるほど丁寧な映画。
監督はベルナルド・ベルトルッチ。
『ラスト・エンペラー』からのオリエンタル三部作の
最終作がこの『リトル・ブッダ』。
この三部作はスタッフがほとんど同じ。
音楽を担当した坂本龍一氏が、
毎回ベルトルッチのダメだしに悩まされていたと
昨年のライブで語ってました。
この『リトル・ブッダ』は10回近く書き直したとの事。
当初ベルトルッチからの注文は
「悲しい曲を書いてくれ」とのこと。
3回4回と書いて、手応えのある曲がかけたとき、
「ダメだよこの曲、悲しすぎる。希望がなければ」
って監督から言われたらしい。
希望が欲しいなんて聞いてなかったよって。
晴れてOKがおりた曲は、
作品のエンドタイトルにかかって、
サンスクリット語の般若心経が歌詞にのっている。
ボツ曲は坂本氏自身のアルバムに
『SWEET REVENGE』という
タイトル変更で発表している。
この映画、輪廻転生をテーマに、
ファンタジックに描かれている。
とにかくチベットの描写がカッコいい!!
ベルトルッチはイタリア人。
『ラスト・エンペラー』でアジアに心酔して、
仏教ってカッコよくね? と感じた
そのままを映像化したのでしょう。
もしこれが熱心な仏教徒が映画を作ったなら、
こんなにクールなアプローチで
映画は作れなかったと思う。
若きブッダをキアヌ・リーブスが演じてる。
後の『マトリックス』の芝居を彷彿とさせる。
この映画自体はさほど話題にもならなかったけれど、
撮影もヴィットリオ・ストラーロだったりと、
これでもかというくらいスタッフが豪華。
ストラーロはチベットとブッダの修行を暖色で、
現代のシアトルを寒色で撮影している。
これも『ラスト・エンペラー』と同じ手法。
日本でも、超有名漫画家原作の
ブッダものアニメ映画が作られているけれど、
内容的にも興行的にも
かなり苦戦しているようですしね。
なんにせよ、宗教色が強い作品は
どんなに見やすくても、
なかなか一般ウケはしずらい
ジャンルなのでしょうね。
関連記事
-
-
『スター・トレック BEYOND』すっかりポップになったリブートシリーズ
オリジナルの『スター・トレック』映画版をやっていた頃、自分はまだ小学生。「なんだか単純そうな話なのに
-
-
『ゴッドファーザー 最終章』 虚構と現実のファミリービジネス
昨年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の脚本家・三谷幸喜さんが、今回の大河ドラマ執筆にあた
-
-
『きみの色』 それぞれの神さま
山田尚子監督の新作アニメ映画『きみの色』。自分は山田尚子監督の前作にあたるアニメシリーズ『平
-
-
『ロボット・ドリームズ』 幸せは執着を越えて
『ロボット・ドリームズ』というアニメがSNSで評判だった。フランスとスペインの合作でアメリカ
-
-
『ベイビー・ブローカー』 内面から溢れ出るもの
是枝裕和監督が韓国で撮った『ベイビー・ブローカー』を観た。是枝裕和監督のような国際的評価の高
-
-
『汚れた血』 カノジョをキレイに撮る映画
『あの人は今?』的存在になってしまったレオス・カラックス監督。2年前に新作『ホーリー・モー
-
-
『グラディエーター』 Are You Not Entertained?
当たり外れの激しいリドリー・スコット監督の作品。この『グラディエーター』はファーストショット
-
-
『勝手にふるえてろ』平成最後の腐女子のすゝめ
自分はすっかり今の日本映画を観なくなってしまった。べつに洋画でなければ映画ではないとスカして
-
-
『TENET テネット』 テクノのライブみたいな映画。所謂メタドラえもん!
ストーリーはさっぱり理解できないんだけど、カッコいいからいい! クリストファー・ノーランの新
-
-
『ジャングル大帝』受け継がれる精神 〜冨田勲さんを偲んで
作曲家の冨田勲さんが亡くなられた。今年は音楽関係の大御所が立て続けに亡くなってい
