*

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』ある意味これもゾンビ映画

公開日: : 最終更新日:2019/06/11 アニメ, 映画:サ行, 映画:ラ行, 音楽

『スターウォーズ』の実写初のスピンオフ作品『ローグ・ワン』。自分は『スターウォーズ』の大ファンだけど、アニメ版のスピンオフシリーズにはついていけずにいた。スピンオフ作品は基本的に、熱烈なファンに向けてつくられるので、どうしても単体の作品としては成立しない。これは『スターウォーズ』に限らずどんな作品でも同じ。日本のアニメの人気作のスピンオフ作品のなんて多いことか。スピンオフ作品は、少ない客から多くを巻き上げる印象がある。

でもこの『ローグ・ワン』は、アメリカの試写会の段階から評判が良く、日本で公開しても周囲から好評の声が聞こえてきた。

『ローグ・ワン』は、『スターウォーズ』シリーズの第1作『エピソード4/新たなる希望』の直前の話。悪の帝国軍が作った圧倒的な破壊力を持つ惑星兵器・デススターの弱点が記された設計図を奪い取るという、わかりやすいプロット。『エピソード4』での作戦会議の場面で、「この設計図奪還作戦で同胞に多大な犠牲をはらった」というセリフがあったのを、古くからのファンは知っている。こりゃ悲劇の予感しかしない。「なんだかイヤな予感がする」

監督はギャレス・エドワーズ。ハリウッド版の『ゴジラ』の監督さん。東宝のゴジラプロットの鉄則に従って、上映40分以降までゴジラを登場させずにひっぱった。人間ドラマなんて苦手な監督なので、ゴジラが出てくるまで、本当に退屈だった。またその二の舞を踏むのか? どんなに好評でも自分には地雷臭しかしない。それでも結局自分も観てしまうファン心理の悲しさ。

確かに今の映像技術で40年前の第1作の世界観を再現してくれたのは見もの。物語上の歴史は変えられないし、それゆえギミックの斬新なデザインも制限がある。『スターウォーズ』本シリーズも暗く重い要素はあったけど、カッコイイメカや主人公の将来が気になるワクワク感があった。『ローグ・ワン』はムチャな作戦に挑む破滅の美学。

中国系キャストが多いのが、中国経済を意識してるイヤラシサを感じるけど、キャラクターがカッコイイからまあ許しちゃおう。

この映画での映像技術は革新的。『エピソード4』の頃の故人となった役者さんが、その時の姿のまま、今の役者さんと共演してる。CGキャラクターといえば、クリーチャー主流だったのを、故人を甦らしたり若返らせたりするほうへ持っていった。かつてからの続投の役者が、経年によりいい感じにつじつまが合うルックスになっていたりして出演もしてる。こうなるともう誰がCGなのか判別不能。

今回の劇伴はジョン・ウィリアムズではなく、マイケル・ジアッチーノ。『カールじいさんの空飛ぶ家』担当の作曲家。ジアッチーノの旋律の節々は、あたかもジョン・ウィリアムズ本人の作曲かと思うほどの完コピぶり。過去作品から違和感はない。

先日、レイア姫を演じているキャリー・フィッシャーが亡くなった。新シリーズが始まったばかりなので、かなりショックだった。完結まで10年近くかかる『スターウォーズ』シリーズのようなビッグプロジェクトで、高齢のスタッフキャストを起用するからには、途中で何か起こる可能性はありうること。残酷だけど代案も念頭から想定しているだろう。キャリー・フィッシャーのレイアの撮影は『エピソード8』まで完了しているらしいが、脚本の段階から手直しするだろう。

今後、この『ローグ・ワン』のように、不在の俳優をCG代役で補うこともあるだろう。でもなんだか倫理的にどうなんだろ? 技術的に可能だからと、なんでもやっていいのかな? そのうちファンによるおかしな同人映画が作られそう。

奇しくも日本では『バイオハザード』の完結編と『ローグ・ワン』の上映時期が重なった。向こうがゾンビと戦う映画なら、こちらは映像技術で死者を蘇らせてしまったリアル・ゾンビ映画。

監督のギャレス・エドワーズも音楽のマイケル・ジアッチーノも、自分と同じ40代。まさに物ごころがつき始めた子どもの頃に『スターウォーズ』に出会ってる。幼少時に『スターウォーズ』に出会ったからこそ、映画の道を選んだのかも知れない。ここでハッキリ世代交代の準備がなされた。

『スターウォーズ』といえば、ジョージ・ルーカス監督の夢の結集。いちオタク監督が、どうやったら観客をおどかすことができるか、喜ばせられるか、試行錯誤しながら作った作品。個人が努力して成功していくさまは、側から見ていても楽しいもの。いま『スターウォーズ』はルーカスの手を離れて、個人の作品ではなく、ディズニーという大企業のビッグ・ビジネス・プロジェクトと化した。残念ながら漠然と企業が潤うだけの企画にロマンは感じない。

ディズニーはこれから毎年『スターウォーズ』の新作を発表するらしい。もうお祭り騒ぎ。パッケージされた量産型作品群が、本シリーズの魅力を削がなければいいが……。

技術はやがて時代が追いつき追い越すもの。その追求には実はそれほど意味がない。ただ目的や手段として生まれた技術は、時代を越えて観客に感動をもたらす。技術映画でもウェルメイドになりうる魅力。貧しくとも高い志のある映画は自分は好きだ。

果たして我らのスターウォーズはこれからどこへ向かうのか? いちファンとして、大いに気になる次第です。

関連記事

no image

『リアリティのダンス』ホドロフスキーとトラウマ

アレハンドロ・ホドロフスキーの23年ぶりの新作『リアリティのダンス』。ホドロフスキーと言えば、70年

記事を読む

『未来少年コナン』厄介な仕事の秘密

NHKのアニメ『未来少年コナン』は、自分がまだ小さい時リアルタイムで観ていた。なんでもNHK

記事を読む

『ゲゲゲの女房』本当に怖いマンガとは?

水木しげるさんの奥さんである武良布枝さんの自伝エッセイ『ゲゲゲの女房』。NHKの朝ドラでも有

記事を読む

no image

『クラッシャージョウ』ガラパゴス前夜にて

  アニメ映画『クラッシャージョウ』。1983年の作品で、公開当時は自分は小学生だっ

記事を読む

no image

ホントは怖い『墓場鬼太郎』

  2010年のNHK朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』で 水木しげる氏の世界観も

記事を読む

no image

マイケル・ジャクソン、ポップスターの孤独『スリラー』

  去る6月25日はキング・オブ・ポップことマイケル・ジャクソンの命日でした。早いこ

記事を読む

『時効警察はじめました』むかし切れ者という生き方

『時効警察』が12年ぶりの新シリーズが始まった。今期の日本の連続ドラマは、10年以上前の続編

記事を読む

『RAW 少女のめざめ』それは有害か無害か? 抑圧の行方

映画鑑賞中に失神者がでたと、煽るキャッチコピーのホラー映画『RAW』。なんだか怖いけど興味を

記事を読む

no image

ブライト・ノアにみる大人のあり方『機動戦士ガンダム』

  『機動戦士ガンダム』は派生作品があまりに多過ぎて、 TSUTAYAでは1コーナ

記事を読む

no image

日本企業がハリウッドに参入!?『怪盗グルーのミニオン危機一発』

  『怪盗グルー』シリーズは子ども向けでありながら大人も充分に楽しめるアニメ映画。ア

記事を読む

『ミッドナイト・イン・パリ』隣の芝生、やっぱり気になる?

ウッディ・アレン監督が2011年に発表した『ミッドナイト・イン

『1917 命をかけた伝令』戦争映画は平和だからこそ観れる

コロナ禍の影響で『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開が当

『インセプション』自分が頭が良くなった錯覚に堕ちいる映画

クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』。公開当時、映

『ホドロフスキーのDUNE』伝説の穴

アレハンドロ・ホドロフスキー監督がSF小説の『DUNE 砂の惑

『TENET テネット』テクノのライブみたいな映画。所謂メタドラえもん!

ストーリーはさっぱり理解できないんだけど、カッコいいからいい!

→もっと見る

PAGE TOP ↑