*

『レザボア・ドッグス』 せっかちさんはチャンスをつかむ?

公開日: : 最終更新日:2021/10/21 映画:ラ行

新作準備の『ザ・ヘイトフル・エイト』
の脚本流出で制作中止を発表し、
先日それを撤回した
クエンティン・タランティーノ監督。

マニアックなオタクは、研究者に近いので、
なかなかクリエイティブな方向で
開花することは稀なのです。

このタランティーノ監督は例外でしょう。

彼の映画やサブカルチャーに対する愛は深い。
知り尽くしているが故に、
目利きになっているといっていい。

この『レザボア・ドッグス』は最初、
監督本人が主演で自主映画として
作られていたそうです。

それが俳優のハーベイ・カイテルの目にとまり、
プロの役者でリメイクされたのが本作。

ちゃんと劇場にのる映画になると決まった
若きタランティーノは、早く映画をカタチしたくて
イライラしていたそうです。

制作費が集まらないなら、
16ミリでも撮ってやるという意気込み。

ハーベイ・カイテルが
「金なら集めてやるから、
ちゃんと35ミリで撮らなきゃダメだ」
と説得したらしいです。

そしてハーベイが本作の脚本を
紹介したらすぐ人もお金も集まったと聞きます。

「オレの映画の制作費はB級だが、脚本は超A級だぜ!」

タランティーノの言葉。
まったくその通り。

チンピラの世界を描いていながら、
文学的な構成で、
バイオレンス映画なのにも
関わらず知的な趣の彼の作品。

音楽の選択など素材集めのセンス良い。
オシャレ。

彼の名はハリウッドで噂となり、
新作の脚本ができると、
有名な役者がギャラに関わらず
出演したいとラブコールが来るほどに。

これならいけると、
後続する世界中の自主制作映画が
このスタイルをマネした。

でも、ただカタチだけマネしたって仕方がない。

当時のタランティーノ、
自分の才能に手応えを感じていたのでしょう。
それが思い込みでないところも冷静。

この機を逃さないぞという意気込みと、
行動力はもの凄かったと想像できます。

チャンスと才能と努力が重なったとき、
もの凄いパワーが炸裂して動き出す。

こんな奇跡的瞬間は、じつは偶然ではなく、
地道な努力あってのことだと思います。

関連記事

no image

『ローレライ』今なら右傾エンタメかな?

  今年の夏『進撃の巨人』の実写版のメガホンもとっている特撮畑出身の樋口真嗣監督の長

記事を読む

『リアリティのダンス』ホドロフスキーとトラウマ

アレハンドロ・ホドロフスキーの23年ぶりの新作『リアリティのダンス』。ホドロフスキーと言えば

記事を読む

no image

『リング』呪いのフォーマットは変われども

『リング』や『呪怨』を作った映画制作会社オズが破産したそうです。 そういえば幼稚園頃の娘が「さ

記事を読む

no image

『ラストサムライ』渡辺謙の作品選び

  トム・クルーズ主演の日本を舞台にした時代物ハリウッド映画『ラストサムライ』。渡辺

記事を読む

『Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022 +(プラス)』 推しは推せるときに推せ!

  新宿に『東急歌舞伎町タワー』という新しい商業施設ができた。そこに東急系の

記事を読む

no image

『ロッキー』ここぞという瞬間はそう度々訪れない

『ロッキー』のジョン・G・アヴィルドセン監督が亡くなった。人生長く生きていると、かつて自分が影響を受

記事を読む

『Love Letter』 ヨーロッパ映画風日本映画

岩井俊二監督の『Love Letter』。 この映画をリアルタイムで観たときに 「やられ

記事を読む

『龍の歯医者』 坂の上のエヴァ

コロナ禍緊急事態宣言中、ゴールデンウィーク中の昼間、NHK総合でアニメ『龍の歯医者』が放送さ

記事を読む

『LAMB ラム』 愛情ってなんだ?

なんとも不穏な映画。アイスランドの映画の日本配給も珍しい。とにかくポスタービジュアルが奇妙。

記事を読む

『ラストエンペラー』 中学生、映画で近代史に興味がわく

イタリアのベルナルド・ベルトルッチ監督の『ラストエンペラー』。西洋人が描く東洋の歴史。この映

記事を読む

『アメリカン・フィクション』 高尚に生きたいだけなのに

日本では劇場公開されず、いきなりアマプラ配信となった『アメリカ

『不適切にもほどがある!』 断罪しちゃダメですか?

クドカンこと宮藤官九郎さん脚本によるドラマ『不適切にもほどがあ

『デューン 砂の惑星 PART2』 お山の大将になりたい!

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ティモシー・シャラメ主演の『デューン

『マーベルズ』 エンタメ映画のこれから

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の最新作『マーベ

『髪結いの亭主』 夢の時間、行間の現実

映画『髪結いの亭主』が日本で公開されたのは1991年。渋谷の道

→もっと見る

PAGE TOP ↑