『時効警察はじめました』むかし切れ者という生き方

『時効警察』が12年ぶりの新シリーズが始まった。今期の日本の連続ドラマは、10年以上前の続編が多い。他には『結婚できない男』まで新シリーズも13年ぶりの続編がある。放送局は別だけど、これは偶然じゃない。それくらい新しいネタに限界が来ているのかもしれない。
12年前どんなだったかふと考えてみる。自分は結婚した年だ。12年なんてあっという間だったけど、いざ振り返ってみるといろんなことがあった。そりゃあ加齢だけでなく、苦労で老けてくるのも仕方がない。
『時効警察』のファーストシーズンが放送されているころは、自分はまだ仕事をしながらシナリオ作家養成学校に通っていた。そこのクラスメイトに「おもしろいドラマがあるよ」と教えてもらったと思う。だから1話から観ずに、途中からの参戦だった。気に入ってあとからレンタルで最初から観直した。
『時効警察』というタイトルから、なんだかSFものみたいな印象を受けた。観てみると、サブカル臭漂う、ユルユルのコメディじゃないか。三木聡監督の作品を遡ってぜんぶ観たものだ。
他のゲストの作家陣も豪華で、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんや、京都アニメ作品で有名な吉田玲子さんも名を連ねている。今期の『時効警察はじめました』でも、最近のりにのってる福田雄一監督も参加している。もう、サブカル好きのツボをよくご存知。
この12年間で法律も変わり、凶悪犯罪は時効がなくなった。それでも『時効警察はじめました』。そこがユルユルなのだ。それがいい。
今回から新メンバーに吉岡里帆さんが参戦してる。彼女はNHKのウッチャンのコント番組『LIFE』にゲスト出演していたときに、あまりにコメディセンスが高かったので、気になっていた。
テレビに出る人でかわいい人は山ほどいるけど、コメディセンスがある人はそうそういない。山田洋次監督が「作品で人を泣かせるなはたやすいけれど、笑わせるのはひじょうに難しい」と言っていたっけ。ウッディ・アレンも言ってたかな? まったく御意です。
だから笑いのセンスが高い役者さんは、自分にとっては名優だと評価してしまう。笑いのツボを理解してる役者さんには、どうしても期待してしまう。
しかしこのドラマのファーストシーズンのころには、吉岡里帆さんは中学生くらいだと思うと、時の流れが恐ろしい。
そしてまた、果たして12年後の自分はいったいどうなっているだろうか? 存命で元気だったら、もう老後のことを考えはじめてるだろう。
『時効警察』はオダギリジョーさん演じる桐山修一郎が、時効になった事件を「趣味で」解決していく一本完結の連続ドラマ。趣味というところがポイント。「そんな大変なことに打ち込む余裕があるんだ?」とか、「みんないつも遊んでるじゃん」って、ツッコミどころがいっぱい。なにげに、公務員批判かと邪推してしまう。
ドラマは一応推理モノのスタイルなんだけど、みどころはそこじゃない。随所随所の小ネタが楽しくて仕方がない。霧山くんが、事件の捜査に奔走する場面より、「時効管理課」というホントに必要ない課で、うだうだ同僚たちが、どうでもいい世間話をしている場面がいちばんおもしろい。
時効管理課は、基本的に業務がないみたいだから、みんなサロンに集まっているようなリラックス感。だから他の課の人たちも、くだらない話をしようと集まってくる。(しかも演出は激しいカット割りで、勢いがある。)
社会全体のブラック化で、仕事中に人間らしくリラックスするなんて、もってのほかとなってしまった現代社会には、とてもうらやましい職場風景にみえてしまう。
岩松了さんが演じる、時効管理課課長の熊本さんがいい。ずっとふざけた態度のおじさんだが、なんでも昔は切れ者刑事だったとか。
組織において、切れ者って結構厄介がられる。物事の本質をすぐに見抜いてしまうので、誰かにとって不都合なこともバレてしまう。古い体質の組織ならなおのこと。切れ者を上手に使える組織なら、きっと伸びていくだろうけど、そうそう世の中変化を好まない。だからうだつの上がらない時効管理課で、部下たちと日々ふざけてる熊本さんの存在はとてもリアル。
物事の道理が見え過ぎて困ることが時としてあるものだ。でもそれを力説したところで、かえって自分の立場を悪くすることもある。
こりゃあ言っても伝わらないなと感じたら、熊本さんのように、ひょうひょうと素知らぬふりをしているのも生きる処世術。
わかってもらえなくとも、それでいい。
マウンティングはびこる世の中で、負けるが勝ちと開き直って忘れちゃうのも、大事なことだと常々思う今日この頃です。
関連記事
-
-
『ツイン・ピークス』 あの現象はなんだったの?
アメリカのテレビドラマ『ツイン・ピークス』が 25年ぶりに続編がつくられるそうです。
-
-
『反社会学講座』萌えアニメも日本を救う!?
まじめなことにユーモアをもって切り込んでいくのは大切なことだ。パオロ・マッツァリ
-
-
『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』ディズニー帝国の逆襲
自分は『スター・ウォーズ』が大好きだ。小学1年のとき、アメリカで『スター・ウォーズ』という得
-
-
『大長編 タローマン 万博大爆発』 脳がバグる本気の厨二病悪夢
『タローマン』の映画を観に行ってしまった。そもそも『タローマン』とはなんぞやとなる。2022
-
-
『SAND LAND』 自分がやりたいことと世が求めるもの
漫画家の鳥山明さんが亡くなった。この数年、自分が子どものころに影響を受けた表現者たちが、相次
-
-
『ゼロ・グラビティ』3D技術があっての企画
3D映画が『アバター』以来すっかり浸透した。 自分も最初の頃は3Dで作られた映
-
-
『グッド・ドクター』明るい未来は、多様性を受け入れること
コロナ禍において、あらゆる産業がストップした。エンターテイメント業界はいちばん最初に被害を受
-
-
『はだしのゲン』残酷だから隠せばいいの?
明日8月6日は広島の原爆の日ということで、『はだしのゲン』ドラマ版の話。
-
-
『七人の侍』 最後に勝つのは世論
去る9月6日は黒澤明監督の命日ということで。 映画『七人の侍』を観たのは自分が10代の
-
-
自国の暗部もエンタメにする『ゼロ・ダーク・サーティ』
アメリカのビン・ラディン暗殺の様子を スリリングに描いたリアリスティック作品。
