*

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』ディズニー帝国の逆襲

公開日: : 最終更新日:2020/03/13 映画:サ行, 映画:ハ行, 映画館

自分は『スター・ウォーズ』が大好きだ。小学1年のとき、アメリカで『スター・ウォーズ』という得体の知れないSF映画が公開されていると知り、そのビジュアルに心弾かされた。当時の日本での劇場公開作品は、すべてオリジナル音声の字幕スーパー版。自分の家は片田舎にあり、映画館は近所にはない。映画といえばせいぜい市民ホールに巡回してくるアニメ映画をやっとこさ観るくらいだった。自分にはオリジナル英語音声の洋画鑑賞なんてハードル高すぎるシロモノだった。

あれから40年以上経ち、『スター・ウォーズ』も本シリーズ8作品と、スピンオフ2作品の長編映画が作られた。スピンオフのアニメ作品は多過ぎて自分には把握できない。いよいよ今年、本シリーズも次の9作目で完結する。初期6部作のジョージ・ルーカスの手から離れ、ディズニー傘下での『スター・ウォーズ』展開も、今年で一区切りつきそうだ。

自分は『スター・ウォーズ』に限らず、スピンオフ企画というものはあまり好きではない。オリジナルの作品を知らなければわからないような作品が多いし、サイドストーリーを観たくなるほど一つの作品に入れ込むことはまずない。たとえ『スター・ウォーズ』みたいに、小さな時から慣れ親しんでいる作品でも、わざわざ番外編まで観たいとは思わない。淡白に広く浅く様々な作品が観たい。

ディズニー・スターウォーズのスピンオフ前作『ローグ・ワン』も、自分はピンとこなかった。世間では「本シリーズより面白い」という声もあったが、自分はスターウォーズシリーズで初めて睡魔と戦った作品だった。だからこのスピンオフ第二弾『ハン・ソロ』にも全く期待などしていなかった。

映画『ハン・ソロ』は、製作時も監督やスタッフが交代したり、なかなか難航していた様子。結局安全パイの名匠ロン・ハワードが監督してカタチになった。それでも海外からのニュースでは、シリーズ最低の客入りという前情報ばかりが入って来た。自分も、マニアックなつくりのスピンオフものにはすっかり辟易していた。

この映画が日本公開になって、周囲からの感想はそれほど悪いものではなかった。結構スターウォーズ好きの友人たちも、「事前の評判よりは悪くはないよ」というものばかり。それならいつかは自分も観てみようと思った。

でもやっぱりジェダイが登場しないスターウォーズは、ちっとも胸踊らない。スターウォーズの英才教育をきちんと仕込んだはずのウチの子たちも、『ハン・ソロ』には食いつかない。そうか、スターウォーズ・ブランドなのを一旦忘れて、ウエスタン風アメコミSFものとして割り切って観ればいいんだ。スピンオフはスピンオフ。本筋には影響ない。

さすがエンターテイメントを熟知したロン・ハワード。手堅く楽しい作品に仕上がっているけど、短期間で作った煮込み足りなさは否めない。しかし何を急いで作品を量産する? ディズニーは商魂をあらわにし過ぎている。

この『ハン・ソロ』の興行的大失敗はディズニーもさすがに痛手だったらしい。とりあえず今後の同シリーズのスピンオフ作品は足止めになったらしい。ボバ・フェットやオビ=ワンの主人公の作品も企画があったらしい。『ハン・ソロ』の悲しさは、色々とストーリーに謎を残していて、次回作を作る気満々だったところ。今後のシリーズの伏線になるはずだったであろう謎は、謎のまま終わってしまうのだろうか?

ディズニー・スターウォーズの本シリーズ第二弾『最後のジェダイ』は、賛否両論に割れた。旧シリーズからのオールド・ファンは、この作品をこき下ろした。反面、この最新三部作からの若い客層からは、かなりの支持を受けた。自分はオールド・ファンに属するが、この『最後のジェダイ』は大好きだ。いい意味で今までのシリーズのパターンをぶち壊してくれた。先が読めないので、純粋にワクワクする。

2019年のディズニー映画のラインナップは凄まじい。ほとんど毎月新作をリリースする。スターウォーズの本シリーズ完結編だけじゃない。マーベルの『アベンジャーズ』も、完結ではないにせよ、流れに一区切りつけるという。ただ今年のディズニー映画のラインナップは、どれもリメイクや続編ばかり。完全な新作がないのが特徴。もう年内でディズニー映画は店じまいしてしまうのではないかという勢いだ。果たして全作網羅する熱烈ファンの猛者はいるのだろうか?

人気シリーズの関連作品をバンバン量産する。観客が喜ぶならそれもいい。だけどあまりにゴリ押しが過ぎて、飽きてしまうのでは、下品な押し売りだ。スターウォーズも更なる新三部作を予定しているらしい。フォローするのもめんどくさくなってしまう。

自分にとってスターウォーズは大好きな映画。作品にまつわる人生の思い出もたくさんある。このスターウォーズにしろアベンジャーズにしろ、企業が儲けることばかりを気にして、新作をジャンジャカ作って、作品の価値を低下されるのはのはとてもイヤだ。I have a bad feeling about this!

どうかどの作品も惜しまれつつ有終の美を飾って欲しい。数年後に「スターウォーズとアベンジャーズって、まだやってたの?」なんて言いたくない。楽しい映画は大好きだけれど、一度その作品を飽きてしまうと、その作品へのすべての思いが色褪せてしまう。これが今のハリウッドをはじめとする映画業界のビジネス・スタイルなのかもしれないが、実のところファンの気持ちを踏みにじりかねない。最近のハリウッドは、セクハラ問題とかも露呈されたりしているし、なかなか黒い部分が目についてくる。

嗚呼、エンターテイメントの夢の魔法はいずこへ?

関連記事

『プリキュアシリーズ』 女児たちが憧れる厨二

この『プリキュアシリーズ』 今年は10周年との事。 ウチの幼稚園の娘も大好きで、 何度

記事を読む

『ブラックパンサー』伝統文化とサブカルチャー、そしてハリウッドの限界?

♪ブラックパンサー、ブラックパンサー、ときどきピンクだよ〜♫ 映画『ブラックパンサー』

記事を読む

no image

『おやすみなさいダース・ヴェイダー』SWファンもすっかりパパさ

  ジェフリー・ブラウン著『おやすみなさいダース・ヴェイダー』。 スターウォーズの

記事を読む

『鬼滅の刃 無限列車編』 映画が日本を変えた。世界はどうみてる?

『鬼滅の刃』の存在を初めて知ったのは仕事先。同年代のお子さんがいる方から、いま子どもたちの間

記事を読む

『パシフィック・リム』 日本サブカル 世界進出への架け橋となるか!?

『ゴジラ』ハリウッドリメイク版や、 トム・クルーズ主演の 『オール・ユー・ニード・イズ・

記事を読む

『フロリダ・プロジェクト』パステルカラーの地獄

アメリカで起きていることは、10年もしないうちに日本でも起こる。日本は、政策なり事業なり、成

記事を読む

『アメリカン・ユートピア』 歩んできた道は間違いじゃなかった

トーキング・ヘッズのライブ映画『ストップ・メイキング・センス』を初めて観たのは、自分がまだ高

記事を読む

no image

『ハクソー・リッジ』英雄とPTSD

メル・ギブソン監督の第二次世界大戦の沖縄戦を舞台にした映画『ハクソー・リッジ』。国内外の政治の話題が

記事を読む

『ゴーストバスターズ(2016)』 ヘムジーに学ぶ明るい生き方

アイヴァン・ライトマン監督作品『ゴーストバスターズ』は80年代を代表するブロックバスタームー

記事を読む

no image

『ブレイブハート』かつてのスコットランド独立戦争の映画

  スコットランドがイギリスから 独立するか否かの投票率は84%。 有権者の

記事を読む

『コンクリート・ユートピア』 慈愛は世界を救えるか?

IUの曲『Love wins all』のミュージック・ビデオを

『ダンジョン飯』 健康第一で虚構の彼方へ

『ダンジョン飯』というタイトルはインパクトがありすぎた。『ダン

『マッドマックス フュリオサ』 深入りしない関係

自分は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が大好きだ。『マッ

『ゴジラ-1.0』 人生はモヤりと共に

ゴジラシリーズの最新作『ゴジラ-1.0』が公開されるとともに、

『かがみの孤城』 自分の世界から離れたら見えるもの

自分は原恵一監督の『河童のクゥと夏休み』が好きだ。児童文学を原

→もっと見る

PAGE TOP ↑