*

『ドクター・ストレンジ』アメコミとユダヤ人

公開日: : 最終更新日:2019/06/11 映画:タ行

流転の民族ユダヤ人は、どこの社会に行っても成功していくらしい。商売上手だったり、仕事ができるのはもちろんだが、どうやらそれだけではないみたい。

ユダヤ人と言えばずっと虐げられ続けている歴史がある。迫害を受けたユダヤ人は、当然自分たちの権利を得ようと闘う。

とかく虐げられられた民族は、自分たちの人権獲得のみに目がいってしまいがち。でもユダヤ人のすごいところは、自分たちのことだけではなく、すべての人たちがより良く生きられる社会を目指そうとする。そんな利他的で高尚な志なら、成り上がっていくのも当然だ。

なんでも実はアメコミも、ユダヤ人が作り出したカルチャーだとか。子どもたちに正義の心を伝えるための、道徳教育の目的があったらしい。人のために生きることの大切さを教えようと。

アメコミのヒーローたちは、正義のために闘いながらも、常にその立場の矛盾に苦悩している。アメコミというジャンル名にも関わらず、アメリカ人ではないユダヤ人の発案というのも、移民でできた国らしい。

そういえばマーベルのドンであるスタン・リーもユダヤ系。アメコミ=ユダヤ人説は信憑性がある。

昨年、ワーナー&DCと、ディズニー&マーベルの監督通しのディスり合いがあった。みんなが正義の心でハッピーに生きる術を問う、アメコミのテーマからすると、なんとも不本意なエピソード。アメコミ創始者たちは、さぞ悲しんだだろう。

スタン・リーは一連のマーベル・シネマティック・ユニバースには、必ずワンシーン、カメオ出演する。このことをウチの子どもたちに伝えたら、毎回新作を観るたびに「みつけた!」ときゃあきゃあ言って喜んでる。ディズニーアニメの『ベイマックス』にもサプライズ出演してるのだから、ファンサービスも徹底してる。

『ドクター・ストレンジ』の名を自分が初めて聞いたとき、『ドクター・ストレンジラブ』こと『博士の異常な愛情』のリメイクなのかと勘違いしてしまった。自分はアメコミ自体には疎いのだが、この一連のマーベル映画シリーズは毎回楽しみにしている。

『ドクター・ストレンジ』を、人気俳優ベネディクト・カンバーバッチが演じる。彼が今後、アベンジャーズの仲間に入っていくのも期待大。

この映画のイマジネーションは、近年のSF映画の面白かった部分の、パッチワークのてんこ盛り。以前のハリウッドなら、パクリだと裁判沙汰になりそうなくらい。場面場面の元ネタ映画を探るのも楽しい。まあ悪く言えばオリジナリティがないんだけど、基本的に明るく軽いコメディタッチの映画なので、ポップコーンムービーとしては上出来。大のオトナが、コスプレして飛び回るんだから、大まじめにやられても困っちゃう。

監督のスコット・デリクソンは、やっぱり自分と同年代。きっと映画オタクのまま、映画監督になっちゃったのだろう。

天才外科医のドクター・ストレンジが、不慮の事故により、医師の道を断念せねばならなくなる。諦めきれないストレンジは、魔術の力で、外科医に戻ろうとする。修行をするうちにスーパーヒーローになっいくというのが映画の大筋。

魔術で闘う設定なので、何でもアリのようなアクションシーンが展開される。その見せ場でたくさん笑わせてくれる。ハチャメチなようでいて、観客がちゃんと理解ができるよう、きちんと整理されている。エンタメはわかりやすいことも大事。

自分は残念ながら2D版での鑑賞だったが、これが3Dや4DXだと、酔うんじゃないかと思われる映像の連続。ディズニー映画だから、当然アトラクション要素は想定してるだろう。

ロケ地は、ロンドン、ニューヨーク、カトマンズ、香港と世界を股にかけている。経済的にも文化的にも、すっかりパワーが弱まって、オトナの事情ばかりがねじくれまくった日本には、もうハリウッドは来てくれないんだろな。ちょっと前だったら、アジアのポジションは日本だったかも?

見習い魔術師のストレンジが、悪漢と闘い、相手を殺めてしまう。「自分は人の命を救いたくて医者になったのに、人を殺してしまった!」苦悩するストレンジの姿は、マーベルキャラクターらしい。

ドクター・ストレンジはエリート外科医。アイアンマンのトニー・スタークも、メカニックのエリート。アベンジャーズでこの2人が相見えたときの化学反応が楽しみだ。カンバーバッチとロバート・ダウニーjrの共演は見ものだ。そういえば双方の代表作は『シャーロック』だったっけ。

アベンジャーズの新メンバー登場のエピソードは、いつも説明的であまりパッとしない。でも新キャラの設定を理解しておかないと、後でおいてけぼりにされちゃう。

さあ、ドクター・ストレンジはどこへ行く? とりあえず『マイティソー』の次回作に、ストレンジは帰って来るらしいけど。

関連記事

no image

『ツイン・ピークス』ってなんだったの?

  アメリカのテレビドラマ『ツイン・ピークス』が 25年ぶりに続編がつくられるそう

記事を読む

no image

儀式は人生に大切なもの『ディア・ハンター』

  マイケル・チミノ監督の ベトナム戦争を扱った名作『ディア・ハンター』。

記事を読む

no image

『トランスフォーマー/ロストエイジ』最新技術のお披露目の場

ドルビーアトモスのAVアンプを探していると、この『トランスフォーマー/ロストエイジ』の見せ場の映

記事を読む

no image

『デッドプール2』おバカな振りした反骨精神

映画の続編は大抵つまらなくなってしまうもの。ヒット作でまた儲けたい企業の商魂が先に立つ。同じキャラク

記事を読む

no image

『電車男』オタクだって素直に恋愛したかったはず

  草食男子って、 もう悪い意味でしか使われてないですね。 自分も草食系なんで…

記事を読む

no image

原作への愛を感じる『ドラえもん のび太の恐竜2006』

  今年は『ドラえもん』映画化の 35周年だそうです。 3歳になる息子のお気

記事を読む

no image

『ドラゴンボール』元気玉の行方

  実は自分は最近まで『ドラゴンボール』をちゃんと観たことがなかった。 鳥山明

記事を読む

no image

『時をかける少女』フリーになって頭角を現した細田守監督

  『時をかける少女』というと、自分の世代では 大林宣彦監督・原田知世主演の角川映

記事を読む

no image

『チャーリーとチョコレート工場』歪んだ愛情とその傷

  映画が公開されてから時間が経って、その時の宣伝や熱狂が冷めたあと、あらためてその

記事を読む

no image

『デザイナー渋井直人の休日』カワイイおじさんという生き方

テレビドラマ『デザイナー渋井直人の休日』が面白い。自分と同業のグラフィックデザイナーの50代のおじさ

記事を読む

no image
『スター・ウォーズ/スカイ・ウォーカーの夜明け』映画の終焉と未来

『スターウォーズ』が終わってしまった! シリーズ第1作が公開され

no image
『スカーレット』慣例をくつがえす慣例

NHK朝の連続テレビ小説『スカーレット』がめちゃくちゃおもしろい!

no image
『スター・ウォーズ・アイデンティティーズ』パートナーがいることの失敗

寺田倉庫で開催されている『スターウォーズ・アイデンティティーズ・ザ・エ

no image
『レディ・バード』先生だって不器用なひとりの人間

アメリカの独立系制作会社A24の『レディ・バード』。近年、評判のいいイ

no image
『365日のシンプルライフ』幸せな人生を送るための「モノ」

Eテレの『ドキュランドへようこそ』番組枠で、『365日のシンプルライフ

→もっと見る

PAGE TOP ↑