*

『東京ゴッドファーザーズ』地味な題材のウェルメイドアニメ

公開日: : 最終更新日:2019/06/15 アニメ, 映画:タ行

 

クリスマスも近いので、
ちなんだ映画をセレクト。

なんでもこの『東京ゴッドファーザーズ』というアニメ、
ジョン・フォードの『三人の名付親』という映画から
インスパイアされたとのことで、
何となく古き良きアメリカ映画の
ウェルメイドな雰囲気がする。

ホームレス三人組が主人公
世の中からドロップアウトした彼らは、
元競輪選手のオヤジ、家出女子高生、
ドラッグクイーンのデコボコ三人組。

ふとしたことから一人の赤ん坊をひろい、
母親を探し出し、届けるまでのお話し。

その旅の道の途中、
三人がなぜホームレスになってしまったかの
エピソードが見え隠れし、
各々の問題も大団円意は昇華して行く。
赤ん坊を捨てた母親の心もきちんと言及していく。

人間が描かれたとても良く出来た脚本。

これ、アニメにする必要あったの?
っていうくらい、現代の東京が舞台の作品なので、
実写で撮ってしまった方がラクに感じてしまう。

でもこんな良質だけど地味なお話、
普通に役者さんでやったら、インパクトも何もなく、
完全に埋もれてしまうような企画でしょうね。

そういったメディアのセレクトの妙というのも
この作品ならでは。

むしろアニメファンより、
映画ファンの方が納得するのではないでしょうか。

非常に残念なのは、本作の今敏監督は
2010年に癌で亡くなっているのです。

実写的なアニメを作る、個性的な監督さんだったので
享年46歳という、早すぎる死がとても無念に感じます。

次回作として準備中だった『夢みる機械』も
死後から話を聞かないので、頓挫しているのかもしれません。

今敏作品で音楽をよく担当している
平沢進さんの楽曲は既に発表されているので、
今敏監督の最後の作品が、
いつか日の目を見ることを願うばかりです。

死後発表された彼の死期を悟った
ブログがあります。
人生について考えさせられます。
ご冥福をお祈りします。

関連記事

『もののけ姫』女性が創る社会、マッドマックスとアシタカの選択

先日、『マッドマックス/怒りのデスロード』が、地上波テレビ放送された。地上波放送用に、絶妙な

記事を読む

no image

『君の名は。』株式会社個人作家

  日本映画の興行収入の記録を塗り替えた大ヒット作『君の名は。』をやっと観た。実は自

記事を読む

『TOMORROW 明日』 忘れがちな長崎のこと

本日8月9日は長崎の原爆の日。 とかく原爆といえば広島ばかりが とりざたされますが、

記事を読む

no image

『スノーマン』ファンタジーは死の匂いと共に

4歳になる息子が観たいと選んだのが、レイモンド・ブリッグスの絵本が原作の短編アニメーション『スノーマ

記事を読む

no image

『トレインスポッティング』はミニシアターの立位置を変えた!!

  スコットランドの独立の 是非を問う投票が終わり、 独立はなしということで決着

記事を読む

『機動戦士ガンダム』とホモソーシャル

『ガンダム』といえば、我々アラフォー世代男子には、 小学校の義務教育の一環といってもいいコ

記事を読む

no image

アーティストは「神」じゃない。あなたと同じ「人間」。

  ちょっとした現代の「偶像崇拝」について。 と言っても宗教の話ではありません。

記事を読む

『ヒックとドラゴン/聖地への冒険』 変わっていく主人公

いまEテレで、テレビシリーズの『ヒックとドラゴン』が放送されている。小学生の息子が毎週それを

記事を読む

『塔の上のラプンツェル』 深刻な問題を明るいエンタメに

大ヒット作『アナと雪の女王』もこの 『塔の上のラプンツェル』の成功なしでは 企画すら通ら

記事を読む

『新幹線大爆破(Netflix)』 企業がつくる虚構と現実

公開前から話題になっていたNetflixの『新幹線大爆破』。自分もNetflixに加入してい

記事を読む

『新幹線大爆破(Netflix)』 企業がつくる虚構と現実

公開前から話題になっていたNetflixの『新幹線大爆破』。自

『ラストエンペラー オリジナル全長版」 渡る世間はカネ次第

『ラストエンペラー』の長尺版が配信されていた。この映画は坂本龍

『アドレセンス』 凶悪犯罪・ザ・ライド

Netflixの連続シリーズ『アドレセンス』の公開開始時、にわ

『HAPPYEND』 モヤモヤしながら生きていく

空音央監督の長編フィクション第1作『HAPPYEND』。空音央

『メダリスト』 障害と才能と

映像配信のサブスクで何度も勧めてくる萌えアニメの作品がある。自

→もっと見る

PAGE TOP ↑