『東京ゴッドファーザーズ』地味な題材のウェルメイドアニメ
クリスマスも近いので、
ちなんだ映画をセレクト。
なんでもこの『東京ゴッドファーザーズ』というアニメ、
ジョン・フォードの『三人の名付親』という映画から
インスパイアされたとのことで、
何となく古き良きアメリカ映画の
ウェルメイドな雰囲気がする。
ホームレス三人組が主人公
世の中からドロップアウトした彼らは、
元競輪選手のオヤジ、家出女子高生、
ドラッグクイーンのデコボコ三人組。
ふとしたことから一人の赤ん坊をひろい、
母親を探し出し、届けるまでのお話し。
その旅の道の途中、
三人がなぜホームレスになってしまったかの
エピソードが見え隠れし、
各々の問題も大団円意は昇華して行く。
赤ん坊を捨てた母親の心もきちんと言及していく。
人間が描かれたとても良く出来た脚本。
これ、アニメにする必要あったの?
っていうくらい、現代の東京が舞台の作品なので、
実写で撮ってしまった方がラクに感じてしまう。
でもこんな良質だけど地味なお話、
普通に役者さんでやったら、インパクトも何もなく、
完全に埋もれてしまうような企画でしょうね。
そういったメディアのセレクトの妙というのも
この作品ならでは。
むしろアニメファンより、
映画ファンの方が納得するのではないでしょうか。
非常に残念なのは、本作の今敏監督は
2010年に癌で亡くなっているのです。
実写的なアニメを作る、個性的な監督さんだったので
享年46歳という、早すぎる死がとても無念に感じます。
次回作として準備中だった『夢みる機械』も
死後から話を聞かないので、頓挫しているのかもしれません。
今敏作品で音楽をよく担当している
平沢進さんの楽曲は既に発表されているので、
今敏監督の最後の作品が、
いつか日の目を見ることを願うばかりです。
死後発表された彼の死期を悟った
ブログがあります。
人生について考えさせられます。
ご冥福をお祈りします。
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