『スワロウテイル』 90年代サブカル・カタログ映画
岩井俊二監督の『スワロウテイル』。この劇中の架空のバンド『YEN TOWN BAND』が再結成するとのことで。なんでも19年ぶりとか。もうそんなにたつのか……。
この『スワロウテイル』は今までの日本映画になかったクールな作品。とにかくここまでセンスが良くて日本映画にしてはそこそこ大作なのも今までなかった。当時20代だった自分は、この洗練された雰囲気に飛びついた。この作品は当時流行っていたサブカルの要素をふんだんに取り込んでいる。ウォン・カーワイ監督と撮影監督のクリストファー・ドイルの映像美の感覚。
種田陽平氏の美術は『ブレードランナー』のよう。後にタランティーノ監督が『キルビル』の美術監督に種田氏を起用している。ちなみに種田氏はタランティーノの次回作も担当しているらしい。
パッチワークで作られた作品をさらにパッチワークの素材として利用される。カッコいいものはカッコいい。それだけでいいんじゃないかと感じてしまう。セリフも日本語と英語、北京語がチャンポン。もう雑多でキッチュな日本のサブカルの象徴。
これもセンスが悪ければ、パクリと一蹴されるところだが、岩井俊二監督はセンスが良かった。中身はスカスカだけど面白い。眉間にしわをよせて作られた作品を隅に追いやってしまう勢いだった。もちろんたくさん批判もされた。
本作は音楽映画でもあるのだが、ライブシーンがとにかくカッコいい!! 日本映画でここまでクールなライブシーンは後にも先にもなかったと思う。
いまこの作品を観直すと、「当時こんなもの流行ったよね」のてんこ盛りで、遠くをみつめる目になってしまうのです。
関連記事
-
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』 自分のことだけ考えてちゃダメですね
※このブログはネタバレを含みます。 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの四作目で完結
-
『バグダッド・カフェ』 同じ映像、違う見え方
いつまでも あると思うな 動画配信。 AmazonプライムビデオとU-NEXTで配信中
-
自国の暗部もエンタメにする『ゼロ・ダーク・サーティ』
アメリカのビン・ラディン暗殺の様子を スリリングに描いたリアリスティック作品。
-
『サクリファイス』日本に傾倒した核戦争の世界
旧ソ連出身のアンドレイ・タルコフスキー監督が、亡命して各国を流転しながら映画をつくっていた遺作となる
-
『母と暮せば』Requiem to NAGASAKI
残り少ない2015年は、戦後70年の節目の年。山田洋次監督はどうしても本年中にこ
-
『アリオン』 伝説になれない英雄
安彦良和監督のアニメ映画『アリオン』。ギリシャ神話をモチーフにした冒険活劇。いまアリオンとい
-
『リアリティのダンス』ホドロフスキーとトラウマ
アレハンドロ・ホドロフスキーの23年ぶりの新作『リアリティのダンス』。ホドロフスキーと言えば
-
『シェイプ・オブ・ウォーター』懐古趣味は進むよどこまでも
今年2018年のアカデミー賞の主要部門を獲得したギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・
-
『007 スペクター』シリアスとギャグの狭間で
評判の良かった『007 スペクター』をやっと観た。 前作『スカイフォール』から監督は続
-
『ビートルジュース』 ゴシック少女リーパー(R(L)eaper)!
『ビートルジュース』の続編新作が36年ぶりに制作された。正直自分はオリジナルの『ビートルジュ
- PREV
- それを言っちゃおしまいよ『ザ・エージェント』
- NEXT
- 『百日紅』天才にしかみえぬもの