*

『スワロウテイル』 90年代サブカル・カタログ映画

公開日: : 最終更新日:2021/09/13 映画:サ行, 音楽

岩井俊二監督の『スワロウテイル』。この劇中の架空のバンド『YEN TOWN BAND』が再結成するとのことで。なんでも19年ぶりとか。もうそんなにたつのか……。

この『スワロウテイル』は今までの日本映画になかったクールな作品。とにかくここまでセンスが良くて日本映画にしてはそこそこ大作なのも今までなかった。当時20代だった自分は、この洗練された雰囲気に飛びついた。この作品は当時流行っていたサブカルの要素をふんだんに取り込んでいる。ウォン・カーワイ監督と撮影監督のクリストファー・ドイルの映像美の感覚。

種田陽平氏の美術は『ブレードランナー』のよう。後にタランティーノ監督が『キルビル』の美術監督に種田氏を起用している。ちなみに種田氏はタランティーノの次回作も担当しているらしい。

パッチワークで作られた作品をさらにパッチワークの素材として利用される。カッコいいものはカッコいい。それだけでいいんじゃないかと感じてしまう。セリフも日本語と英語、北京語がチャンポン。もう雑多でキッチュな日本のサブカルの象徴。

これもセンスが悪ければ、パクリと一蹴されるところだが、岩井俊二監督はセンスが良かった。中身はスカスカだけど面白い。眉間にしわをよせて作られた作品を隅に追いやってしまう勢いだった。もちろんたくさん批判もされた。

本作は音楽映画でもあるのだが、ライブシーンがとにかくカッコいい!! 日本映画でここまでクールなライブシーンは後にも先にもなかったと思う。

いまこの作品を観直すと、「当時こんなもの流行ったよね」のてんこ盛りで、遠くをみつめる目になってしまうのです。

関連記事

no image

『幕が上がる』覚悟の先にある楽しさ

  自分はアイドル文化や萌えとかよくわからない。だから『ももいろクローバーZ』の存在

記事を読む

no image

『ダンケルク』規格から攻めてくる不思議な映画

クリストファー・ノーランは自分にとっては当たり外れの激しい作風の監督さん。 時系列が逆に進む長

記事を読む

no image

『ジュラシック・ワールド』スピルバーグの原点回帰へ

  映画『ジュラシック・ワールド』は、とても楽しいアトラクションムービーだった。大ヒ

記事を読む

『007 スペクター』シリアスとギャグの狭間で

評判の良かった『007 スペクター』をやっと観た。 前作『スカイフォール』から監督は続

記事を読む

『JUNO ジュノ』 ピンクじゃなくてオレンジな

ジェイソン・ライトマン監督の『JUNO ジュノ』は、エリオット・ペイジがまだエレン・ペイジ名

記事を読む

『アーロと少年』 過酷な現実をみせつけられて

く、暗いゾ。笑いの要素がほとんどない……。 日本のポスタービジュアルが、アーロと少年ス

記事を読む

『SAND LAND』 自分がやりたいことと世が求めるもの

漫画家の鳥山明さんが亡くなった。この数年、自分が子どものころに影響を受けた表現者たちが、相次

記事を読む

『ラストエンペラー』 中学生、映画で近代史に興味がわく

イタリアのベルナルド・ベルトルッチ監督の『ラストエンペラー』。西洋人が描く東洋の歴史。この映

記事を読む

『ルパン三世 ルパンvs複製人間』カワイイものは好きですか?

先日『ルパン三世』の原作者であるモンキー・パンチさんが亡くなられた。平成が終わりに近づいて、

記事を読む

『呪術廻戦』 邪悪で悪いか⁉︎

アニメ映画『呪術廻戦0』のアマプラ独占配信の予告を観て、『呪術廻戦』をぜんぶ観たくなった。実

記事を読む

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』 普通に生きるという特殊能力

リチャード・カーティス監督の『アバウト・タイム』は、ときどき話

『ヒックとドラゴン(2025年)』 自分の居場所をつくる方法

アメリカのアニメスタジオ・ドリームワークス制作の『ヒックとドラ

『世にも怪奇な物語』 怪奇現象と幻覚

『世にも怪奇な物語』と聞くと、フジテレビで不定期に放送している

『大長編 タローマン 万博大爆発』 脳がバグる本気の厨二病悪夢

『タローマン』の映画を観に行ってしまった。そもそも『タローマン

『cocoon』 くだらなくてかわいくてきれいなもの

自分は電子音楽が好き。最近では牛尾憲輔さんの音楽をよく聴いてい

→もっと見る

PAGE TOP ↑