*

『DENKI GROOVE THE MOVIE?』トンガリ続けて四半世紀

公開日: : 最終更新日:2019/06/12 映画:タ行, 音楽

 

オフィス勤めしていた頃。PCに向かっている自分の周辺視野に、なにかイヤなものが入ってきたのがわかった。見たら確実に気分が悪くなる予感がする邪悪なもの。恐る恐る視線をそちらにおくる。目に入ってきたのは、最近入ってきた20代の女性。問題はそこじゃない。彼女が手にしているクリアファイルが問題なのだ。電気グルーヴのクリアファイル。彼女が手にしていたのは、石野卓球さんとピエール瀧さんがあしらわれたクリアファイルだったのだ!

聞くとその女性はかなりなサブカル女子。なんでも鳥肌実さんのファンクラブにも入っているとか。コアだコアすぎる‼︎ 昔だったら確実にナゴムギャルだったろうに。

ナゴムとは、ナゴムレコードという、電気グルーヴがまだインディーズで『人生』というユニット名だったころのレーベル名。主催者はケラリーノ・サンドロヴィッチさん。筋肉少女帯もそこにいた。電気グルーヴもあの頃と芸風(?)がまったく変わってないのがスゴイ!

電気グルーヴというと、自分よりちょっとお兄さんだけど、同世代同じ時代を生きてきた感じがする。

結成25周年を記念したドキュメントムービーがこの『DENKI GROOVE THE MOVIE?』。

普通、老舗のアーティストというのは、ファンもずっと若い頃から一緒で、みんな同時スライドで歳をとっているもの。電気グルーヴに至っては、もちろんファン暦が長そうな人もたくさんいるが、絶えず若いファンもつかんでいるように感じる。

照れ屋だから、もっと恥ずかしいことをしてしまう。なんともめんどくさい、大人にならずに大人になってしまえた稀有な存在。いや、この映画をよく観ると、卓球さんこそそれだけど、もしかすると瀧さんは結構周りを気にしながらおちゃらけてる。

ピエール瀧さんといえば、最近の若い子は、完全に役者さんだと思っているかも。そもそも樋口真嗣監督の長編実写デビュー作『ローレライ』で、サプライズキャストみたいに出てきた、サブカルアイコンの扱いだった。それが、あれよあれよと『アナと雪の女王』のオラフ役にまでなってしまう。ディズニーにまで食い込みんで、すっかりNHKの朝ドラや大河ドラマの常連役者になってしまうとは⁈

映画では、本人たちのインタビューはせず、周辺の人々のコメントで構成されている。ハリウッドのアーティストのドキュメンタリーのつくり。

ハリウッドスタイルは、基本的にアーティストへのコメントは褒め称えるものとしレジェンド化する。どこまでホントで、どこまでヤラセかわからない。ハリウッド的なゴージャス演出なんてかなりインチキ。

電気が海外進出をはかるとき、どこの国へ行くのかでもめたらしい。そもそも日本のプロダクションは、海外進出なんて視野にない。国内完結型のビジネスマインドでは、海外を普通に意識している彼らの方が孤立してしまうだろう。

でもそうやって視野を外へ外へ向けて行ったからこそ、新しいファンも獲得していけるのだろう。継続できたのはそのチャレンジ精神というか、視野が広かったからだと感じる。実は変わらない印象をキープし続けている裏には、ものすごい変化や革新があるのは確かだ。電気グルーヴはやっぱりキモカッコイイ‼︎

関連記事

no image

『ファインディング・ドリー』マイノリティへの応援歌

  映画はひととき、現実から逃避させてくれる夢みたいなもの。いつからか映画というエン

記事を読む

『TENET テネット』 テクノのライブみたいな映画。所謂メタドラえもん!

ストーリーはさっぱり理解できないんだけど、カッコいいからいい! クリストファー・ノーランの新

記事を読む

『チ。 ー地球の運動についてー』 夢に殉ずる夢をみる

マンガの『チ。』の存在を知ったのは、電車の吊り広告だった。『チ。』というへんなタイトルがキャ

記事を読む

『龍の歯医者』 坂の上のエヴァ

コロナ禍緊急事態宣言中、ゴールデンウィーク中の昼間、NHK総合でアニメ『龍の歯医者』が放送さ

記事を読む

『デッドプール&ウルヴァリン』 マルチバース、ずるい

ディズニープラスの年末年始の大目玉作品といえば、『インサイド・ヘッド2』かこの『デッドプール

記事を読む

『ドゥ・ザ・ライト・シング』 映画の向こうにある現実

自分は『ドゥ・ザ・ライト・シング』をリアルタイムで映画館で観た世代。それまで人種差別問題は、

記事を読む

『銀河鉄道の夜』デザインセンスは笑いのセンス

自分の子どもたちには、ある程度児童文学の常識的な知識は持っていて欲しい。マンガばかり読んでい

記事を読む

『ローガン』どーんと落ち込むスーパーヒーロー映画

映画製作時、どんな方向性でその作品を作るのか、事前に綿密に打ち合わせがされる。制作費が高けれ

記事を読む

『夢の涯てまでも』 だらり近未来世界旅

ヴィム・ヴェンダース監督の90年代始めの作品『夢の涯てまでも』が、アマプラにあがっていた。し

記事を読む

『希望のかなた』すべては個々のモラルに

「ジャケ買い」ならぬ「ジャケ借り」というものもある。どんな映画かまったく知らないが、ジャケッ

記事を読む

『ナミビアの砂漠』 生きづらさ観察記

日曜日の朝にフジテレビで放送している番組『ボクらの時代』に俳優

『サタンタンゴ』 観客もそそのかす商業芸術の実験

今年2025年のノーベル文化賞をクラスナホルカイ・ラースローが

『教皇選挙』 わけがわからなくなってわかるもの

映画『教皇選挙』が日本でもヒットしていると、この映画が公開時に

『たかが世界の終わり』 さらに新しい恐るべき子ども

グザヴィエ・ドラン監督の名前は、よくクリエーターの中で名前が出

『動くな、死ね、甦れ!』 過去の自分と旅をする

ずっと知り合いから勧められていたロシア映画『動くな、死ね、甦れ

→もっと見る

PAGE TOP ↑