*

『はじまりのうた』音楽は人生の潤滑油、勇気をくれる映画。

公開日: : メディア, 映画:ハ行, 音楽

begin-again_500x500_static__1_-5905

この『はじまりのうた』は、自分の周りでも評判が良く、とても気になっていた。当初は「どうせオシャレ女子向けの映画でしょ」と、なんとなく自分とは関係のない映画だと思っていた。メインビジュアルも、アイルランド映画の名作音楽映画『ONCE ダブリンの街角で』にそっくり。ハリウッド豪華キャストにしたパクリ映画かと。でも『はじまりのうた』の監督は『ONCE~』と同じジョン・カーニーと後で知り、そりゃあ似ているのは当然だ、むしろ世界配給になってもブレていないのだからエライ!

『ONCE ダブリンの街角で』は、以前親しい友人が勧めてくれた映画。まったく前知識がないまま観た。「映画に神様が宿る」というと眉唾っぽくなるが、良い制作現場には相乗効果が働いて、そのクリエーターが本来持ってる能力よりももっと優れたものが生まれたりする。まるで神様が力を貸してくれるみたいに。そういった魔法が作用してると感じる映画だった。この『はじまりのうた』もきっと同じ力が働いている。それは映画の神様か、音楽の神様かわからないけど、そんなものを呼び寄せてしまうジョン・カーニー監督の力は、才能といっていい。

映画では、かつては有名だったがすっかりしょぼくれた音楽プロデューサーが、傷ついた女性シンガーの歌を聴くところから始まる。誰にも相手にされない彼女の歌が、ダメダメプロデューサーの心に響く。それはお互い人生のどん底にいたからこその共鳴。この映画の原題は『Begin Again』、邦題の『はじまりのうた』と、どちらもなかなか良いタイトル。

登場人物たちの人生を狂わせたのは、富や名声。好きで音楽を始め、才能故に評価されたが、いつの間にかビジネス中心で創作せざるを得なくなる。パッとしない音楽青年が、一曲のヒットで突然豪邸暮らしのスターになる怖さ。

劇中では象徴的に『Lost Stars』という曲が使われている。良い曲だなと思っていたら、マルーン5のアダム・レヴィーンじゃない! しかも本人が出演してる!! マルーン5の曲めちゃめちゃ良いけど、ルックスがね〜っていつも思ってた。(ファンの方スイマセン)でもそれを逆手にとって演じている。本編中ではさまざまなアレンジでかかるこの曲、商業的に計算されたってバージョンがホントにヒドくて、逆に巧さを感じてしまった。

アダム・レヴィーンは本人が本物のスターだし、キーラ・ナイトレイや、『アベンジャーズ』でハルクを演ってるマーク・ラファロもみんなスター。そのスターたちが迷い、それぞれの道を選んでく。役と演者のもつ雰囲気が醸し出す効果。

演奏場面がどれも楽しくて幸せなので、永遠に聴いていたくなるほど。音楽によって複雑な時系列の構成の物語もすんなり観れるし、ねじれた人間関係もスルリとほどけていく。なんとも気持ちが良い。

彼らが欲しかったのは、富や名声ではなく、エキサイティングな気持ち。人間、日々の生活のため、仕事はしなければならない。エキサイティングとまでは言わなくとも、楽しい要素が仕事には必要。バレエ教室の演奏を生業にしてるピアノマンが、誘われて即決で仕事を辞めてしまう場面がある。チャンスを待ってくすぶってるクリエイターのいかに多いことか。「仕事に誇りを持て」なんて精神論はどーでもいい。スタジオを借りるお金がなければ、街なかでゲリラ録音すればいい。街の喧騒も楽曲の一部。できない理由を探すより、できることから始めよう!

偶然集まった人や環境の長所をつかんで、自分のものとして取り込んでいく。そうなると偶然はもう必然になる。きっとこの映画もそうして作られていったのだろう。

エンターテイメントはショウビジネス。経済が絡んでくるのは当然だし、儲からなければ生活も次回作もできない。作り手は芸術家であるが、商売人ではないことのジレンマ。

エンタメとの適切な付き合い方の好例を、この映画が示してくれている。

関連記事

『トランスフォーマー/ロストエイジ』最新技術のお披露目の場

ドルビーアトモスのAVアンプを探していると、この『トランスフォーマー/ロストエイジ』の見せ場の映

記事を読む

『はじめて投票するあなたへ、どうしても伝えておきたいことがあります。』って、はじめてじゃないけどね

7月10日に参議院選挙がある。今回から選挙権が18歳以上に引き下げになる。それに対して発売さ

記事を読む

鳥肌実のアヤシい存在感と、まっとうな人生観の映画『タナカヒロシのすべて』

昨日は8月15日。終戦記念日。 この日で自分がすぐ イメージするのは靖国神社。

記事を読む

『ラストエンペラー』で近代史に興味がわいた

ca. 1940 --- Emperor Pu Yi (known as Henry Puyi i

記事を読む

『汚れた血』カノジョをキレイに撮る。それだけで映画になる。

『あの人は今?』的存在になってしまったレオス・カラックス監督。2年前に新作『ホーリー・モータ

記事を読む

『グレイテスト・ショーマン』奴らは獣と共に迫り来る!

http://www.foxmovies-jp.com/greatest-showman/[/ca

記事を読む

『ひつじのショーン』おっと、子供騙しじゃないゾ!!

ひつじ年を迎え『ひつじのショーン』を 無視する訳にはいかない。 今年はもう生誕20周

記事を読む

『シン・ゴジラ』まだ日本(映画)も捨てたもんじゃない!

from : www.oricon.co.jp/(C)2016 TOHO CO.,LTD.[/ca

記事を読む

『コウノドリ』で子どもへの目が優しくなれば…… その2

前回の続き。 生涯未婚率も上がり、少子化が問題とされています。人生の選択肢も増えたし、なに

記事を読む

『async/坂本龍一』アートもカジュアルに

人の趣味嗜好はそうそう変わらない。 どんなに年月を経ても、若い頃に影響を受けて擦り込ま

記事を読む

『ペンタゴン・ペーパーズ』ガス抜きと発達障害

スティーヴン・スピルバーグ監督の『ペンタゴン・ペーパーズ』。ベトナ

『デザイナー渋井直人の休日』カワイイおじさんという生き方

https://www.tv-tokyo.co.jp/shibuin

『ピーターラビット』男の野心とその罠

http://www.peterrabbit-movie.jp/[/

『めぐり逢えたら』男脳女脳ってホント?

1993年のアメリカ映画『めぐり逢えたら』。実は自分は今まで観

『タクシー運転手』深刻なテーマを軽く触れること

http://klockworx-asia.com/taxi-dri

→もっと見る

PAGE TOP ↑