『バッファロー’66』シネクイントに思いを寄せて
渋谷パルコが立て替えとなることで、パルコパート3の中にあった映画館シネクイントも休館となるそうです。かつてはかなりの頻度で通った劇場だったので一抹の寂しさもあり。
自分があしげくミニシアターに通っていた頃は、そこの劇場に行かなければその映画は観れないものでした。話題作ともなれば、最新のオサレな映画を観に来るんだと、観客たちもそれなりに意識があったような。今となってはシネコンも多く作られ、むしろ郊外の方が多種多様な種類の映画が観れたりもする。ただメジャー作品だろうが、アート作品だろうが、同じ劇場で同じ入口というのは便利なんだけど、なんとなく味気ない。
このシネクイントは、結構早くから音響設備も整えられ、同じ映画を観るならこちらの劇場の方がいいな〜とこだわりの映画館でした。
シネクイントで一番印象に残っているのはやっぱりヴィンセント・ギャロ監督主演作『バッファロー’66』。それこそオシャレ番長ヴィンセント・ギャロの映画で、渋谷パルコでやってるとなれば、映画ファンだけではなくファッション好きの人も集まってくる。映画オタクの自分としては、ファッショナブルな人たちと同じ空間にいるのはかなり緊張する。
「『バッファロー’66』の中に自分を見つけた!」とか、「人生観が変わった!」とか大仰なコメントを事前に耳にしていたので、どんな映画なのかさっぱり想像できず、さぞかしどえらい映画なのかとハードルは高まるばかり。
実際に映画を観てみると、あまりに素朴な内容だったので唖然とした。もっとトンガった怖い映画かと思ってたので。それはそれでお気に入りの映画となりました。キングクリムゾンがいきなりかかるのがカッコ良かったっけ。
ヴィンセント・ギャロが来日した時のインタビューで、ものすごく態度が悪かったのを覚えている。インタビュアーが「あなたのファンで、紹介したい日本のアクターがいる」と言ったら、「へっ会いたくねぇよ」って態度。どーせチビでメガネで出っ歯のサルが出てきて、ひゃーひゃー言われるだけなんだろって思ったのでしょうね。で、登場したのは浅野忠信さん。スラっと長身のカッコイイ彼のルックスを見て、ギャロちゃんの態度が一変。「お前かっこいいな〜」「今度オレの映画出ろよ〜」とか口説き始めてる。ヤなやっちゃな〜。
そういえばヴィンセント・ギャロ、最近ご無沙汰だな。なんか別のビジネスでもしてるのかな。と思ったら以外と地道に映画界でも活躍してましたね。
この映画公開当時はまだ、映画のチケットを買ったら、劇場前で行列をなして待たなければなりませんでした。今のようなオンライン予約なんてなかった時代です。パルコの階段に次回上映を待つ観客はずっと待つのです。人気作であればあるほど列は長く、下の階まで行列の最後尾は続きます。
かつての同僚が一人でこの映画を見に行った時、映画を待つ行列の隣に有名な劇作家さんが並んでいたそうです。勇気を出して声をかけたら、「話題になっているので観に来たんですよ」と丁寧に返事してくれたらしいです。相手も一人だったので、ちょっと世間話とかして。
不便な時代だったからこそのサプライズ。話題の映画を観るのも一苦労だったあの頃。ネットが普及して便利になって、映画鑑賞の入れ替えもスムースになった。オートメーション化がすすんでくると、こういった偶然が入り込むスキもなくなっちゃう。それが良いことなのか悪いことなのか?
とりあえずシネクイントさん、お疲れまでした!!
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