*

『バッファロー’66』シネクイントに思いを寄せて

公開日: : 最終更新日:2019/06/12 映画:ハ行, 映画館, 音楽

 

渋谷パルコが立て替えとなることで、パルコパート3の中にあった映画館シネクイントも休館となるそうです。かつてはかなりの頻度で通った劇場だったので一抹の寂しさもあり。

自分があしげくミニシアターに通っていた頃は、そこの劇場に行かなければその映画は観れないものでした。話題作ともなれば、最新のオサレな映画を観に来るんだと、観客たちもそれなりに意識があったような。今となってはシネコンも多く作られ、むしろ郊外の方が多種多様な種類の映画が観れたりもする。ただメジャー作品だろうが、アート作品だろうが、同じ劇場で同じ入口というのは便利なんだけど、なんとなく味気ない。

このシネクイントは、結構早くから音響設備も整えられ、同じ映画を観るならこちらの劇場の方がいいな〜とこだわりの映画館でした。

シネクイントで一番印象に残っているのはやっぱりヴィンセント・ギャロ監督主演作『バッファロー’66』。それこそオシャレ番長ヴィンセント・ギャロの映画で、渋谷パルコでやってるとなれば、映画ファンだけではなくファッション好きの人も集まってくる。映画オタクの自分としては、ファッショナブルな人たちと同じ空間にいるのはかなり緊張する。

「『バッファロー’66』の中に自分を見つけた!」とか、「人生観が変わった!」とか大仰なコメントを事前に耳にしていたので、どんな映画なのかさっぱり想像できず、さぞかしどえらい映画なのかとハードルは高まるばかり。

実際に映画を観てみると、あまりに素朴な内容だったので唖然とした。もっとトンガった怖い映画かと思ってたので。それはそれでお気に入りの映画となりました。キングクリムゾンがいきなりかかるのがカッコ良かったっけ。

ヴィンセント・ギャロが来日した時のインタビューで、ものすごく態度が悪かったのを覚えている。インタビュアーが「あなたのファンで、紹介したい日本のアクターがいる」と言ったら、「へっ会いたくねぇよ」って態度。どーせチビでメガネで出っ歯のサルが出てきて、ひゃーひゃー言われるだけなんだろって思ったのでしょうね。で、登場したのは浅野忠信さん。スラっと長身のカッコイイ彼のルックスを見て、ギャロちゃんの態度が一変。「お前かっこいいな〜」「今度オレの映画出ろよ〜」とか口説き始めてる。ヤなやっちゃな〜。

そういえばヴィンセント・ギャロ、最近ご無沙汰だな。なんか別のビジネスでもしてるのかな。と思ったら以外と地道に映画界でも活躍してましたね。

この映画公開当時はまだ、映画のチケットを買ったら、劇場前で行列をなして待たなければなりませんでした。今のようなオンライン予約なんてなかった時代です。パルコの階段に次回上映を待つ観客はずっと待つのです。人気作であればあるほど列は長く、下の階まで行列の最後尾は続きます。

かつての同僚が一人でこの映画を見に行った時、映画を待つ行列の隣に有名な劇作家さんが並んでいたそうです。勇気を出して声をかけたら、「話題になっているので観に来たんですよ」と丁寧に返事してくれたらしいです。相手も一人だったので、ちょっと世間話とかして。

不便な時代だったからこそのサプライズ。話題の映画を観るのも一苦労だったあの頃。ネットが普及して便利になって、映画鑑賞の入れ替えもスムースになった。オートメーション化がすすんでくると、こういった偶然が入り込むスキもなくなっちゃう。それが良いことなのか悪いことなのか?

とりあえずシネクイントさん、お疲れまでした!!

 

関連記事

『鬼滅の刃 無限列車編』 映画が日本を変えた。世界はどうみてる?

『鬼滅の刃』の存在を初めて知ったのは仕事先。同年代のお子さんがいる方から、いま子どもたちの間

記事を読む

no image

『メアリと魔女の花』制御できない力なんていらない

スタジオジブリのスタッフが独立して立ち上げたスタジオポノックの第一弾作品『メアリと魔女の花』。先に鑑

記事を読む

『007 スペクター』シリアスとギャグの狭間で

評判の良かった『007 スペクター』をやっと観た。 前作『スカイフォール』から監督は続

記事を読む

『愛がなんだ』 さらば自己肯定感

2019年の日本映画『愛がなんだ』が、若い女性を中心にヒットしていたという噂は、よく耳にして

記事を読む

no image

『ブレイブハート』かつてのスコットランド独立戦争の映画

  スコットランドがイギリスから 独立するか否かの投票率は84%。 有権者の

記事を読む

no image

『ダンケルク』規格から攻めてくる不思議な映画

クリストファー・ノーランは自分にとっては当たり外れの激しい作風の監督さん。 時系列が逆に進む長

記事を読む

no image

『スノーマン』ファンタジーは死の匂いと共に

4歳になる息子が観たいと選んだのが、レイモンド・ブリッグスの絵本が原作の短編アニメーション『スノーマ

記事を読む

no image

『フラガール』生きるための仕事

  史実に基づいた作品。町おこしのために常磐ハワイアンセンターを設立せんとする側、新

記事を読む

『犬ヶ島』オシャレという煙に巻かれて

ウェス・アンダーソン監督の作品は、必ず興味を惹くのだけれど、鑑賞後は必ず疲労と倦怠感がのしか

記事を読む

『ドラゴンボールZ 復活の「F」』 作者にインスパイアさせた曲

正直に言ってしまうと自分は 『ドラゴンボール』はよく知らない。 鳥山明氏の作品は『Dr.

記事を読む

『東京卍リベンジャーズ』 天才の生い立ちと取り巻く社会

子どもたちの間で人気沸騰中の『東京卍リベンジャーズ』、通称『東

『君の名は。』 距離を置くと大抵のものは綺麗に見える

金曜ロードショーで新海誠監督の『君の名は。』が放送されていた。

『ゴーストバスターズ アフターライフ』 天才の顛末、天才の未来

コロナ禍真っ只中に『ゴーストバスターズ』シリーズの最新作『アフ

『護られなかった者たちへ』 明日は我が身の虚構と現実

子どもの学校の先生が映画好きとのこと。余談で最近観た、良かった

『gifted ギフテッド』 お金の話はそろそろやめて人権の話をしよう

「ギフテッドを持つ子どもの支援を国をあげて始めましょう」という

→もっと見る

PAGE TOP ↑