*

『ゼロ・グラビティ』3D技術があっての企画

公開日: : 最終更新日:2019/06/14 映画:サ行

 

3D映画が『アバター』以来すっかり浸透した。
自分も最初の頃は3Dで作られた映画は3Dで楽しむべきと
上映館や上映時間を工夫して3D映画を観ていた。

最近ではすっかり3Dにも飽きて、
入場料が割高な3D版はあえて選ばず、
2Dで観ることが多くなった。

ただこの『ゼロ・グラビティ』は
絶対3Dで観なくては!と感じさせてくれた。
自分にとっては大奮発のIMAXでの鑑賞。
その選択でみごとに正解。
疑似宇宙体験がみごとにできた。

この映画の企画意図としては、3D撮影技術を使って
宇宙遊泳を疑似体験できる映画ができないだろうか?
ぐらいのものでしかなかったと想像する。

監督のアルフォンソ・キュアロンが
息子とともに書いた脚本は、
現在の宇宙空間で想定される事故のオンパレード。
次から次へとトラブルが発生してくる。

演出もアルフォンソ監督の得意とする
長回し演出を駆使し、撮影技術の随をつくして
宇宙空間へいざなってくれる。

登場人物も二人だけという地味な作りも
作品自体の密度を濃くさせる。

宇宙が舞台の映画だが、SF作品ではないんです。
時代設定は現代だし、登場するのも現代のテクノロジー。
言って見れば今日起こっても
不思議がない事故のシュミレーション。

ジャンルとしては
SFというより、ディザスターやスリラーに近い。
悲観的妄想が、興味深いフィクションになる好例。

問題提起としては、この映画の事故の原因となる
大気圏上に無数に放置されっぱなしの
スペースデブリの存在。

スペースデブリとは
人類が宇宙研究やGPSなどで使った
人工衛星やシャトルの廃棄物。
宇宙へのゴミの不法投棄みたいなもの。

今後このスペースデブリが、
宇宙空間上だけの問題ではなく、
地球に住む我々になにか危害を
加える可能性も大いに予想される。

無音で迫り来るスペースデブリの存在が
不気味で怖いったらありゃしない。

先日この作品をあらためて
自宅のBlu-rayで鑑賞し直してみた。
もちろん2D環境で。

劇場の臨場感には及ばずとも、
充分にスリリングな映画体験が出来た。

これは脚本を含め、撮影技術や演技、
あらゆる技術的工夫の結晶でしょう。

エモーショナルな作品というよりは
充分に計算されつくされた
クールな映画といったところでしょうね。

関連記事

『007 スペクター』シリアスとギャグの狭間で

評判の良かった『007 スペクター』をやっと観た。 前作『スカイフォール』から監督は続

記事を読む

no image

『それでもボクはやってない』隠そうとしてもでてくるのが個性

  満員電車で痴漢と疑われた男性が、駅のホームから飛び降りて逃走するというニュースが

記事を読む

『スリー・ビルボード』 作品の意図を煙にまくユーモア

なんとも面白い映画だ。冒頭からグイグイ引き込まれてしまう。 主人公はフランシス・マクド

記事を読む

『スパイダーマン ホームカミング』 ハイテク・スパイディは企業を超えて

 スパイダーマンがマーベル・シネマティック・ユニバースに本格的に参戦した単独作『スパイダーマ

記事を読む

『スワロウテイル』 90年代サブカル・カタログ映画

岩井俊二監督の『スワロウテイル』。この劇中の架空のバンド『YEN TOWN BAND』が再結

記事を読む

『ソウルフル・ワールド』 今そこにある幸福

ディズニープラスを利用し始めた。小学生の息子は、毎日のように自分で作品を選んで楽しんでいる。

記事を読む

no image

『そして父になる』子役にはドキュメンタリー、大人にはエチュード

  映画『そして父になる』は気になる作品。 自分も父親だから。 6年間育てて

記事を読む

no image

ソフトもハードも研究も、あらゆる転機になった『ジュラシック・パーク』

  リチャード・アッテンボロー監督が亡くなりました。 90歳でした。ご冥福をお祈り

記事を読む

no image

『スノーデン』オタクが偉人になるまで

スノーデン事件のずっと前、当時勤めていた会社の上司やら同僚がみな、パソコンに付属されているカメラを付

記事を読む

『サマーウォーズ』 ひとりぼっちにならないこと

昨日15時頃、Facebookが一時的にダウンした。 なんでもハッカー集団によるものだった

記事を読む

『ケイコ 目を澄ませて』 死を意識してこそ生きていける

『ケイコ 目を澄ませて』はちょっとすごい映画だった。 最

『SHOGUN 将軍』 アイデンティティを超えていけ

それとなしにチラッと観てしまったドラマ『将軍』。思いのほか面白

『アメリカン・フィクション』 高尚に生きたいだけなのに

日本では劇場公開されず、いきなりアマプラ配信となった『アメリカ

『不適切にもほどがある!』 断罪しちゃダメですか?

クドカンこと宮藤官九郎さん脚本によるドラマ『不適切にもほどがあ

『デューン 砂の惑星 PART2』 お山の大将になりたい!

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ティモシー・シャラメ主演の『デューン

→もっと見る

PAGE TOP ↑