*

ホントは怖い『墓場鬼太郎』

公開日: : 最終更新日:2019/06/15 アニメ,

 

2010年のNHK朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』で
水木しげる氏の世界観も再評価された感がある中、
今年の『妖怪ウォッチ』の大ヒットで、
すっかり「水木妖怪」も古いものと追いやられがち。

本来妖怪は不気味で怖いもの。

水木氏の代表作と言ったら
何と言っても『ゲゲゲの鬼太郎』。
その原点となるのがこの『墓場鬼太郎』。

『ゲゲゲの鬼太郎』よりもダークで、
鬼太郎も怨念に満ちた存在で、人殺しもする。
悪い妖怪を退治するヒーローではまったくない。

時代を経て、妖怪も恐くなくなっていく。
『ゲゲゲの鬼太郎』だって、リメイクを重ねるごとに
怖さがなくなって可愛いものになっていく。

そもそも妖怪とはなんなのか?

水木氏自身、第二次大戦で片腕をなくし、
それこそ妖怪のようになって
日本へ帰ってきたと思います。

自分が3歳くらいの頃、井の頭公園で、
片腕や片足のない軍服を着た人が、
ハーモニカを吹いて物乞いを
していたのを憶えています。

「あのひと、なんなの?」と母に尋ねたと思います。
母は「かわいそうな人」と答えました。

帰還兵は負傷した体で、ろくな仕事にも就けず、
差別を受けていたと想像できます。

そんな戦争に傷つけられた人、
水木氏が受けた理不尽のメタファーとして
妖怪を扱ったのではないかと思います。

この怖い鬼太郎を完全アニメ化したのも凄い。
主題歌が電気グルーヴなのもカッコいい。
妖怪の呪いをクールに描いてる。

深夜枠で放送してた本作。
真夜中にパッと目が覚めてしまうくらい
インパクトがありました。

 

関連記事

『キングコング 髑髏島の巨神』 映画体験と実体験と

なんどもリブートされている『キングコング』。前回は『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジ

記事を読む

no image

夢物語じゃないリサーチ力『マイノリティ・リポート』

  未来描写でディストピアとも ユートピアともとれる不思議な映画、 スピルバーグ

記事を読む

『私ときどきレッサーパンダ』 世間体という呪い

コロナ禍の影響でこの2年間、映画館への足がすっかり遠のいてしまった。上映作品も軒並み公開延期

記事を読む

no image

『スターウォーズ/フォースの覚醒』語らざるべき新女性冒険譚

  I have a goood feeling about this!! や

記事を読む

no image

『うつヌケ』ゴーストの囁きに耳を傾けて

  春まっさかり。日々暖かくなってきて、気持ちがいい。でもこの春先の時季になると、ひ

記事を読む

no image

『WOOD JOB!』そして人生は続いていく

  矢口史靖監督といえば、『ウォーターボーイズ』のような部活ものの作品や、『ハッピー

記事を読む

『プライドと偏見』 あのとき君は若かった

これまでに何度も映像化されているジェーン・オースティンの小説の映画化『プライドと偏見』。以前

記事を読む

no image

『ファイト・クラブ』とミニマリスト

最近はやりのミニマリスト。自分の持ちものはできる限り最小限にして、部屋も殺風景。でも数少ない持ちもの

記事を読む

no image

『花とアリス』男が描く少女マンガの世界

  岩井俊二監督作品『花とアリス』が アニメ化されるというニュースが来ましたね。

記事を読む

no image

『オネアミスの翼』くいっっっぱぐれない!!

  先日終了したドラマ『アオイホノオ』の登場人物で ムロツヨシさんが演じる山賀博之

記事を読む

『ケイコ 目を澄ませて』 死を意識してこそ生きていける

『ケイコ 目を澄ませて』はちょっとすごい映画だった。 最

『SHOGUN 将軍』 アイデンティティを超えていけ

それとなしにチラッと観てしまったドラマ『将軍』。思いのほか面白

『アメリカン・フィクション』 高尚に生きたいだけなのに

日本では劇場公開されず、いきなりアマプラ配信となった『アメリカ

『不適切にもほどがある!』 断罪しちゃダメですか?

クドカンこと宮藤官九郎さん脚本によるドラマ『不適切にもほどがあ

『デューン 砂の惑星 PART2』 お山の大将になりたい!

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ティモシー・シャラメ主演の『デューン

→もっと見る

PAGE TOP ↑